表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇の悪役令嬢は愛されすぎる  作者: 葵川 真衣
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/116

36.手渡されたものは


 翌日、恐る恐る教室に行くと、すぐにソニアと目が合った。

 彼女は何やら言いたげな顔をしている。

 クリスティンはこれ以上自分が彼女に何かすれば、逆効果な気がした。

 自分の未来にとっても、ソニアにとっても。

 彼女が忘れ物をしていたことに気づいたが、今日は何もしないでいた。

 

 するとメルが不思議そうにクリスティンに尋ねた。


「クリスティン様、今日は彼女に届けないのですか?」

「ええ。あなたが渡してあげて」

「どうしてです?」

「大変なことがあって。お昼休憩のとき話すわ」



◇◇◇◇◇



 売店でパンを購入し、秘密の稽古場で昼食を摂った。

 木の傍に座り、事情をメルに話すと、彼は息を詰めた。


「クリスティン様、発作を? 大丈夫だったのですか……!?」

「大丈夫。そのとき薬を飲んだから、今はもう全然。大事なのはそのことじゃなくて」

「大事なことです」


 メルは真剣な顔だ。


「心配ないから」

「心配です」

「本当に平気だから、話を聞いてほしい」

「わかりました……」


「昨日のことから、ソニアさんが嫌がらせに遭っていたということがわかったの。しかもわたくしが彼女にしていた行動が、その一因となってしまっていたようで」

「遂に現場に遭遇してしまったのですね……」


 クリスティンは彼の言葉に少々ひっかかりを覚える。


「遂に? ……あなたひょっとして、彼女が嫌がらせに遭っていたことを知っていたの?」


 彼は吐息をつく。


「全てではありませんが、ある程度は把握していました。クリスティン様を脅かす彼女の動向に、気を配っておりましたから。刃物や魔術を使ったものは、今までなかったと思いますが、他のクラスの者が嫌がらせをしている気配はありました」

「知っていたなら、嫌がらせの事、なぜ教えてくれなかったの!」

 

 メルは当然とばかりに告げる。


「クリスティン様に知らせる必要はないと思ったからです。彼女が嫌がらせを受けていようが、クリスティン様には全く関係のないことです。それに、あのかたは忘れ物もしょっちゅうなさいますし、余りにもドジがすぎます。あれは、クリスティン様に届けてもらうため、わざと忘れ物をしているのではないかと」

「わざと?」

「ええ。彼女は一見か弱そうにみえ、結構図太いひとに感じます」

 

 ゲームでも芯の強い性格をしていたが、わざとそんなことをする理由がない。

 メルの思い違いであろう。


「わたくしに、話してほしかったわ」

「申し訳ありません」


 メルは頭を下げた。


「今日は、ソニアさんにきつく当たっていた他のクラスの少女たちは、確かに委縮していたようでした。なぜなのかと思っていましたが、クリスティン様がやめるように注意したからでしょう。もう嫌がらせなどはしないはずです。心配ありません」

 

 だが、クリスティンは心配であった。

 ソニアの身もだが、この自分の将来にも関わってくることだし、嫌がらせをすること自体、許せないと感じる。



◇◇◇◇◇



 午後の授業が終了し、クラスの皆は帰って行く。

 教室には、クリスティンとメルとソニアのみが残った。

 ソニアの様子を目で追っていたのだが、彼女が机から動かなかったので、その間に教室には誰もいなくなり、がらんとしてしまった。 

 

 このままじっとしていても仕方ない。

 ソニアのストーカーになりたいわけではないので、帰ろうとすると、彼女が椅子から立ち、足早に近づいてきた。


「クリスティン様、どうか、これをお読みくださいっ!」

 

 彼女は俯いたまま、クリスティンに何かを握らせ、だっと駆け出していった。

 その背を呆然と見送る。


(……何かしら……?)

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