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異世界のんびり素材採取生活  作者: 錬金王
海底採取編
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旅の準備


 クラウスからリンドブルムに誘われた俺は、旅をするべく準備を進めていた。


 依頼主であったクラウスからの突然の誘い。


 クラウスとしては手のかかる妹の要望に応えるために呼びつけたものだろうが、それでも家に呼んでくれるというのは嬉しいものだ。


 他人の家に行くのなんて何年ぶりだろうか。


 大人になると友人の家に気軽に行くことはできなくなるので随分と久し振りだった。


 彼女がいて結婚を視野に入れたお付き合いがあれば、挨拶に向かうこともあるだろうが俺には縁がなかったからな。


 そういうわけで久しぶりに人の家にお邪魔するのと、この世界で初めての海ということで俺はワクワクしているのである。


 宿の部屋でマジックバッグの確認を終えた俺は満足げに頷く。


「うん、食料に関してはマジックバッグの中にたくさんあるし問題ないな」


 マジックバッグにはたくさんの食料が入っている。


 それにクラウスは俺がマジックバッグ持ちだと知っているし、道中で遠慮なく使うこともできる。


 着替えや採取道具だって入っているし、一週間もかかる長旅だろうと荷物一つで行けてしまう。本当にマジックバッグ様様だ。


「他に用意するものはあったっけ?」


 今回行くのは港町。まあ、ようするに海に行くと思えばいい。


 日焼けを防止するサンオイルや大きめのタオル、麦わら帽子なんかも既に用意してある。


 この世界で海に入って遊ぶ文化があるかは不明なので、水着が必要なのかはわからない。


 グランテルにそれらしい物は売ってなかったので買いようがなかったが、仮に水着があれば現地の港町で買うことができるだろう。


「……後はサングラスが欲しいな」


 海といえば、サングラスにアロハシャツ、そしてビーチサンダルだ。


 アロハシャツとサンダルは揃えた以上、サングラスも持っておきたい。


 この世界にサングラスはないようだが、デミオ鉱山で手に入れたブラックアントルの遮光眼を利用すれば、作れる気がするんだ。


 幸い出発まで時間はある。ドロガンかロスカに頼めば作ってくれそうな気がする。


「あっ、そういえばアクセサリーも作っておかないといけないのか」


 二人のことを考えていると、不意に思い出す。


 クラウスの妹さんは俺のアクセサリーを大変気に入ってくれたらしい。


 今回招かれたのはそれが大きな理由なのだ。当然、妹さんは俺が新しいアクセサリーを持ってくるんじゃないかって期待もするよな。


 ……これは意外と出発まで時間がないかもしれないな。


 アクセサリー作りのために宝石を買う上でもドロガンの工房に行くのは都合がいい。


「よし、ドロガンの工房に向かうか!」


 早速行動することに決めた俺はマジックバッグを肩にかけて宿屋を飛び出す。


 旅のための準備でやることは多くあって忙しい。


 でも、それは全然苦になる忙しさではなく、むしろ旅の醍醐味といえる楽しさに満ちていた。




 ◆




「こんにちはー!」


「おっ、シュウさん。いらっしゃいっす!」


 ドロガンの工房に入ると、奥の部屋からロスカが出てきた。


「おっ、工房の紋章が入った服を着てますね」


 ロスカの服装は前のような作業のしやすい私服ではなく、工房の紋章が入った従業員用の制服を身に纏っていた。


「そうなんっすよ! 正式に装飾人になれたことで親方が仕立ててくれたんすよ!」


 従業員服を貰えたことと、それを褒めてもらえたことが嬉しいのかロスカは実にいい笑顔を浮かべた。


 そして、服を見せつけるようにクルリと軽やかに回ってみせる。


「いいですね。お洒落な装飾人って感じがします」


「これもシュウさんのお陰っすよ。本当にありがとうございますっす!」


「俺はちょっと後押ししただけですよ」


 素材採取するのに協力したが、品評会で優勝したのはロスカの実力があってこそ。


 きっと俺が間に入らなくても、いずれロスカは親方に認められていたことだろう。


 そうやってロスカと話していると、地下の階段からコツコツと上がってくる音がした。


 思わず視線を向けると、工房主であるドロガンだった。


「お邪魔しています」


「……硬魔石のブレスレットと盾ができた。見るか?」


「本当ですか!? お願いします!」


 指名依頼をこなしている間に、俺はドロガンに硬魔石を使ったブレスレットと盾の製作を依頼していた。


 ドボルザークとの戦いで硬魔石の有用性に気付かされたからである。


 ツルハシではなく普通の盾として、あるいはブレスレットとして使えば、もっと楽に身を守ることができるのではないだろうかと思った次第だ。


 それがもう完成しているとは驚きだ。


 ドロガンは奥の部屋に入ると、盾とブレスレットを持って戻ってくる。


 テーブルに載せられた青黒い盾と同じく青黒いブレスレット。


「うわー、見事に一色っすねー」


「ツルハシと同じように硬魔石を加工して作っただけだからな」


 魔力を込めた硬魔石しか使っていない以上、一色になってしまうのは仕方のないことだ。


 並べられた物を俺はひとつひとつ手に取って確かめていく。


 盾はきちんと片手で持てるサイズになっているし、鑑定で高品質という結果も出ている。


 後は俺が魔力を注いでやれば、極硬魔石の盾とブレスレットの出来上がりだ。



