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異世界のんびり素材採取生活  作者: 錬金王
鉱山採取編
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クラウスの誘い

明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします。


 後日、ドロガンが作り、ロスカが装飾を施した大剣は品評会で見事に入賞。しかも、一位だった。


 元々ドロガンの作り出す武器は機能美こそいいものの、見た目にこだわらない節があった。それが毎度三位や二位になってしまう理由であり、逆にいえばそこさえ改善されれば一位にならないはずがなかった。


 飾らない武骨なままでも入賞していたドロガンに、装飾が加わればどうなるか。


 まさに鬼に金棒状態で審査員も満場一致の結果だったらしい。


 こうして品評会で優勝という結果を出したロスカは、ドロガン工房の装飾人として正式に働くことになった。


 とはいえ、ぶっきらぼうなドロガンが接客をできるはずもなく、大半の接客はロスカがやっているようだ。


 たとえ、装飾人になろうとそういったただの従業員の仕事はなくならないようだ。


 でも、そんな風に語りながら、ドロガンの作った作品に装飾を施すロスカは、とても生き生きとしており楽しそうであった。


 ロスカが装飾人として大きな一歩を踏み出している間、俺も一応冒険者としての道を一歩踏み出していた。


 具体的には冒険者ランクのアップである。


 どうやら前人未到のデミオ鉱山十二階から帰還した実績、もたらした魔物の情報や地図は冒険者ギルドにとってかなり評価が大きかったようだ。


 レッドドラゴンの討伐という実績もあったお陰で、俺はまたすぐにランクアップすることになったのである。


 さすがに前歴もあったこともあり、前回のように辞退はせずに受け入れることにした。


 俺としてはまだまだ半人前だという認識であるが、あまり謙遜し過ぎても嫌みになるしな。


 デミオ鉱山のように冒険者ランクが高ければ、素材がたくさんある地や未開拓地にも入ることができるし悪いことではない。


 そんな訳でランクBになった俺は増々有名になって指名依頼に忙殺されていた。


 今日も今日とて頼まれた採取の指名依頼をこなし、ギルドに納品にきているところである。


「はい、黒鉱石と魔水晶十個、水晶と雷鉱石四つの納品を確認いたしました。これで指名依頼、二件達成です! さすがですね!」


「ありがとうございます」


「シュウさんが採取に向かっている間に、五件の指名依頼が届いております」


 達成の余韻に浸るも束の間、ラビスがすぐさま受付台の下から新しい依頼用紙を取り出してきた。


 並べられた依頼用紙を俺はまじまじと見つめる。


「依頼を二つ終わらせている間に、新しい依頼が五つもきているっておかしくないですか?」


 これじゃあ、いつまで経っても終わらないじゃないか。


「ランクも上がって大人気ですね!」


 あまりの忙しさに抗議をしてみると、ラビスがにっこりと笑って流した。


 とても可愛らしいし、それだけで癒されるけどここで許しちゃいけない。


「誤魔化さないでください」


 この忙しさには何か理由があるはずだ。俺がランクアップしたこと以外に……


「え、えと、実は鍛冶師協会がシュウさんに目をつけたらしくて、鍛冶師や装飾人から依頼が殺到していて。実はここにお出ししていない分が何十枚と……」


 くっ、そういえばドロガンとロスカが鍛冶師の集まりがあって、俺の噂をしているとか言っていた気がする。そいつらが本腰を入れて、指名依頼をするようになったというわけか。


 俺に見せている依頼はその中のほんの一部で、まだまだ依頼はたくさんあると。


「でも、この忙しさが加速した原因はシュウさんにもあるんですよ?」


「ランクアップですか?」


「いいえ、先日行われた鍛冶師の品評会です! シュウさんが採取した素材が見事に優勝したじゃないですか! 私、見に行ったんですけど、あんな凄いもの出てきたら、どうやって作ったか気になるし、採取を頼またくなるじゃないですか!」


 俺が指名依頼で忙殺されている間にラビスが呑気に品評会を観に行っていたという事実は置いておくとして、まさかそれが忙しさの一因であるとは。


 まさに自分で蒔いた種というべきか。


「くっ、それは迂闊でした。ですが、指名依頼があるなら最初からすべて見せてください。どうせ採取するべき素材があるなら、同時並行で採取してしまう方が早く終わりますから」


「わかりました。すべてお見せします」


 ラビスがさらに取り出した指名依頼は二十枚を軽く超えていた。


 その中にある素材名をしっかりと記憶し、マジックバッグに入っている素材と照らし合わせ、足りない素材はどの素材と並行すれば採取できるか思考する。


「わかりました。ここにある依頼は全てこなしますが、新しい指名依頼はお断りしておいてください」


「承知しました。そのようにこちらで対処しておきます」


 さすがに連日のように依頼を入れられては、いつまで経っても終わらないからな。


 とりあえず、ここにある依頼を終わらせてゆっくりとさせてもらおう。




 ◆




 ギルドで指名依頼をすべて確認した俺は、マジックバッグに貯めていた素材を放出し、足りないものは同時並行で採取することにより、僅か四日ですべてを片付けることができた。


