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異世界のんびり素材採取生活  作者: 錬金王
美食保護区採取編
201/218

バイローンの肉の効果

素材採取の書籍1巻から3巻。

コミック1巻から2巻発売中。

書き下ろし多数です。


 天空魚を捕まえた俺たちは、頂上にあるという巨大樹の実を求めて突き進んでいた。


 蔓、蔦、葉っぱなどがいくつも分岐していき、複雑に絡み合っている。


 まるで植物の迷路だ。


 調査スキルでソナーを飛ばして、ルート選択ができなければ、進行はもっと手間取っていただろうな。


 などと思いながら魔石調査をしていると、上空から丸いものが次々と転がってくるのが見えた。


「ッ! フランリューレさん! 右側に寄ってください! 魔物が転がってきます!」


「は、はい!」


 魔物の詳細を確認するよりも避難を優先。


 近くにある蔦を利用して、俺とフランリューレは右側の葉っぱに移動。


 次の瞬間、俺たちがよじ登っていた蔓のところに丸まったダンゴムシのようなものが次々と転がってきた。


【ダンゴロン 危険度D】

 植生の豊かな土地に生息する虫型の魔物。

 通常の移動速度はかなり遅いが、丸まって転がることによって速く移動することができる。

 頑丈な外殻を持っており、敵から攻撃を受けると、丸まってやり過ごす。



「わわっ! 魔物がすごい勢いで転がってきますわね」


「ダンゴロンという魔物のようで、転がって移動しているようですね」


 ダンゴロンたちの大移動を安全圏から俺たちは眺める。


 俺の知っているダンゴムシとはサイズが違って、全長二メートルほどある。


 小さなダンゴムシだと可愛らしく見えるが、これだけ大きいと中々に迫力があるものだ。


「早めに気づくことができて助かりましたわ」


「巻き込まれたらさすがに大変ですからね」


 もし、調査スキルで早めに感知できていなければ、突然転がってくるダンゴロンに対処しなければいけないということか。無理ゲー過ぎる。


 それを平然とこなして生き残っている冒険者には畏敬の念を抱かざるを得ない。


「ダンゴロンがいなくなりましたわね」


 三十秒ほど経過すると、転がってくるダンゴロンがいなくなっていた。


「少し休憩しますか」


「そうですわね」


 少なくとも俺は大丈夫だが、フランリューレの体力がきつそうだ。


 八百メートル付近を越えてからは道幅が狭くなってきて、傾斜も激しくなっている。


 単純に移動するだけで負荷が大きくなるというわけだ。


 次に休憩できる場所もあるとは限らないし、小まめに休憩は挟んでおくべきだろう。


「すみません。わたくしが未熟なせいで」


 自分のために休憩を小まめに挟んでいることを彼女も理解しているのだろう。申し訳なさそうにするフランリューレ。


「なんだかんだと採取では体力が物を言うこともあるので、身体を鍛えておくのもおすすめですよ」


「痛感しています。魔法ばかりではなく、もう少し身体を鍛えることにもしますわ」


 やっぱり、自分の足で歩いてちゃんと素材を採取したいからね。


 素材採取に必要なのは根気と体力だと思っているので、暇な時は走り込みや筋トレも行うようにしている。


 巨大樹の道程で俺が疲労していないのも、それらの恩恵のお陰だろう。地道にやっていてよかった。


 努力が実っていることを喜びつつ、水筒で水分補給。


 フランリューレも同じように水分を補給しつつ、腕を揉み解していた。


「腕、大丈夫ですか?」


「少し力が入りに難いですが、少し休めばなんとかなると思います」


 スタートからかなり腕を酷使して登り続けている。


 女性であり、生粋の魔法使いである彼女には肉体的行軍は辛いだろう。


 なんとかしてあげることはできないだろうか。


「あっ!」


「どうされましたか?」


「そんなフランリューレさんに、ちょうどいいものがあると思って!」


 俺はマジックバッグから葉っぱに包まれた肉を取り出した。


「バイローンの肉? もしかして……!」 


「はい、この肉を食べれば疲労が回復する上に、筋力も向上します。これを食べれば、きっと頂上まで楽々ですよ!」


「確かにそれがあれば、わたくしが移動で足を引っ張ることも……」


「というわけで、少しだけ調理してもいいですか?」


「……お願いいたしますわ」


 手に入れた依頼の品を途中で食べることに葛藤があったようだが、速やかな依頼の達成のためにフランリューレは覚悟を決めたようだ。


 そんなわけで俺は追加で魔道コンロやフライパンなんかを用意する。


 バイローンの肉をまな板の上に乗せると、丁寧に包丁で薄く切る。


 赤身に程よくサシが入っており、しっとりときめ細やかな肉質をしている。


 とても綺麗な赤身肉だ。


 魔道コンロを点火すると、その上にフライパンを乗せて油を敷く。


