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最終話「世界征服は終わらない!」


「ああああぁぁぁぁ~~~~~~っ!」


 終わらない仕事にとにかく手を動かし続ける。俺が三つの選定候にされてから仕事が格段に増えてどうにも手が回らない。前にもこんなことがあったけど、人を増やして仕事を分担すればしただけまた俺の仕事が増えて一向に減った気がしないのは何故だろう。


「フロト殿、面会の時間です」


「――ッ!今行きます」


 カンベエが呼びにきたから一緒に出て行く。渉外はカンベエやミカロユスに任せているけど全て丸投げとはいかない。俺が会わなければならない相手も多くいる。


 当初の予想通りというか何というか……。俺に会いたがる者は格段に増えた。表向きは選定候就任や公爵への陞爵の祝いだけど、実際は俺についた方が得か、俺を潰した方が得かを見るためにやってきている者が大多数だ。


 渉外担当達が会った方が良い相手とか、会わない方が良い相手を選別し、会うのならばどういう風にした方が良いかも調べてきてくれている。適当に愛想笑い(仮面だから見えないけど……)で軽く流す相手なのか、きっちりこちらに取り込んだ方が良い相手なのか。


 最終的な判断は俺がしているけど、渉外担当や間者達が集めてきた情報をもとに判断している。門前払いの相手や、担当官達だけで済む相手なら良いけど、俺が顔を見せなければならないような相手が来るとなればこうして面会もしなければならない。


「どうせ仮面で素顔がわかりませんし……、誰か影武者をたてても良いのでは……」


「なりませぬ。王はただ一人。例え顔がわからないからといって他の者に任せるなど言語道断ですぞ!」


「はい……」


 カンベエに怒られてしまった……。襲われる危険のある場所に出向く場合はむしろカンベエの方が影武者を使えと言ってくるのに、こういう交渉や面会の場では絶対影武者は使うなと言ってくれる。カンベエの言っていることは正しく、だからこそカンベエは信じられる。


 ここで外交も交渉も面会も影武者を使え使えと言うようならカンベエには叛意ありということになる。


 そりゃ俺を差し置いて影武者にしゃべらせるだけだったら、カンベエやミカロユス達担当官の思い通りに出来るわけだからな。それを俺が楽だからと唆して勧めるようでは叛意ありと言われても言い訳のしようもないだろう。


 でもカンベエはこういう重要な場では必ず俺に出ろと言ってくる。それは最後の重要な判断は必ず俺がしなければならないというカンベエの俺への戒めだ。いくら俺の考えていることを言わせるだけだとしても、この最後の最後の判断だけは自分でしなければならない。そう言ってくれるからこそカンベエ達は信用出来る。


