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異世界のんびり素材採取生活  作者: 錬金王
鉱山採取編
51/218

冒険者三人組

昨日の更新は42話として挿入されております。まだお読みになられてない方は、申し訳ないですがそちらを先にお読みください。

今回登場するキャラに関係しますので。サブタイトルは『希望もある』


 ツルハシを作るのに硬魔石が必要だということがわかったので、俺は再びデミオ鉱山にやってきた。


 ちなみに採掘するためのツルハシは、ドロガンから貰ったものだ。


 その場しのぎではあるが、市販のものよりは頑丈らしいのですぐに壊れることはないとのことだ。快く譲ってくれたことに感謝である。


 他のナイフ、鋏、ピンセットといった採取道具は、工房にある素材で十分に作れるとのことだったので製作にとりかかっているはずだ。


 自分だけの採取道具がもうすぐでき上がるとなると楽しみである。


 上機嫌で坑道に入った俺は、無魔法のライトボールで道を照らす。


 ドロガンによると硬魔石があるのは地下四階らしく、まずはそこまで降りる必要がある。


 非常に入り組んだ道をしており、アントル、マンティス、ゼルスパイダーなどと手強い魔物もいるので注意して進まなければならない。


 ここは森のように視界が木々で遮られているわけでもない。動けるスペースは限られている。


 魔物については、森以上に警戒して道を選ばないとな。


 魔石調査で周囲の安全を確認しながら慎重に進んでいくと地下二階にたどり着いた。


 地上付近は魔物も少なく、下見で通った道も多いので戸惑うことはない。


 問題はここからだな。


「魔石、調査」


 気を引き締める思いで魔石調査を行うと、魔力範囲の中に魔物が表示される。


 地下だけでなく、同じフロア内に表示されている。


 が、気になるのは魔石だけの状態でいくつか浮いている魔石だ。


 これまで魔石調査で表示された魔物は、魔石だけでなくシルエットも光って表示されていた。しかし、今は魔石しか表示されていない。


 これと同じようなことが起きるのは魔石が地面に落ちていた時だ。


 ということは、あそこに見えているのは落ちている魔石か? だが、目を凝らして見つめると、あの魔石は微妙にだが動いている。


「……一体、どうなってるんだ?」


 気になった俺は、おそるおそる浮遊している魔石の元に近寄ってみる。


 すると、徐々に採掘音らしきものが聞こえてきた。それだけでなく、反響しているせいかハッキリとは聞き取れないが人の話し声も聞こえる。


 もしかして、この先で誰かが採掘をしているのか? 狭い坑道で人と遭遇するのは少し怖くて引き返したい思いもあるが、魔石のことが気になるので進むことにする。


「ちょっとラッゾもエリクもサボらないでよ。女の子一人で肉体労働をさせて恥ずかしく思わないの?」


「獣人と人間の基礎体力を同じにするなよ~」


「……そうだ。それにこれはサボりではない。適材適所というやつだ。オレは魔物を警戒している」


「魔物の警戒なんて私の耳があれば十分よ。ほら、二人とも言い訳してないで掘って」


「えー」


「えーじゃない!」


「だって、掘っても掘っても見つからねんだぞ? こんなのやってられっかよ~。もっとザックザックと気軽に掘れれば――」


「待って。誰か近付いてくる」


 朧げに聞こえてくる会話を耳にしながら歩いていると、ふっと声や採掘の音が聞こえなくなった。


 どことなく張り詰めた空気が漂っている気がする。


 もしかして、こっちの存在がバレて警戒されているとか?


