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異世界のんびり素材採取生活  作者: 錬金王
火山採取編
125/218

火山の魔物

『異世界のんびり素材採取生活』の書籍化が決定しました!

レーベルは宝島社様です。

発売日は8月26日。Twitterにて先行でキャラデザをアップしております。

Amazonでも予約できますのでよろしくお願いします。


 ラゾーナが徘徊する場所を抜けると、徐々に道幅が広くなってきた。


 狭い鍾乳洞というよりかは既に立派な洞窟だ。


「なんか暑くなってきたな」


 いつの間にか空気が随分と熱くなっている。歩いているだけでじんわりと汗が出てきた。


 この温度の変化は麓部分を抜けて、中腹に近づいてきた証なのだろう。


 中心部から頂上にかけては溶岩が流れていると聞いたので、近づくにつれて暑く感じるのは何もおかしくはない。


 調査で周囲を警戒しながら進んでいると、目が痛くなるような赤い光が飛び込んできた。


「眩しっ!」


 暗闇に目が慣れていたからか、その光は刺激的だ。


 それでも光に慣れようと瞬きをしながら進んでいくと、光源の正体は溶岩だということがわかった。


 広くなった洞窟の遥か前方で真っ赤な溶岩が流れている。川のようなサラリとした清涼感とは程遠いドロドロとした粘着感。しかし、見る者に畏怖を抱かせる圧倒的なエネルギー

を感じさせられた。


「うわぁ、溶岩が流れてる。遠くから眺めているだけでも迫力があるな」


 周辺を覆う地面は炭化しており、血管が走るように赤い光が漏れている。


 溶岩の強い光が反射して、洞窟内を怪しく照らしていた。


「というか、シャレにならないくらい暑い!」


 溶岩による熱が空気にまで伝播しているのか、先ほどとは比べものにならない暑さだ。


 狭いサウナ室に閉じ込められているような息苦しさを感じる。


 肌が空気に触れているだけで暑い……というか、熱い。


 呼吸をするだけで熱気が体内に入って、内側から炙られているようだ。


 あっという間に肌からは玉のような汗が噴き出し、身体が水分を欲する。


 このままでは進むこともままならないし、水がいくらあっても足りない。


「フリーズ」


 俺は早々に氷魔法を使って、自分の身体を冷気で包み込んだ。


 ひんやりとした冷気が熱気を吹き飛ばす。肌を焼くような熱さがなくなり、心地よい呼吸ができる。


 火照っていた身体の熱が一瞬にして取り払われて、ホッと息を漏らす。


「ふう……氷魔法が使えて助かった」


 氷魔法が使えなかったらこれらの全てをアイテムで補わなければいけないのだろう。


 さすがにそれだけでは補いきれないので、暑さに耐えながらの冒険だ。


 頂上にいけばもっと暑くなるらしいので、氷魔法がなければ相当厳しそうだな。


 一瞬の氷魔法だけだとまたすぐに暑くなるので、そのまま冷気を放出し続けることで身を守る。


 冷気を出しているだけで魔力を消費するが、俺には豊富な魔力があるのでこれくらいの消費は微々たるもの。何日でも保てそうな感じだ。


 氷魔法でひと心地ついた俺は、マジックバッグから湧き水筒を取り出して水を飲んだ。


 乾いていた喉が潤い、身体の中から冷やされる。


