第五百二十七話「そういうプレイ!」
デューセルドラフを攻略して早数日、後始末もかなり進んで、各部隊も移動や配置転換が進んでいる。
正確な数じゃなかったけど速報でわかっていた通り、こちらの損害は千にも満たず、しかもすでに半数以上は原隊復帰している。デューセルドラフ攻略においては敵が大混乱に陥ったためにこちらはいつも以上に軽微な損害で済んだ。
ただ町の被害は思った以上のもので、戦闘に巻き込まれた一般市民達も結構な数がいたようだ。俺達はちゃんと時間までに避難しておけと警告したけど、まさか開戦後すぐに城門を破られるとは思っていなかったらしい。まぁその被害について俺達にとやかく言ってきているわけじゃないから良いんだけど、彼らの印象としてはあまり良くないかもしれない。
俺達だって無闇に一般市民達を巻き添えにしたかったわけじゃないけど、市街戦で乱戦になっているのに相手が誰で何者かなんて考えている暇はない。この時代には陸戦条約とかもないので、市民のフリをした兵士も当たり前のようにいるし、ゲリラ戦をしたからって何かの条約に違反するわけでもない。
その代わりに一般市民だって武器を持って兵士と一緒になって戦っていれば、殺されても文句は言えないというのが常識であり、ここの住民達だってそれはわかっている。だから表立って俺達に何か言ってくるということもないわけだけど……。
それよりも今回の戦闘でまたフラシア兵捕虜を一万ほども取ってしまった。早速レイン川を利用してホーラント王国に送りつけているけど、このまま順調に捕虜が増えすぎると負担が尋常ではなくなってしまう。
それでなくとも自軍の兵糧だけでも大変な量を賄っているというのに、何故敵兵まで何千も何万もタダで食わせなければならないのか。戦争が終わったらフラシア王国にたっぷり賠償金と物資を要求してやる!覚えてやがれ!
いくら水運があって大量輸送出来るとはいえ、デューセルドラフに何万もの兵が集まっていたら物資や生活場所だけでも大変なことになる。なので当初の予定通り『カーン軍』の援軍から三千ほどを抽出して後方や、ここより東部方面の残してきた小さな町や村の占領に向かってもらった。
部隊の分散配置もある程度進めて、他の戦線の前線押し上げや国境警備や治安維持にあたってもらっている。
「この先が問題ですね……」
「そうだな……」
今はデューセルドラフで連合軍の上層部が勢揃いしての会議の真っ最中だ。折角各軍が集まっているし、当初の予定はここまでしか決めていなかった。ここからの作戦はまた話し合って詳細を詰めなければならない。
もちろん大まかな戦略は決まっている。ケロン、ボーンとこのルウルー地方一帯を完全に制圧してしまう。これで敵は北方の大都市や拠点を失い、北部プロイス王国への攻撃の足がかりを失うことになる。さらに大河レイン川を利用して遡上し流域を制圧、奪還していけば良い。
ボーン南東のフランクフートアムメインを落とし、さらにレイン川上流の都市群を落とせばかつて奪われた領地の大半は取り戻したことになる。それ以外となれば残るはエルサ=ロスリンゲン地方くらいだろう。
ただレイン川流域は水運を利用して相当楽に進めるけど、ロスリンゲン地方はレイン川から離れるので進軍の足が鈍ることが予想される。エルサ地方はレイン川上流の西岸だからまぁ何とかなるだろう。
と、そんな先の話をするよりもまずはケロンとボーンをどうするかが大事だった。ここより南のケロンやボーンを含めた一帯はこれまでのようにはいかない。ここから南はケロン大司教領と呼ばれ教会の領地となっている。そこに手を出すというのは非常に厄介な問題になりかねない。
エウロペ大陸の各国に対して強い影響力を持つ教会は、各地に領地を持ってそこで世俗の領主として領地運営を行なっている。本来なら世俗の権力から分離しているべき宗教ではあるだろうけど、実際には絶大な権力と影響力を持っており、実際に領地も持ち、税を集めて兵を養い、戦争だって繰り返している。
人類の発達史において、初期の頃に宗教的なものが果たした役割を否定するつもりはない。集団を纏め上げ、権威をつけ、村や町から国家にまで発展していくために果たした役割は大きいだろう。でももう国がある程度まで発達してしまえば宗教の役割は終わりだ。後は足枷や周囲の迷惑にしかならない。
人々が理解出来ない現象を超常のものとして説明することで人心を鎮め、教えを広めて共有することで同一の価値観を生み出し、共通する価値観を持つ者を仲間として纏め上げ、それを支配する者達の権威の裏付けを行ってきた。そのお陰で人々は纏まり、次第に大きな組織となり、今や国家にまで発展している。
でもそれはつまり宗教は人々を手っ取り早く支配するためのツールでしかなく、自分達にとって都合の良いことばかりを吹き込む害悪となる。国や、あるいは国ですら超えた大きな集団として膨張していく時にはそれは原動力となるだろう。でもそれらは内部の権力争いや権威付けにも利用される。そして何より対外戦争の理由にされてしまう。