「そこにいるのは誰だ? 名乗らないと攻撃するぞ!」


 なんて思っていると、先にいるであろう人間から鋭い誰何の声が飛んできた。


 名乗らないと攻撃を仕掛けるとか随分と物騒であるが、このような暗い坑道で誰の目もないような場所だ。それくらいの警戒心を持つのは当たり前なのだろう。


「冒険者のシュウといいます! こちらに害意はありません!」


「あら? このバカ丁寧な話し方に石鹸の匂い。多分、採取者のシュウだわ」


「おー、レッドドラゴンを倒したあいつか! ならいいや。こっちこいよ!」


 うん? なにやら相手は俺のことを知っている様子。


 声に緊張感もなくなり、招かれたので俺は素直に近付いてみる。


「あっ、レッドドラゴンを討伐した直後に来てくれた冒険者さん」


 そこにいたのはレッドドラゴンを討伐した直後に様子を見に来て、率先して運ぶのを手伝ってくれた冒険者三人組だった。


 この鉱山にいるということは、彼等もランクがC以上あるのだろう。


「そういや、名乗ってなかったな。俺はラッゾだ」


 人懐っこい顔立ちをした茶髪の青年がラッゾ。パーティーの前衛役なのか、鎧を身に纏って腰に剣を佩いている。


 そして、彼の腰にあるポーチには魔石が見つかった。なんだ、そういうことか。


 彼が回収した魔石が調査で表示されていただけなのか。


「……エリクだ」


「私はレオナ。よろしくね」


 ボソッと呟くように名乗ったのはエルフのエリク。こちらは完璧な後衛タイプで身軽そうな防具に、背中に弓矢を背負っていた。


 そして、最後に手を振りながら挨拶してくれたのは虎っぽい耳をした獣人女性であるレオナ。多分、虎系の獣人なのだろう。


 男性であるエリクに負けないくらいの身体の大きさとしなやかな肉体をしている。


 笑顔になると鋭い犬歯がちょこっと見えていて可愛らしい。


「いやー、前回はシュウのお陰でかなり稼がせてもらったよ。ありがとねー」


「そうなのですか?」


 レオナが礼を言ってくるが、俺としてはその理由がわからない。


 別に彼女たちはレッドドラゴンの討伐に関わったわけではないのだが。


「ギルドに一番に情報を持っていったのは俺たちだからな。情報料も貰えたし、その後の運搬も第一発見者としてかかわって手伝うことができた」


「……わかりやすい功績があると、ギルドもお金を払わざるを得ないからな」


「なるほど」


 それであの時は大慌てでギルドに戻っていたのか。


 そのような理由があるなら、美味しい仕事というのも納得である。


 お金が上乗せされるとは、ギルドもしっかりと冒険者を評価しているものなのだな。


 しっかりとお金を払ってくれる組織は、ある程度信用が持てる。ギルドに対する好感度がちょっと上がった。


「気になったのですが、俺ってそんなに石鹸の匂いが残ってます?」


 先程レオナには石鹸の匂いでわかったと言われた。女性にそのように言われると、気にしてしまうのがガラスハートな男の子。もしかして、洗い残しとかあって匂うのだろうか?

 

「あー、匂うとかそういうことじゃないから! むしろ、男なのにいい匂いがしているシュウは獣人からすれば高ポイントだよ?」


「そうだったのですね。ちゃんと風呂に入っていてよかったです」


 この瞬間ほど、しっかり風呂に入っていてよかったと思う瞬間はない。ということは猫の尻尾亭にいるミーアたちも同じ思いを抱いているのだろうな。汚れたり汗臭くなった時は、風呂に入ってから帰ることにしよう。


「他の冒険者もシュウを見習って、もう少し身綺麗にしてほしいものねー」


 そう言ってレオナが見つめる先では、ラッゾとエリクが気まずそうに顔を逸らしていた。

 



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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用だった~』

― 新着の感想 ―
[気になる点] 地上付近は魔物も少なく、下見で通った道も多いので戸惑うことはない。⇒地上付近⇒地下2階の入り口付近(坑内1F全体が地上階扱い)なのか?坑内への入り口付近をさすのか?もやもやします。 も…
[良い点] 面白いです!
[良い点] 三人組…敵対しないド○ンボー一味に見えるな(笑)役割分担は大分違うケド。 [一言] 人間、やはり身綺麗にしておいた方がイイのは、現実でもファンタジーでも変わらないんだなぁ(笑)
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