 氷魔法を使うまでの短い時間にドッと汗をかいたからな。脱水症状だけは起こさないようにちゃんと水分は補給しておかないと。あと、水分だけでなくきちんと塩分も。


 事前に買っておいた塩を取り出して、それをぺろりと舐める。塩分が流れて身体が欲していたからか、それだけでも美味しかった。


 タオルでしっかりと汗を拭って、冷却シートを首回りや脇の下なんかに貼っていく。


「あっ、冷たくて気持ちいい」


 あまりに気持ちがよくて洞窟内で気持ちの悪い声を出してしまった。


 完全に変態だな。今回の依頼では同行者がいなくて心からよかったと思う。


 暑さ対策ができると最後に炎の指輪をはめておく。


 ここからはどんな魔物が出てくるかわからないからな。用心しておくに越したことはない。


「そういや湧き水筒は、マジックバッグに入れていたらダメな気がする」


 タオルなどをマジックバッグに収納する時に、ふと思った。


 マジックバッグの中では時間が停止している。ということは、時間経過で水を生成するアイテムの機能も止まってしまうんじゃないだろうか。


 少し荷物になるが効果を確かめるために収納せずに持っておこう。


 準備が整ったのでそのまま奥へと進んでいく。


「調査」


 調査をしてみると岩壁にはたくさんの素材が埋もれているようだ。


 火山だけあってか豊富な鉱石があるみたいだ。この辺りではどのような鉱石が採れるのだろう。


 マジックバッグから硬魔石のツルハシを取り出して向かう。


 調査スキルで見えている素材目がけてツルハシを振るう。


 硬魔石で作られているツルハシは、レディオ火山に岩壁であっても問題なく掘り進められるようだ。ボロボロと岩壁が抉れていく。



【魔鉄】

 魔力との親和性が少し高い鉄。魔力を込めながら加工することで丈夫になる。



【赤輝石】

 赤く輝く石。高熱処理をすると一層鮮やかな色合いになる。未処理で鮮やかな色合いのものは高値で取引される。レディオ火山でのみ産出される。


【永燃焼石】

 ずっとほのかな火を灯し続ける石。水をかけたり、冷やしたりしない以上、火が消えることはない。



「火山地帯だけあってか鉱石も豊富だな」


 出てきたのは三種類の鉱石類。


 黒と銀色の混じった鉱石が魔鉄。赤く輝く丸っこい石が赤輝石、灰色で中心部分が赤熱しているのが永燃焼石だ。


 魔鉄はルミアの欲しいものリストに書いてあった鉱石だ。最初の採掘で手に入れることができたとは幸先がいい。


 しかし、品質は普通の模様。


 どうやら品質が良ければ良いほど銀色の部分が多くなるようだ。


 ルミアに書いてあるメモを確認してみると、高品質のものと指定がされているのでこれではダメだな。


 だけど、一度目にしたお陰で検索をかけて調査できるようになった。


「魔鉄、調査」


 この場所で高品質のものが採れるのか調査をかけてみると、どれも青や紫といった普通かそれ以下の品質のものばかり。


 どうやらこの場所には品質の高いものは採掘できないようだ。


 もっと先のところで採掘する必要がある。


 赤輝石はその名の通りに綺麗な赤い石だな。小さいサイズのものでポツポツといい色合いをしているものがある。これは武具の加工というよりかは、装飾品としての価値が高そうなのでロスカへのお土産にしよう。


