良質な採取のやり方
すみません、一話抜けて投稿してました。
ただしいのはこちらです、
スライムを捕まえた俺は、体内に右手を突っ込む。
核に逃れられないように素早く核を掴んで、そのまま抜き取る。
核を抜き取られたスライムは力が抜けたようにくったりとした。
「よし、これで十二匹目っと……」
核と一緒に抜き取られたスライムをマジックバッグに収納。
最初は中々核を抜き取ることができなかったが、十二匹目にもなると慣れてくるものだ。
採取すると決めたら素早く腕を突っ込んで、抜き取ってしまうのが大事だ。
もたもたしていると、核を移動させられて時間がかかってしまうからな。
「シュウさん、こちらもお願いします」
「わかりました」
俺が採取をしている間にルミアもたくさん採取を済ませてきたようだった。
ルミアの腕の中には七匹ものスライムが。
くったりとしたスライムをマジックバッグの中に回収していく。
「結構な数を採取しましたね。これで何匹目でしょうか?」
「今、収納しているのを合わせると二十八匹ですね」
俺が十二匹でルミアが十六匹。
小一時間も経過していないというのに驚くべき採取数だ。
「ルミアさんは採取するのが早いですね」
「私はお仕事で素材を扱ったこともありますから。とはいえ、生きている状態で採取するのは初めてで感動しました! 生きている時はこんなにもツヤがあって弾力も強いんですね!」
どこか興奮した面持ちでスライムの採取について語るルミア。
お店で作業をする時は、冒険者などが納品したものを扱っていたのだろう。
「確かに核を抜き取る前と後では皮の張りや弾力が違いますね」
核を抜き取る前は身体に弾力があり、皮もツヤツヤしている。
しかし、重要器官の核を抜き取ってしまうと、弾力が少し弱くなり、皮のツヤが落ちているように思えた。
まあ、生きている状態と死んだ状態では鮮度に違いが出るのは当然だな。
「そうなんですよね。このままでも問題ないのですが、できれば最上の状態で採取したいです」
しかし、素材を使って加工する錬金術師からすれば、生きている時のような最上のまま使いたいと思うのは当然か。
核を抜き取られたスライムを見て、悩ましそうな顔をするルミア。
【スライム】
核に雷魔法を加え、核を抜き取ることで皮や身を劣化させることなく採取することが可能。
なんとかして最上のまま採取できないのだろうかと思いながら鑑定すると、鑑定先生が答えてくれた。
「どうやら鮮度を保ったまま採取する方法があるみたいです」
「えっ!? 本当ですか!?」
「できるかどうかは不明ですがやってみます」
期待の眼差しを向けられる中、俺は近くにいるスライムを捕獲。
核目がけて手を突っ込み、指先に核が触れた瞬間に雷魔法を発動。
バチッとした音が鳴ると、スライムの体がビクンと震える。
電撃で麻痺しているのか核が動くことはない。
そのまま丁寧に核を端に寄せて、優しくすくいあげるように核を抜き取った。
すると、今までのようにへにゃりとすることなかった。生きているかのような形状を保っている。
「どうでしょう?」
「すごいです! まるで生きているかのように皮にツヤがあり、身に弾力があります!」
スライムをぷにぷにと触りながら感激の表情を浮かべるルミア。
鑑定で出てきた情報通りにやってみたが上手くいったらしい。
「どうやったのかお聞きしても?」
「核に雷を流して、ゆっくりと抜き取ったんです。重要器官を麻痺させることで体にストレスを与えることなく採取でき、劣化を抑えられるのではないかと」
「な、なるほど! 私は雷魔法を使えませんが、師匠に専門のアイテムを作ってもらえれば何とかなるかも」
ぶつぶつと呟きながら考え込むルミア。
雷魔法のエキスパートでもあるサフィーなら、容易に採取するためのアイテムが作れそうだ。
「帰ったら師匠と相談してアイテムを作ってみてもいいですか?」
