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闇の悪役令嬢は愛されすぎる  作者: 葵川 真衣
光の王太子殿下は不憫すぎる

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10.王太子殿下の恋


 アドレーが好きなのはクリスティンだと、彼女にわかってほしかった。

 この気持ちは変わらない。

 クリスティンにも想ってもらう。

 もし恋敵が現れても、どんな困難が待ち構えていようとも、負けはしない。

 

 アドレーは、窓辺に寄り、メルに抱えられているクリスティンを見つめた。


「私は君を手放さない。君は私の伴侶となる、誰よりも大切なひとだ。私は簡単に、諦める人間ではない」


 アドレーはそっと呟き、薄く笑んだ。



※※※※※



(こ、怖っ、怖っ、怖かった……っ!)


 クリスティンが目を覚ませば、自室の寝台だった。

 アドレーに王宮で抱きしめられて──そこから記憶がなかった。

 将来、断罪されるかもしれない相手を前に、恐ろしさで意識が遠くなったのだ。

 森で遭遇した追い剥ぎより、よほど恐怖である。

 

 寝台で、項垂れていると、コンコンとノックの音がした。


「クリスティン様、お目覚めでしょうか」


 メルだ。彼はクリスティンが誰より信頼している近侍である。


「ええ、どうぞ」

「失礼いたします」


 入室したメルに、クリスティンは寝台から降りて訊いた。


「アドレー様といるときに気を失ってしまって、あなたが運んでくれたのね?」


 あのとき、部屋にメルが控えていた。


「はい」

「ありがとう」


 アドレーのことは嫌いではないが、彼といると動悸息切れがし、生きた心地がしない。

 記憶を取り戻す前なら、違った感情をもったかもしれないが、今はゲームの記憶がトラウマとなり、ただ怖い。

 

 

 ──クリスティンは、十二歳のとき、自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生していることに気づいた。

 この先、『花冠の聖女』であるヒロインが現れる。アドレールートに入れば、彼はヒロインと結婚する。

 どのルートでも、アドレーはヒロインに惹かれるのだ。

 

 クリスティンはといえば、婚約破棄される。その後、暗殺者に惨殺されるかもしれない。

 メインヒーローだったアドレーのルートに入る可能性はすこぶる高かった。

 

 クリスティンは、アドレーやラムゼイ、リー、スウィジンなどの攻略対象、今後現れる隣国皇子ルーカスやヒロインに、できる限り関わりたくなかった。

 刺客対策として、身体を鍛え、様々なことを学ぶ日々を過ごしている。


「アドレー様が、クリスティン様に謝罪を。今後、過度に触れることはなさらないと。あと、今度の舞踏会を楽しみにしてらっしゃるとのことです」

「! 舞踏会……!」

 

 クリスティンは震えが走った。


「アドレー様とずっと過ごすことになるじゃない……! 欠席しましょう……けれどお父様もお母様もそれを許してくれない……また恐ろしい試練のときが……」


 クリスティンが長椅子で力なく崩れると、メルがぽつりと呟いた。


「アドレー様、少しおいたわしいな……。クリスティン様をお好きなのに……前世の行いでも彼は悪かったのだろう……。婚約者とはいえ、婚前にクリスティン様にべたべた触れるのは、許せない」


 クリスティンは顔をあげて、メルを見た。


「え?」

「いえ、なんでもございません」


 屋敷に帰ってき、メルの顔を見ればほっとして、空腹であるのを自覚した。


「王宮に二日間滞在して、自室に戻って緊張が解けたわ」


 メルはにっこりと微笑んだ。


「お茶菓子をすぐにご用意いたします」


 彼はとても優秀で、クリスティンの気持ちを一番わかってくれる。


「ええ、ありがとう」

 

 非攻略対象であるメルに、クリスティンは最も気を許している。

 メルが用意してくれたお茶菓子をとって、クリスティンは心癒され、元気になった。




 ──リューファス王国の王太子、アドレーは運命を変え、愛する婚約者と結ばれることができるのだろうか。

 王太子の恋は、続く──。

 






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― 新着の感想 ―
[良い点] アドレーは前世というか、ゲームでの行いがよろしくなかったのですよね。。 メルがとても素敵でクリスティンとお似合いだと思っているのですが、アドレーもすごく誠実なのに怯えられて可哀想で、密かに…
[一言] 最後まで王子は不憫だった
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