「それでは今日も頑張りましょうか」


「はっ!」


 カンベエ達を連れて、今日もまた大勢の貴族や商人達との面会リレーが始まったのだった。




  ~~~~~~~




 はぁ……。毎日毎日疲れる……。


 俺が三つの選定候に任命されたために割譲された領地のほとんどは一応俺の名義になっている。とはいえ細々したところまで正確に決まっていたわけじゃない。それらの正式な国境線画定や賠償金の分配、領土の分配と配置転換と、しなければならないことが山積みだった。


 まずほぼ全て俺の領土ということになったと言ってもそれは俺の代での話だ。三つの選定候領を俺が同時に保有しているからであって、もし将来別々の人物がそれぞれ選定候領を引き継げばその境界が曖昧では揉めるもとになる。だからどの爵位の領地はどこからどこまでと正確に決めておくのは当然だろう。


 さらにラインゲン侯爵家はバイエン派閥を抜けてしまった。王国に頼み込んで領地替えを申し出て、俺達が賜った領地へとラインゲン侯爵家を移動させなければならなかった。幸い領地はいくらでもある。それ自体に問題はない。問題があるとすればどこへ移動させるかとかそういう問題だけだ。


 他の三家に対しても働きに応じて領土を分配して加増したし、賠償金に関しては活躍などではなく戦争にかかった負担に対して平等に分配することになった。


 兵を動員した人数と日数で大まかな負担戦費を割り出し、俺達五家の戦費の負担の割合を導き出した。その割合に応じて賠償金を分配したというわけだ。だから初期から多くの兵を出した家ほど分配は多く、最後に少数の兵を出しただけのラインゲン家が一番少なくなった。


 負担も推定であって実費じゃない。物価と使用した物資の推定量で計算しているだけだから、実際にはそれより安く物資を仕入れていたかもしれないし、それより高く仕入れていたかもしれない。あくまで五家が納得出来るように、実際にかかった戦費ではなく延べ動員数と物価から計算した。


 俺達の中ではいないと思いたいけど、実費で計算すると言い出せば架空の経費をでっち上げる者も出て来る可能性はある。俺達五家の中でそれはないとわかっているけど、今後のために前例としてそうしておいた。これからはもっと友軍が増える可能性もある。そうなれば全員が全員誠実であるとは限らないからな。


 そもそも実費で計上するのなら武器弾薬の消耗が激しいうちの割合が高くなりすぎる。皆は兵士の兵糧や馬や武器防具の経費くらいだ。それに比べてうちは攻撃をするだけでも弾薬の消耗があって費用が馬鹿にならない。


 まぁそんな面倒な分配や領地替えもようやく一段落してきた。もうすぐ学園の卒業式が迫ってきているというこんな時期までかかってしまったからな……。


「おや……、これは……」


 書類整理を終えて一息ついていると報告書があがってきているのが目に付いた。何気なく手に取って休憩がてら目を通す。


「なるほど……」


 西大洋を越えた先に見つけたのはやっぱり大陸だった。アメリカーン大陸と名付けられたその大陸には今、こちらから多くの者が渡っていっている。ブリッシュ・エール王国から島伝いに渡っていったけど、今では西大洋を横断しての航路も実現している。


 ただやっぱり長距離、無補給で動力もない船というのは色々と厳しい。あまり無茶をさせていたらそのうち事故も起こるだろうし、せめて動力を積んだ船くらいは開発して、凪でも運航に影響しないようにはしてあげたい。


 アメリカーン大陸では少数ながら現地民が住んでおり、こちらでは見ないアメリカーン大陸原産の動植物も色々とあるらしい。先住民達もこちらに友好的だそうで、こちらからも下手に手を出して揉めないようにと厳重に注意している。


 ジャガイモやトマトはヤマト皇国経由ですでにこちらに入ってきているけど、他にも欲しい物はたくさんある。食べ物だとトウモロコシやカカオ、バニラなどの各種香辛料とか、食品以外ならゴムなども欲しい。熱帯原産や南北アメリカ大陸原産の物は今後欠かせない物がたくさんある。


「あぁ……。こうして人に任せて待っていることしかできないなんて……。いっそ自分で冒険に出たいものです……」


 一応探して欲しい物はリストアップして俺がわかる範囲の特長などは知らせている。でもやっぱり俺が直接見た方が早いだろう。あぁ……、行ってみたいなぁ……。アメリカーン大陸……。


「今の全てを捨てて、冒険の旅に出られるというのですか?」


「カタリーナ……」


 俺の独り言を聞いていたらしいカタリーナがじっとこちらを見ている。何と答えたものだろうか。本音で言えば、出来ることならこんな面倒なしがらみなんて全部捨てて、ただ一人の探検家としてアフリカーン大陸やアメリカーン大陸の探検をするのも良いと思っている。でも実際にそれは出来ない。


 俺はもうあまりにたくさんの物を背負いすぎた。今更全てを投げ捨ててどこかへ逃げ出すことなんて出来ない。それに俺自身が捨てたくない物がたくさんある。


 捨てたい物もたくさんあるけど、それは捨てたくない物と不可分の物であり、捨てたい物だけ捨てて、捨てたくない物だけを選り分けることは出来なくなっている。ならば俺は全てを背負って生きていくしかない。


「フローラ様、今夜閨に参られる時はお一人でお願いいたします」


「え……?」


 俺が聞き返した言葉はスルーされ、カタリーナはそのまま出て行ってしまった。カタリーナを怒らせてしまったから今晩は一人で寝ろってことかな?まぁ……、たまには夫婦喧嘩をしてそういうこともある。どうにも納得は出来ないけど、そう言われたら仕方がないと俺は今夜の一人寝を覚悟したのだった。




  ~~~~~~~




「え~……、これは……、何事でしょうか?」


 仕事を終えて、一人で寝室に入るとそこには……。


「フローラ様」


「フロト」


「さぁフロト」


「フローラさん、こちらですわよ」


「えっと……、フロトこっち」


 今夜は誰もいないと思っていたベッドの上には、あられもない姿のお嫁さん達が俺を誘うように、否、俺を誘っていた。


「……あの?」


「フローラ様、この状況でまだ野暮なことを言われるおつもりですか?」


「…………いえ」


 覚悟を決めた俺は一番真ん中で寝転がっているカタリーナに圧し掛かった。顔と顔が触れるほどに見詰め合う。


「フローラ様……」


「カタリーナ……」


 俺達の顔は自然と近づいて……、そのまま唇同士が触れ合った。最初はただ軽く、そっと触れただけ。しかし……、一度触れ合うとあとはもう何の歯止めもかからない。まるでお互いを貪るように、熱く、深く、混ざり合う。