「おめでとうございます、シュウさん! これで指名依頼は全て達成になります!」


「ありがとうございます。ちなみに指名依頼の受注を停止してから何件の依頼がきました?」


「え、えーっと、三十八件です」


 本当に受注の停止をお願いしてよかった。


 危うくこの世界でも社畜のような生活を送る羽目になるところだった。


「それにしても驚異的な達成スピードでしたね」


「常に保管している素材もありますから」


「なるほど!」


 マジックバッグを持っていることをラビスが知った以上、最早自重する必要はないのだ。


 そう思うと、マジックバッグについて話したのは正解だったかもしれない。


 冒険者なんてフリーターみたいなものだから指名依頼なんて放っておいてもいいのだが、やはり頼りにされると答えたいと思ってしまうんだよな。


 それが自分の大好きな素材採取によって、依頼主が喜んでくれるなら尚更だった。


 とはいえ、指名依頼ばかりこなしていては、自分の本当にやりたいことはできない。


 俺がしたいのはのんびり素材採取をすることだからな。


 基本は自分の気に赴くままに採取しに行ったり、料理したり、街で本を読んだりと自由でいたいのだ。


 だからこそ、俺は決心する。次こそはしばらくゆっくりしてやろうと。


「指名依頼も一区切りついたので、しばらくゆっくりすることにします」


「はい、それがいいと思います。本当にお疲れ様でした」


 深く頭を下げるラビスに見送られて俺はギルドの外に出る。


「おい、採取冒険者」


 ひとまず、猫の尻尾亭に戻ろうと歩き出すと、唐突に声をかけられた。


 採取冒険者って俺のことか?


 思わず視線を向けると、そこにはクラウスがいた。


 うん、こんな呼び方をする人はクラウスしかいないと思ったよ。


「随分と疲れているようだな」


「そうなんですよ。指名依頼がたくさん入ってきたせいで身動きが取れなくて。でも、ようやくそれが終わったんですよ」


「ほう、これからは自由というわけか。何かやりたいことは決めているのか?」


 むむ? なんか今日はクラウスがやけに優しいというかプライベートに踏み込んでくるな。無駄な会話をしないイメージだったが、こういう話ができるようになった辺り、クラウスと仲良くなったっていうことだろうか? なんだかちょっと嬉しいな。


「やりたいことですかー。気の向くままに素材採取ですね。後はグランテル以外の街や村を見に行ってみたりするのもありですね」


 勿論、ここを拠点にするつもりだが、色々なところを見て回りたいからな。


「ならば、俺の家があるリンドブルムにくるか?」


「リンドブルムですか?」


「ああ、ここから馬車で一週間の距離にある港町だ」


「ということは海が……っ!」


「ああ、リンドブルムの海は絶景で海産物が美味しいと有名だな」


 春を越えて、夏に近づいてきたこの季節。綺麗な海にとても心惹かれる。それにこの世界にきてから、あまり口にしていない海の魚。それが食べられるというのか。


「とても興味があるんですけど、どうして俺を……?」


 リンドブルムという港街には今すぐ行ってみたいほど興味がある。しかし、クラウスが俺を誘うということが不思議だった。


「お前には依頼で世話になっているからな。それに妹がアクセサリーを気に入って、会わせろとしつこいのだ」


 ああ、本命はそれであったか。実家にいる妹さんの我儘に応えてやりたいんだな。


 道理で今日のクラウスは優しいわけである。


 クラウスの思惑が理解できて違和感が晴れた想いだ。


「それでどうだ? 滞在なら俺の家を使ってもいいし、宿も用意してやるぞ?」


 とはいえ、いつも一方的に都合を押し付けるクラウスがここまで言ってくれているのだ。知らない街に単身で赴くよりも、知り合いがいた方が行動もしやすい。


 ここは乗っておくべきだろう。


「是非連れて行ってください。リンドブルムに興味があるので」


「わかった。出発は五日後の早朝、南広場に集合だ。それまでに必要なものを用意しておけ。馬車は俺が手配しておく」


「わかりました」


 予定が決まれば、そのあとの行動は早い。


 クラウスはいつも通り必要な連絡をすると、用は済んだとばかりに去っていった。


 もうちょっとリンドブルムや、クラウスの家について聞いてみたかったけど、それは旅の途中で聞いてもいいし、その目で確かめるまで聞かないというのもアリだな。


「リンドブルム……どんな場所なんだろうな」


 俺はまだ見ぬリンドブルムに想いを馳せながら、猫の尻尾亭へと戻っていった。





これにて二章は終わりです。


『三章に期待!』

『続きが気になる!』

『更新頑張れ!』

『毎日更新お疲れ!』


と思われた方は、下のポイント評価から評価をお願いします!

今後も更新を続けるためのモチベーションになりますので!


次は三章で海底素材採取編です。


これからも毎日更新といきたいところですが、スケジュールの兼ね合いで三章からは更新ペースを少し下げることになりました。


本年も何卒よろしくお願いします。

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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用だった~』

― 新着の感想 ―
[気になる点] 高ランク冒険者の移動って、その地の領主への報告、ギルド間の連絡等必要になるものではないのかねぇ<(~~? ギルドへの連絡、居場所、行動予定を告げることなく、ふらりと移動=旅なぞすれば、…
[良い点] おもしろいです [気になる点] 誤字があります
[一言] また竜が出て来そうな町の名前だなぁ。
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