「構いませんよ。出来上がった際は一つ頂けると嬉しいです」
「勿論です。もし、商品化すれば、一部代金もお渡しいたしますね」
良質なスライムの素材を採取する知識と、そのアイテムにどれだけの価値があるかは未知数であるが、それで良質な物が出来上がるのなら嬉しい。
それに便利な採取道具ができるのは大歓迎だ。期待して待っておこう。
「では、良質なスライム素材もドンドン採取しましょうか」
「はい!」
●
草原でスライムの採取を続けていると、通常のスライムとは色の違う個体を見つけた。
普通のスライムは不透明な水色をしているが、目の前にいるのは不透明ではあるものの青や緑といった色をしている。
【ブルースライム 危険度F】
主に水辺に棲息するスライムの亜種。
青い体色をしており、他の個体よりも触るとヒンヤリしている。
水属性の力を宿しており、水球を飛ばしてくるが、大した威力はない。
【グリーンスライム 危険度F】
草原に主に棲息するスライムの亜種。
緑色の体色をしており、草のような爽やかな香りがする。
土属性の力を宿しており、地面を盛り上げたり凹ましたりできる。
鑑定してみると、それぞれのスライムの名前や情報が出てきた。
どうやらスライムの亜種らしく、その土地にある魔力や属性を宿しているらしい。
「ブルースライムとグリーンスライムを見つけましたが、どうしますか?」
「あっ! その子たちは水属性と土属性を宿しており、別のアイテムに使えるので採取して頂けると助かります!」
属性を宿しているから使い道があるようだ。
俺は頷くと、近くにいるブルースライムへと近づく。
俺に気付いたブルースライムは身を震わせると、魔法陣を展開して水球を飛ばしてきた。
しかし、その水球の速度は遅く、規模も小さなものだったので軽やかに避ける。
外れた水球は後方でバシャリと音を立てて弾けた。
特に地面を濡らしただけで威力はほぼほぼ無いと言っていい。
属性の力があるとはいえ、基本的な能力はスライムだ。
二発目の水球も同じように避けると、そのまま腕を伸ばして捕まえる、
そして、同じように手を入れて核に触れると、指先から雷を流した。
ビクリと震えて動かなくなったブルースライムから核を抜き取った。
動揺にグリーンスライムも同じように採取。
こちらは地面を凹ませる程度しかできないので、抵抗らしい抵抗は皆無だった。
「ブルースライムは体内がヒンヤリとしてて、グリーンスライムは清涼な香りがしますね」
「レッドスライムは温かく、ライトスライムは明るく。スライムは属性ごとにわかりやすい特性があって面白いです」
属性を宿す魔物などはよくいるが、これほどわかりやすいのはそういないだろうな。
「なんだ? スライムたちが一か所に逃げてくぞ?」
「逃げているんじゃないわ。一か所に集まってる?」
ブルースライムとグリーンスライムを収納していると、そんな声が聞こえた。
振り返ってみると、少し離れたところで冒険者たちが呆然としていた。
その視線では大量のスライムが一か所に集まっている。
スライムは互いの体を密着させると、やがて大きなスライムへと変化した。
「あれはビッグスライムです!」
指をさして叫ぶルミア。
【ビッグスライム 危険度C】
スライムが百体以上集まり、合体することで進化する。
体積が増えた分、体当たりなどの単純攻撃の威力が上がっている。
酸性分も強化されており、長時間取り込まれると溶かされる。
体を変化させて触手のように操ることが可能。
ただのスライムと侮ると痛い目を見る。
通常のスライムよりも素材が上等。
鑑定してみると、ルミアの言う通りただのスライムではなく、ビッグスライムとなっている。どうやら百体以上のスライムが合体することで進化する上位種らしい。
高さ十五センチ程度しかなかったスライムだが、今や人間よりも遥かに大きい三メートルほどの高さになっていた。