「あ~ぁ……、やっぱり最初はカタリーナに盗られちゃったかぁ」


「仕方ないよね。カタリーナは一番最初からずっと待ってたんだもん」


「え?じゃあこの後は……、出会った順で?」


「私は何番目でも構いませんわよ」


 他のお嫁さん達があれこれ言っているけどあまり頭に入ってこない。俺とカタリーナはただひたすらに、深く深く、混ざって溶け合ったのだった。




  ~~~~~~~




 あ~~~……。昨晩は激しすぎた。結局ほとんど眠らず明け方まで皆と溶け合ってしまった……。爛れた生活だな……。


 今日はさすがのカタリーナですらまだ眠っている。別に数日なら寝なくても何とか耐えられる俺と違ってお嫁さん達は普通の人間だしな。そっとしておいてあげるのが一番だろう。


「さぁ、今日も一日頑張りましょう」


 疲れてはいるけど英気を養った俺は、これからまた元気に頑張ろうと一人で静かに部屋を出たのだった。




  ~~~~~~~




「…………卒業生代表、フローラ・シャルロッテ・フォン・カーザース」


「おめでとう!」


 学園の卒業式の日、首席卒業である俺の挨拶に学園長と王様が笑顔で応えてくれた。三年間全科目満点は学園始まって以来の成績らしい。結局俺は最後まで全満点だった。途中からは授業も出ていなかったのに、よく不正を疑われなかったなと思うけど……。


「おめでとうフローラ」


「フローラちゃ~ん!立派だったわよぉ!」


「三年間ずっと首席だったなんて凄いね。おめでとうフローラ」


「ありがとうございます」


 父も母も、ゲオルク兄まで俺の卒業式に来てくれている。あと言葉は話せないけどマティアスとヴィルヘルミナも笑ってくれていた。きっと祝福してくれているに違いない。


「ようやく卒業したか。これで自由に余の補佐が出来るようになったな?」


「いやぁ……、そのぉ……」


 王様までやってきてニヤニヤとそんなことを言う。今までは学園という足枷があったからあれこれと断る口実や期限を切る根拠になっていたけど、学園から卒業した今となってはそれらの言い訳は通用しない。何ヶ月でも何年でも期間を区切る理由はなくなったからな。


「え~……、あっ!そうでした!そろそろクイップチャック草原の方も片付けなければなりませんので……」


「ほう!余はまだ何も言っておらんのに自ら進んでやってくれると申すか!それは頼もしいことだ!」


「あっ……」


 しまった……。墓穴だったか……。


 確かに初期のクイップチャック草原への対応は俺が任命されていたけど、一度戻ってからは俺に行けとは言われていなかった。それなのにようやく西部方面が落ち着いてきたと思ったら、今度はまた自分でさらに東の問題を俺が担当すると言ってしまったようなものだ……。


「はぁ……」


 ブリッシュ・エール王国とホーラント王国、ブリッシュ・エール王国とフローラー朝、ブリッシュ・エール王国とノルン公国は同君連合となった。これから俺は西エウロペでフラシア王国と対峙して封じ込めていかなければならない。そして東ではクイップチャック草原をさらに纏め上げる必要がある。でも俺は……。


「私が新大陸に渡れる日はいつになるのでしょうか……」


「「「「「新大陸?」」」」」


「あっ……」


 しまった……。これだけ家族や王様がいる前でつい余計なことを言ってしまった……。これは何とか誤魔化し……。


「フローラ……、お前はまだ何か隠しているんじゃないのか?」


「フローラよ。余を謀るとは良い度胸じゃな?」


「いや~……、あの~……」


「フローラ様、お迎えに上がりました」


 ナイス!カタリーナ!


「オホホッ!それでは皆様御機嫌よう!」


「あっ!待て!」


「カタリーナ!行きますよ!」


「はい。フローラ様」


 カタリーナの手を取って駆け出す。次は東へ向かわなければならないだろう。でもいつか……、俺も新大陸に渡って、何なら世界一周でもしてみたいな。


 将来俺は世界を征服した魔王とでも呼ばれるかもしれない。それでも……、俺が望む世界を作り出すために、俺の世界征服はまだまだ終わらない。



 いつも読んでいただきありがとうございます。


 ここまで読んでくださっていた方からすると突然と思われるかもしれませんが、対フラシア王国戦争の一戦目、大カーン同盟戦争編で本作を終了とさせていただきます。


 未回収フラグ等、まだまだ物語の途中ではありますが、いわゆる打ち切りエンドという奴です。言い訳や愚痴などについては活動報告で書かせていただこうかと思いますので、色々と気になられる方は活動報告の方の記事もご参照ください。


 物語的には消化不良となりますがフローラ様の物語はこれで終わりとなります。ご愛読ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 他に読むものがなくなって、この作品を一年に一回は読みに来てしまいます。 作者様の他の作品も拝見させていただきましたが、やはりこれがいちばん良い。
[一言]  これからってときに打ち切りは悲しいです……
[気になる点] 久しぶりに何度も読みたくなる作品に出会いました。 続きも気になるけど、マンガやアニメにしてほしい。 メロンとスイカを拝みたい。
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