【極硬魔石の盾 最高品質】

 硬魔石で加工され、極限まで魔力が注がれて硬質化した盾。

 ある一定の衝撃が加わると、鉱石に宿った魔力が膜となって弾き返す効果がある。



【極硬魔石のブレスレット 最高品質】

 硬魔石で加工され、極限まで魔力が注がれて硬質化したブレスレット。

 ある一定の衝撃が加わると、鉱石に宿った魔力が膜となって弾き返す効果がある。

 使用するにつれて障壁の力が弱まる。魔力を吹き込むことで回復するが、上限を超えてしまうと砕け散る。




「うん? ブレスレットの方は負荷をかけ過ぎると壊れる可能性もあるのか」


 鑑定してみると、盾とアクセサリーの説明文に微妙な違いが出ていた。


「鑑定で出てきた情報か? まあ、ブレスレットの方が使っている硬魔石の量は少ないからな。耐久に差があってもおかしくないな」


「小さなブレスレットでドボルザークのような魔物の攻撃を受け止めようと思ったら、当然っすよね」


 ドロガンが腕を組みながら興味深そうに言い、ロスカが戦いを思い出して遠い目をする。


 とはいっても、魔力を注ぎ込んでやれば障壁の力も回復するようだ。


 まあ、ドボルザークの突進を何度も受けるようなことはしないし、したくない。


 するとしてもその時は耐久性に優れている盾かツルハシを使用する。


 アクセサリーは緊急用の自衛手段という認識なので問題はないだろう。


「よし、盾とブレスレットの性能を試すか」


 などと考察していると、ドロガンが壁にかけてあるハンマーを手に取った。


「ええ、試すんですか!?」


「自分の作ったものがちゃんと機能するか確かめるのは当然だろう?」


 鑑定で保証されてはいるものの、盾やブレスレットの効果が発揮されるかはきちんと確かめておいた方がいい。


 それはわかってはいるものの、攻撃するから受け止めろと言われると戸惑ってしまう。


 鍜治場にあるハンマー程ではないものの、今ドロガンの持っているハンマーも中々に大きい。


「別にお前さんがやるのが嫌なら、ロスカにやらせるだけだ」


「いえ、自分のものですし、自分で確かめます」


 さすがにその作業を女性にやらせるほど鬼畜ではない。


 俺の覚悟はすぐに固まり、ロスカはあからさまにホッと息を吐いていた。


 俺は盾を右手で持つと、腰を低くして前に突き出す。


「それじゃあ、行くぞ?」


「……どうか、優しくお願いします」


「優しくしたんじゃ確かめられねえだろうが」


 それもそうだった。


「いくぞっ!」


 ドロガンがハンマーを持って踏み込んでくる。


 大きく振りかぶられたハンマーは俺の構える極硬魔石の盾に吸い込まれた。


 すると、ドボルザークの戦いと同じように盾が淡い光と共に障壁を展開。


 ハンマーを盾にぶつけたドロガンは跳ね飛ばされて、見事にひっくり返った。


「ドロガンさん、大丈夫ですか!?」


「別に弾かれるだけだ。怪我なんてするか」


 思わず駆け寄ってみるも、ドロガンはケロリと起き上がってみせる。


 わかってはいても人が弾かれる様子を見ると、驚いて心配してしまうものだ。


「よし、次はブレスレットだな」


 盾の効果がしっかりと発揮されたことを確認すると、ドロガンはハンマーを構えて次を促す。


 俺は盾をテーブルに置いて、ブレスレットを右手に装備した。


「うわぁ……ブレスレットで防ぐって結構度胸がいるっすね」


 ブレスレットを見て、ロスカがうめき声を上げた。


 人は身に危険が迫ると反射的に手を前に突き出すので、ブレスレットにして防ぐのが一番効率いい。


 とはいっても、盾と違って範囲が狭いので、冷静に攻撃を見極めて合わす必要はあるが。


「ドロガンさん、ちゃんと手首を狙ってくださいね?」


「……ああ、できるだけ合わせる」


「できるだけじゃ困るんですけど!? というか今の間が怖いっ!」


 あんなハンマーで殴られたら簡単に骨が折れてしまう。


 右手首を前に差し出すようにすると、ドロガンがそこめがけてハンマーを振るう。


 ハンマーはきちんとブレスレットに当たり、ドロガンは先程と同じように跳ね飛ばされた。


「……ふう、こっちも問題なかった」


 ブレスレットでの防御はかなり怖いので、今回はドロガンの心配よりも自分が無事だったことにホッとした。




三章スタートです!


『今後に期待!』

『続きが気になる!』

『更新頑張れ!』


と思われた方は、下のポイント評価から評価をお願いします!

今後も更新を続けるためのモチベーションになりますので!


次のお話も頑張って書きます。

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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用だった~』

― 新着の感想 ―
[気になる点] というか、仮にも採取を生き甲斐にしてるんだから、宝石も自分で取ってこいよ・・・何でいつも宝石は買うんだよ・・・
[気になる点] 盾は強いかもしれませんがブレスレットはちょっと怖いですね((( ;゜Д゜))) [一言] ブレスレットするなら指貫グローブの方が攻防一体だし採取とかでも邪魔にならなくて良かったと思…
[気になる点] 日焼けを防止するサンオイルとありますが、サンオイルは炎症を防ぎながら日焼けする為のものです。 防止するなら日焼け止めを塗りましょう。
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