宗教の言う寛容とは自分達と同じ教えに従う者に対してのみ適用されるものだ。特に一神教ともなれば、自分達の教えに対して従順な者には寛容でも、自分達とは違う教えの者に対しては徹底的に不寛容となる。人にあらずとか、残虐に殺しても良いとか、そういう狂気まで押し広げてしまう。
一神教というのは支配者層には非常に都合が良い。自分達は神の代弁者であり、自分達の言うことはその宗教が崇める神の言葉だと言えばとても支配しやすいからだ。これが多神教であれば、多くの神の代弁者が出てきてしまう。自分がとある神の代弁者だと言っても、他の者が他の神の代弁者だと名乗り出てきてしまうからな。
だから一神教は他の神の存在も、それらの代弁者も絶対に許容しない。自分達の崇める神のみが唯一絶対の神であり、その神の代弁者である自分達のみが地上での支配の代行者でなければならないからだ。
宗教というのは元々人々をいかに支配するか、その支配するための便利なツールでしかなかった。その後権力と宗教が切り離された後は宗教はお金を集めることに走った。権力から切り離されても貨幣経済が発達していればお金さえ集まれば良いのだ。だから宗教はあの手この手で金や労働力を信者から集める。
人類の発達や国家の形成において宗教的権威や価値観の共有が果たした役割を否定するつもりはない。でも宗教というのは人を支配し、金を集めるための詐欺でしかない。実にくだらない。だから教会だって邪魔ならば潰せば良い……、と言いたい所だけどそんな簡単な話じゃないんだよなぁ……。
地球でも長らく宗教が世界を支配したように、そして政治や権力と分離されたと建前上は言われている現代においてですら、実質的には世界の大半は宗教によって支配されている。現代ですらそう簡単には宗教の呪縛を拭い去れていないのに、こんな時代にいきなり宗教全てを否定したり、ましてや壊すのは到底不可能だ。
もし俺が教会に楯突いて破門でも言い渡されようものならば、少なくとも俺はエウロペ大陸中の国家から神の敵として認定されてしまう。現時点でそんなことになったらプロイス王国も俺を庇わない。まさにこの時代においては世界を敵に回す行為だ。
せめてやるにしても……、もっと教会の権威を弱めると同時に、各地の領地から切り離して権力や財力を奪ってしまわなければ無駄死にになりかねない。
「何かケロン大司教領を解体して支配権を取り上げる口実でもあれば良いのですが……」
「……カーン卿は神をも畏れぬらしいな」
「まぁ普通は教会領に攻め込もうとは思わないよね~」
しまった……。つい俺の感覚でしゃべってしまった……。うちの家臣達だけならまだしも、流石にロッペ卿やヴァルテック卿は教会の信者でもあるだろう。この時代では誰もが当たり前のように教会に所属している。俺とでは宗教に対する意識や感覚がまったく別だ。
「あっ……、うっ……、おっ……、べっ、別に教会や教会勢力を叩き潰そうと思っているわけではありませんよ?ですがケロン大司教及びケロン大司教領はすでに世俗化しているも同然です。そして我々の前に立ち塞がる敵となるのならば、教会としてではなく一地方領主として排除しなければならないというだけのことです。何も命まで取ろうとも思っていません。権力と切り離したいだけなのです」
俺は口早に言い訳を並べていた。人間やましいことがあると多弁になるものだ。実際俺は教会そのものを潰しても良いと思っているからな。宗教活動そのものを否定はしないけど、現在の世俗に権力と影響力を持つ教会のあり方は許容出来ない。このままではいつかは叩き潰すことになる。
「潰せぬこともない」
「「「えっ!?」」」
それまで黙っていた父の思わぬ言葉に全員が驚いてそちらを見た。
「何も驚くことはない。今カーン卿が言われた通りだ。教会として活動しているのなら手出ししようもないが、一地方領主としてこちらに刃を向けるのならばそれは教会の活動から逸脱している。領主同士の争いに教会が加担しないように手を打てば良いだけだ。何も教会とて司教や大司教だからと他の領主との争いに全て肩を持つわけではあるまい」
「「「う~ん……」」」
父の言っていることもわからなくはないけど……、でも実質的には教会領と他の領主の争いとなれば教会は教会領側の肩を持つ場合がほとんどだろう。
「この件に関しては少し私に任せてもらいたい。お歴々もそれでよろしいか?」
「他に良い手はない。カーザース卿に任せよう」
「そうですね。私も異論はありません」
こうして、ケロン大司教領に対する工作は父に任せることになった。さすがに数日はかかるということで、俺達はその間他の準備や後始末に奔走することになり、暫くデューセルドラフに滞在することになったのだった。