 永燃焼石はずっとほのかな熱を持っている石だ。


 暑苦しいレディオ火山では特に需要は感じないが、冬になればいい暖房具として機能しそうだ。ポケットに入れてカイロ代わりにするといいかもしれない。


 十分な量の素材を採掘した俺は、それらをマジックバッグに収納する。


 採掘を終えて洞窟の中を進んでいくと魔物調査に反応があった。




【リザードマン 危険度C】

 トカゲのような顔をした二足歩行型の魔物。知性はそれなりにあるものの会話はできない。

 武器や防具を持っている上に腕力が強く、強靭な身体能力を有している。



【ファイヤーバード 危険度E】

 炎を身に纏っている鳥の魔物。

 風をおくると炎がさらに燃え上がって速度が増すので注意。

 水をかけて炎を鎮火させると飛べなくなってしまう。



 鑑定するとそれぞれの魔物についての情報が出てくる。


 剣と盾を持ってうろついているのがリザードマン。


 そして、天井部分を飛び回っている燃え盛る鳥がファイヤーバードのようだ。


 実際の視界で直視できるのはその二体だけ。


 しかし、俺の視界では溶岩の中にシルエットとして可視化されている魔物がいた。



【マグマクラブ 危険度C】

 火山地帯に生息する蟹の魔物。丈夫な甲殻の上に炭化した溶岩を纏っている。

 溶岩の中を移動することができ、ひっそりと近づいて攻撃してくる。

 熱に強い甲殻は熱耐性の防具素材としてよく使われる。



「……本当に溶岩の中にいても平気なんだな」


 まだこちらに気付いている様子はないが、その魔物は溶岩の中で確かに動き回っていた。


 溶岩の熱量は千度以上だ。


 そんなところに入って平然としていられるとは、改めて魔物という生き物の凄さを実感させられる。


 こちらが入ることのできない溶岩に潜み、近づいてくるとは質の悪い魔物だ。


 溶岩の中にいるマグマクラブを警戒しながら進んでいくと、上空を飛んでいたファイヤーバードがやっ

てきた。


 ファイヤーバードは俺の真上に陣取ると、攻撃するタイミングを見計らって旋回する。


 いつ突撃してくるかわからないので嫌だな。


 場所を移動しながらファイヤーバードを警戒していると、視界の端に魔物のシルエットが見えたので後退する。


「危なっ!」


 ふと、足元を見れば溶岩の中から回り込んできたのかマグマクラブが傍にいた。


 炭化した岩とドロリと赤熱した溶岩を身に纏っている蟹だ。


 分厚い鋏をガチガチと鳴らしている。


 あんなもので挟まれたら足がおさらばだ。


 マグマクラブをフリーズで氷漬けにする。


 すると、真上にいたファイヤーバードが燃え盛る炎をまき散らしながらこちらに突撃してきた。


 嫌な連携技だ。あの炎に炙られるだけでこちらは大火傷を負わされるだろう。それくらいの熱量を持っている。


 ファイヤーバードの羽根もルミアの欲しいものリストに入っていたな。


 水魔法に弱いみたいなので、突っ込んできたファイヤーバードに水球を当ててやる。


 身体を纏う炎が推進力のような役割を果たしていたのだろう。鎮火した瞬間にバランスを崩した。


 よろよろとこちらにやってくるファイヤーバードをフリーズで氷漬けにする。


 二体の魔物が凍死したことを確認して、マジックバッグに収納した。


 明確な弱点がある魔物は対処するのが楽でいいな。鑑定のお陰で対応が楽だ。


 とはいえ、好んで戦いたい相手ではないけど。


 戦闘を終えて一息ついていると、遠くにいたリザードマンが鳴き声を上げて近づいてきた。


 遠くにいるからやり過ごせるかと思ったが、戦闘音でバレてしまったらしい。


 レディオ火山は総じて見晴らしのいい場所が多いせいで、隠れてやり過ごすのが難しいな。


 頂上付近に生息しているヴォルケノスの卵をとって、持ち帰る必要があるのだが大丈夫だろうか。


 走ってくるリザードマンにアイスピラーを射出しながら、帰り道を不安に思うのだった。






お読みくださりありがとうございます。


『書籍化おめでとう!』

『続きが気になる!』

『更新頑張れ!』


と思われた方は、ブックマークと下にスクロールして☆を押していただけるとすごく嬉しいです。どうぞよろしくお願いします!


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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用だった~』

― 新着の感想 ―
似たような題名の作品があってこちらから読んでいるのですがイントロが似てるだけで全く違うしこちらの方が好きです。アニメを観てアレ?コレは違うと、この作品は是非アニメ化して欲しいです!
[気になる点] >丈夫な甲殻の上に炭化した溶岩を纏っている。 一言言おうかと思ったら、既に感想欄でフルボッコで笑った。
[気になる点] 海に潜れるアイテムを使ったら、熱も通さないんじゃ?
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