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異世界のんびり素材採取生活  作者: 錬金王
沼地採取編
161/218

毒沼蛙

すみません、1話飛ばしてしまいました。

こちらが先ですのでお手数おかけしますが、こちらからよろしくお願いします。


「大漁です!」


「たくさん獲れました!」


 ふと気が付くと、大量の沼シャコを捕まえていた。


 ネットの中を見てみると、そこにはうじゃうじゃと沼シャコがいる。


 こうやって集合した姿を見ると、中々に絵面的にすごい。


 こういうのに弱い人は見ただけで卒倒しちゃいそうだ。


 エビやシャコって水中や地中にいるから存在を許されているような気がするな。


「すっかりと夢中になってしまったな。これだけ獲れれば十分だろう。適当なところを見つけて食べてしまおう」


「今すぐですか?」


 レイルーシカの言葉に俺は少し戸惑う。


 時間帯的にはまだ昼にもなっていない。小腹は空いているが、そこまで急いで食べるほどではない。


「沼シャコは鮮度が落ちるのが早い。できれば生きているうちに茹でてしまうのがいいんだ。死んで時間が経つと、自らの分泌液で身が溶けていって味が薄くなる」


「なるほど。それなら少し早いですが、食べてしまうのがいいですね」


 鮮度が落ちるその早さに驚きつつ、俺は賛成を示すように頷いた。


「あっ、雨です」


 傍にいたルミアがポツリと呟いた。


 その言葉を皮切りに空から雨粒が落ちてきて、それは瞬く間に勢いは増した。


 あっという間にサーッとした雨になる。


 ずっと雨が降りそうな雲が漂っていたので、そのことに対する驚きはない。


「この近くに魔物があまりいない洞窟がある。そこで雨宿りをしながら食事にしよう」


「賛成です」


「待ってください! 地中から魔物の気配がします!」


 レイルーシカの案内でついていきたいところであるが、俺の調査スキルが魔物の気配を捉えていた。


 蛙のようなシルエットをしたそれは、地中をすごい勢いでかき分けてこちらにやってくる。


 そして、地面があちこちで持ち上がるので、俺たちはその場を飛び退いた。


 地中から姿を現したのは中型犬くらいの大きさを誇る蛙だ。




【毒沼蛙 危険度C】

 テラフィオス湿地帯などの場所に生息する蛙型の魔物。

 普段は地中で暮らしており、獲物を見つけると地中から襲いかかる。

 沼蛙とは違って、身体の内部に毒を溜めており、そこから毒を吐き出す。

 体表が一部紫色になっているのが特徴的。

 収納された舌が長く、二メートルくらい伸びる。

 唾液に肌が接触すると、爛れるので注意。

 また跳躍力が高く、五メートルほど跳び上がることができる。



「……沼蛙ですか?」


「いえ、毒沼蛙のようです」


 鑑定してみると毒沼蛙と表示されている。


 地中からやってきたせいで泥塗れであるが、よく見てみると紫色の体表が見えていた。


「嫌なタイミングですが、目的の毒性素材の一つですね」


「ここで倒して素材を採取しましょう!」


「わかった。沼シャコのためにもできるだけ早く片付けるぞ!」


 うちの女性陣がとても好戦的だ。


 物騒な魔物なので回れ右をしたいが、目的の素材とあってはそうはいかない。


 ここで倒して採取しよう。


「せいっ!」


「ゲロゲロッ!」


 ルミアが剣を抜いて突撃すると、毒沼蛙たちは一斉に跳び上がって回避。


 すぐに振り返って斬りかかるが、跳躍されて空を切る。


「ルミア、危ない!」


「ゲロッ!?」


 ルミアの死角から跳ねてきた毒沼蛙をレイルーシカが斬り捨てた。


「すみません」


「気にするな。こいつらは常に跳び跳ねる。冷静に対処するべき奴だけを見極めろ」


「はい!」


 視界にはたくさんの毒沼蛙が絶えず跳ねている。


 レイルーシカは毒沼蛙との戦い方に慣れているようだ。


 跳躍する毒沼蛙を無理に追う事なく、跳躍して隙を晒した個体だけ斬り捨て、蹴り飛ばしている。


 相手の得意なフィールドで戦う必要はないということだろう。


 ルミアもそれを理解したのか、先ほどのように無理に深追いすることなく冷静に対処していた。


「フリーズ」


 着地する僅かな硬直を狙って、そこに氷魔法を叩き込む。


 それで二匹の毒沼蛙が氷像と化した。


 跳躍している相手を無理に狙う必要はない。着実に仕留めよう。


「ゲロゲロッ!」


「うわっ! 危なっ!」


 などと待ちの構えでいると、毒沼蛙が跳躍しながら毒を吐いてきた。


 これには堪らず俺も回避を選択する。


 俺のいた場所に紫色のドロドロとした液体が降り注いだ。


 シュウウウと何かが溶けるような音がしている。


 動きながら毒を吐くなんてマナーが悪過ぎる。


 それに泥を纏ったまま跳ねるものだから泥まで降り注ぐ。神様から貰った自慢のコートが泥で汚れて不快だ。


「ゲロロッ!」


 またしても毒沼蛙が空中で毒を吐いてくる。


「そんなマナーの悪い奴にはこうだ! ウインド!」


 吐いてくる毒を風魔法で吹き飛ばしてやる。


 すると、自分の吐き出した毒がもろに跳ね返って、毒沼蛙の体に降りかかる。


「ゲロロロロッ!?」


「お、おお。自分の毒なのに利くんだ」


 毒を吐くことができるが、自分の毒に対する耐性はなかったらしい。ちょっと不思議だ。


 毒を浴びてもだえ苦しんでいる三体にアイスピラーでとどめをさしておく。


 すると、何かが俺の足に巻き付いた。


「熱っ!」


 そう認識した瞬間、俺の足に焼けるような痛みが走った。


 自分の足を見下ろしてみると、足首にはピンク色の舌らしきものが巻き付いている。