 さすがに地上八百メートル半ばで凝った料理を作るわけにはいかないので、簡単に作れる焼き肉だ。ただ素材がいいのでシンプルなもので十分に美味いと思う。


 フライパンの上にサッと並べると、ジュウウウという焼ける音が響く。


 標高が高くなって風が強くなってきているが、不思議と肉を焼ける音は妙に耳に響いていた。


 やっぱり、焼き肉でフライパンは締まらないな。


 焼き肉をするなら網焼きか、あるいはプレートがいい。


 グランテルに戻ったらドロガンさんに作ってもらうことにしよう。


 ジーッとお肉を見つめていると、バイローンの肉からじんわりと肉汁が出てきた。


「シュウさん、赤身肉はあまり火を入れない方が……」


「わかっています。レアかミディアムでいきますよ」


 赤身肉はあまり焼き過ぎないのがポイントだ。


 あまり火を入れすぎると、パサついてしまって美味しさが損なわれてしまう。


 普段調理はしないフランリューレだが、こういった知識ならば少しは知っているようだ。


 表面に肉汁が浮き、片面が六割くらい焼けたらトングでひっくり返す。


 そして、ひっくり返した方も少しだけ焼いてしまえば、食べるには十分だ。


「それではいただきましょう」


「はい!」


 それぞれの取り皿に取り分けると、早速実食だ。


 バイローンの肉はスパイシーの実と塩であっさりといただく。


 濃厚な旨みが口の中で広がる。脂身は控え目ながらジューシーでとても柔らかい。


 まさに赤身らしく旨みと脂身のバランスが絶妙だ。


「美味しい!」


「とても肉の旨みが強くて、食べただけで力が湧いてくるようですわ!」


 噛み締める度に濃厚な肉汁が迸り、フランリューレの言う通り身体の奥から力が湧いてくるような気分になる。


「思っていた以上に食べてしまいましたね」


 少し食べるだけでいいはずなのだが、すっかり食欲が増進されて気が付けば二枚目、三枚目と次々と焼いていて小腹が膨れるまで食べてしまった。


「ええ。ですが、お陰様で力が溢れていますわ!」


 張った腕を抑えて辛そうにしていたフランリューレだが、すっかりと顔色は良くなって元気いっぱいになっている。


 筋力が向上しただけでなく、すっかりと疲労も回復したらしい。


 俺も試しに力こぶを作ってみると、普段よりも大きなこぶができていた。


「おお! 筋力が向上されている! これがバイローンの肉の効果……!」


 やはり身体の奥底から湧いてくるような力は気のせいじゃないみたいだ。


 食材を食べただけで身体能力が向上するなんて本当にすごいや。


「今ならこの険しい道でも楽に登れますわ!」


 すっかり元気になったフランリューレが先に蔓を登っていく。


 手足の動きに淀みはなく、きつい傾斜や勾配でも軽やかだ。


 しかし、スカートを履いているフランリューレがグングンと先に進んでしまえば、当然見上げるこちらとしては見えてしまうわけで。


「えっと、フランリューレさん。お気持ちはわかりますが、あまり俺よりも先には進まないでください」


「えっ! あっ!?」


 大はしゃぎしていたフランリューレは、顔を真っ赤にして大人しくなった。


 その隙に俺はスカートの中身を見ないようにして跳躍。


「おお、かなり高くまで跳べるようになってる」


 バイローンの肉を食べたお陰で普段とは考えられないほどの跳躍力だ。


 まるで足の筋肉が強靭なバネにでもなったようで楽しい。


「わたくしもいきますわ!」


 羞恥から回復したフランリューレもグッと膝を曲げてジャンプ。


 俺ほど高く跳ぶことはできないみたいだが、それでもフランリューレの身体能力ではありえないほどの高さだ。


「すごいですわ! この調子ならあっという間に頂上までいけそうです!」


「ええ、この調子でドンドン行きましょう」


 バイローンの肉を食べてすっかり元気になった俺たちは、猛烈な勢いで巨大樹を登っていくのだった。







新作はじめました。


【魔物喰らいの冒険者】

https://ncode.syosetu.com/n7036id/


冒険者のルードが【状態異常無効化】スキルを駆使して、魔物を喰らって、スキルを手に入れて、強くなる物語です。


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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用だった~』

― 新着の感想 ―
[一言]  主人公、美味しい、しか言ってない気がする。
[良い点] おおっ!1日振り(体感2時間半)の「のんびり素材採取生活」の更新★ [気になる点] バイローンの肉の効果が凄すぎる点。 現実にあったら欲しい。食いたい! [一言] 作品の更新お疲れ様です。…
[一言] 質問なぜスカートを履いてきたのか まさかこの展開を楽しむためか
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