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父が対ケロン大司教領の工作を行なっている間、俺達はデューセルドラフに滞在しつつ色々な仕事を片付けていた。そして俺には仕事だけじゃなくて母によるとある特訓が課されている。
「ほら!フローラちゃん!気を静めて!自分の感情に飲まれちゃ駄目よ!」
「はいっ!」
毎朝、毎晩の日課の修行以外に、今俺は自分の力に振り回されて暴走しないように特訓を受けていた。といってもあまり普段の修行とそう変わらない。結局は母を相手に組手をしているだけのような気もする。
ただ……、普通の組手と違って、俺は常に心を静めて動くように心がけている。力に振り回されず、冷静に、自分の意思のみで力を使う。それを意識して体を動かすだけでもそれなりに修行になっているようだ。
「ふぅっ!良い準備運動になったわね!」
「ハァ……、ハァ……、あっ……、あれで準備運動ですか……」
俺はもう息が上がっているというのに母は平然としている。まぁ俺はその前から母に課されていた修行のメニューをこなしているけど、それにしたって母のこの体力は産後間もないとは思えない……。本当に化物だ。そりゃフラシア兵も恐れて逃げるわな……。
「フローラちゃんはこの後お仕事があるものね。お母様はこのあとまだ少し運動をするわ。フローラちゃんはあがっても良いわよ」
「はい……。って、あっ!お母様!」
ようやく朝の修行が終わって、これからクタクタなまま仕事かと思って歩き出そうと思ったら……、母の姿が目に入って驚いた。その姿は……。
「何かしら?」
「そっ、その……、えっと……」
でも俺も口篭ってすぐに言えない。だって……、だって……。
「フローラちゃんが口篭るなんて珍しいわね?どうしたのかしら?」
「えっとですね……。その……、ぼっ、母乳が……」
視線を逸らして何とかそれだけを言うのが精一杯だった。それ以上は恥ずかしくて言えない。母の胸の部分がジワリと濡れている。運動したから汗で濡れている……、わけじゃない。胸の先だけはっきりと濡れているあれは……、母乳が染みているのだ。
「ああ~。ヴィルヘルミナとマティアスが飲んでくれないから張っちゃうのよぉ」
母は軽くそんなことを言いながら笑っているけど……、エロすぎる!いや、俺は別に母乳フェチとかそんなんじゃないぞ?でも……、あまりにもエロすぎる!何か変な扉を開いてしまいそうになる!実の母なのに!人妻の母乳プレイに嵌るとかやばいだろ!
そういえば下着は開発したけど母乳用のパッドとかは用意してなかった。今まで自分がそういう状況になったことがないからすっかり忘れていた。生理は自分もくるから生理用品はそれなりに開発したけど、自分が妊娠出産したことがないからマタニティグッズとか、子供用品とか、そういうことには頭がまわってなかった。
最近カンザ商会も新商品開発で苦労しているし、もしかして妊婦さん向け、子供向け、産後向けのグッズやアイテムというのも良い商品になるかもしれないな。
って、それは良い。それよりも、通常の下着はつけているはずだけど、その下着も上着も超えて染みている母の胸がエロすぎてやばい。俺も母のように大きくなってきたし、もし妊娠出産したらあんなに母乳が出るんだろうか……。
「あら?あらあらあら?フローラちゃん?もしかしてお母様のおっぱいが恋しいのかしら?それじゃ久しぶりに飲む?飲んじゃう?お母様もおっぱいが張って大変なのよぉ。フローラちゃんが吸ってくれたらお母様も助かるわぁ」
「なっ!?何を言っておられるのですか!ふざけるのもほどほどにしてください!」
「あらあらあらぁ。真っ赤になっちゃって、可愛いわぁ」
くぅっ!完全に馬鹿にされてる!でも反論出来ない!悔しい!いっそ本当に母のお乳を吸ってやろうか!そうすれば逆に母の方こそ驚くのでは?からかうつもりで冗談で言ったのに、本当に吸われたらどんな反応をするだろう。
「まぁ仕方ないわねぇ……。ここじゃヴィルヘルミナとマティアスがいないし、アルベルトに吸ってもらうしかないわねぇ……」
「ぶっ!?」
ちっ、父が乳を吸うのか!?いや、何を言っている俺……。落ち着け……。ちょっと動揺しすぎだ。夫婦なんだからおかしくない……、のか?いや、おかしいよな……。両親が母乳プレイとか、父が赤ちゃんプレイとか授乳プレイをしていたらと想像したらあまりにおかしすぎる。
「え~……、出産されてまだ間もないですし、次の弟妹が出来たりしないように気をつけてくださいね……」
「そうねぇ……。一応気にしておくわ」
あっ、戦時で戦場にいるのにそういうことをしてるっていうのは否定しないんですね……。まぁいいけど、本当にまたすぐに弟妹が出来たなんてことはやめて欲しい。夫婦仲が良いのはいいけどほどほどにお願いしますよ……。