 毒沼蛙の舌だ。確か舌には強い酸性液があるんだった。この痛みはそのせいか。


 舌を辿っていくと、遠くにいる個体が口を開けて長い舌を伸ばしていた。


 魔法で反撃しようとすると、舌がうごめいて俺の身体を引っ張ってくる。


「おわっ!」


「シュウ! 大丈夫か!」


 舌の強さに体勢を崩しそうになったが、レイルーシカが舌を切断してくれたことによって難を逃れた。


「ありがとうございます!」


 切断された舌が地面でのたうち回る。まるで大きなミミズみたいだ。


「ゲロ! ゲロゲロッ!」


 毒沼蛙を倒すも、地中からドンドンと出てくる。


 かなりの数がいるようで倒しても倒しても湧いてくる。


「……このままではキリがないな」


 この状況を打開するには範囲魔法で一気に仕留めるのがいいだろう。


「シュウさん、レイルーシカさん、私の傍に来てくれますか?」


 二人を呼ぼうとするよりも早く、ルミアが俺たちを呼びつけた。


 そのことに驚きつつも、俺とレイルーシカは素直にルミアの傍に寄る。


「レイルーシカさん、靴の裏にこれを貼り付けてください」


「あ、ああ。わかった」


 ルミアはポーチから靴底のようなものを渡すと、レイルーシカに装着をさせる。


「着けたぞ」


「お二人ともジッとしていてくださいね」


 靴底をつけるのを確認すると、ルミアはポーチから丸い透明な球を取り出す。


 その中には黄色と緑の入り混じった強いエネルギーが見えた。


「えいっ!」


 ルミアはそれを毒沼蛙の傍に投げつける。


 すると、透明なガラスのような膜が割れて、中にあるエネルギーが解放された。


 バリバリバリバリッ!


 その瞬間、地面に広がる雷撃。


「「ゲロロロロロロロロロッ!?」」


 ぬかるんだ地面には多くの水分が含まれており、毒沼蛙たちは感電した。


 跳躍していたものたちも、すぐに雷の餌食となる。


「うわわっ!」


「大丈夫ですよ、レイルーシカさん。私たちの靴底は、感電を防いでくれる素材でできていますから」


「そ、そうか。いきなりやるものだから肝が冷えたぞ」


 恐らく、靴底に絶縁体のようなものが練り込まれているのだろう。


 俺たちもぬかるんだ地面の上にいるが、感電はまったくなかった。


 ルミアのことは信用しているのでその心配はしていなかったが、アイテムの威力には驚かされた。


「すごい威力ですね」


「雷石を応用して作った放電球です。師匠の魔法まではいきませんが、それなりの威力は出ます」


 それなりとはいうが、中級魔法くらいの威力があったような気がする。


 これには地表にいた毒沼蛙だけでなく、地中にいた個体も昇天している。


 調査スキルで確かめてみると、地中でひっくり返っている毒沼蛙がたくさんいた。


 最早、地中に出てくる個体はいないだろう。氷魔法で範囲攻撃をしようと思っていたが、こっちの方がきっと有効だっただろう。


「そういえば、見習い錬金術師だと言っていたな。このようなアイテムを作れるとは、素晴らしい腕だ」


「いえいえ、私なんて師匠に比べればまだまだですよ」


 レイルーシカに褒められて、ルミアが謙遜する。


 その表情からは驕りといったものは全く感じられない。


 錬金術師の基準はよく知らないが、国に四人といないマスタークラスの錬金術師の弟子だ。


 多分、ルミアの実力は並の者よりも遥かに上なんだろうな。


「それよりもシュウさん、足の方は大丈夫ですか?」


「ちょっとヒリヒリしますね」


「見せてください」


 心配そうな声音をしているルミアに言われて、今更のように痛みを思い出した。


 ルミアは一声かけると俺のズボンの裾をゆっくりと捲り上げて診察。巻き付けられた場所を見ると、すっかりと赤くなっておりヒリヒリと痛む。


 酸性液を持つ毒沼蛙の舌に巻き付けられたせいだ。


「これなら下級のポーションですぐに治ります」


 ルミアはそのように診断をくだすと、ベルトに巻きつけた試験管を取り出して俺の足首にポーションをかけた。


 すると一気に肌の赤みと痛みが引いていった。


「ありがとうございます。ヒリヒリとした痛みがなくなりました」


「よかったです。念のためにポーションを染み込ませた包帯を巻いておきますね。次期に違和感はなくなるはずです」


 そのように説明をするとルミアはバッグから取り出した包帯にポーションに染み込ませて足に巻いてくれる。


「なるほど、そのような使い方があったのか」


「こうすることで傷の治りが早くなるんです」


 ルミアの治療法を見て、感心の声を上げるレイルーシカ。


 錬金術師ならではの豆知識というやつだろう。


「ありがとうございます。お陰ですっかりと痛みもなくなりました」


「いえいえ、これが私の役目なので! レイルーシカさんも怪我をしたらすぐに診せてくださいね」


「ああ、その時は頼む」


 にっこりとした笑顔を浮かべるルミアをとても心強く思うのであった。










 




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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用だった~』

― 新着の感想 ―
[気になる点] この世界には 解毒とかの魔法はないの? そういえば、ヒールとかの魔法もないみたいだね?
[一言] レイルーシカですが、初登場以来女性であると一言もなかったので、「うちの女性陣」という言葉に???という状態となりました(笑) そう、ずっと男だと思って読んでいたのです。 別に違和感なかったし…
[一言] シャコから今回の間で何話か飛んでない?
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