第二百七十五話「皆の家!」
ドカドカの乗り込んできたお嫁さん達にびっくりした。しかも何故か全員水着姿だ。これは一体……。
「何呆けた顔してるのよ?あっ……。私の水着姿に見惚れちゃったわけ?しょうがないわね。今日だけよ?はい、じっくり見てもいいわよ」
「あぁ……、はい……」
つるぺったんのミコトが『うふ~ん』とポーズを取る。
「何よその態度!何か不満でもあるわけ!」
「いえ……。不満はないですよ?」
不満はない。不満はないけど……。いや、正直良いと思うよ?俺は元日本人だからかスレンダー体型にも慣れている。ミコトは標準的日本人という感じだ。最近でこそ日本人でもグラマラスな人も増えてきたけど、それでもやっぱり貧乳つるぺったんとか多いと思う。
ミコトも凹凸こそ少ないけどとても綺麗な体をしている。セクシーでえっちぃと思う。ミコトに迫られたらそれだけで興奮と緊張で大変なことになるだろう。
でもなぁ……、今この場においてはやっぱり存在感というか……、比べてしまうよな……。この爆乳、いや魔乳と!
「あまりジロジロ見ないでくださいまし……」
「アレクサンドラ……、また大きくなったのではありませんか?」
アレクサンドラの二つのスイカはもう魔乳の域に達しているんじゃないだろうか。これで肩が凝ったりしないのか?まぁ俺もかなり大きい方だけど執務室で言った通り肩が凝って大変というほどではない。まだ若いからなんだろうけど酷い肩凝りに悩まされるという経験はしていない。
「まぁまぁ、言い争ってないでまずはお風呂に入ろうよ」
こちらも引き締まったスレンダーな体をしたクラウディアがそう言って皆をお風呂に入れさせる。掛け湯をしてから皆で湯船に浸かった。
「は~……。やっぱり広い湯船は必須よね」
「そうですね……」
ミコトの言葉に同意する。やっぱり魔族の国にも広い湯船があるのか。何ていうか……、文化的には日本に良く似てるもんな。日本人なら湯船に浸かりたいよな。
今回はデル王国には寄ることになったけどミコトは魔族の国には帰らなくて良いのだろうか?魔族の国っていつも言ってるけどどんな所なんだろう。ミコトもイトウ・チャラクサイも別に他の人間と違いはなかった。魔族と言っても日本人風のただの人間にしか見えない。
やっぱり何か違うのかな?血統的なものとか?遺伝子?それともただ魔力が強い人間のことを魔族と呼んでいるとか?
「な~に?私の方ばっかり見て?見惚れちゃった?」
「そうですね……」
「さっきから何よその態度は!」
俺がいい加減な返事をしたからかまたミコトが怒り出した。でも別にミコトを馬鹿にしたつもりはない。ミコトが綺麗だと思っているのは本当だ。黙ってさえいれば見惚れるほど神秘的な美少女に見える。しゃべるとまぁ……、あれだけど……。
「ミコトに見惚れていたのも本当ですが……、魔族とは何なのかと思いまして……」
「え?あ~……、そうね……。別に普通の人間と変わらないわよ?周りが勝手に魔族だ何だと言ってるだけだし。文化や文明、魔力量が違うから異種族扱いされてるだけよ」
なるほど……。確かに魔族の国だけ色々と異質だ。自分の国のすぐ近くにまったく文化や文明の異なる集団がいれば、異種族として恐れるのは当然だろう。
普通国や文明が発達する時には周辺国とお互いに影響を与え合って発達するものだ。そこだけポツンといきなり異なった発展、発達をするということは普通は起こらない。
何らかの外的要因……、例えば山に囲まれていて周辺との交流が断絶しているとか、海に囲まれていて誰とも接しないとか、そういう条件がない限りはそんなことは起こらないはずだ。そしてそういう条件があっても多少は影響しあうのが普通だろう。
それなのに山を一つ越えた先にある行き来可能な場所に、突然そんな異なる文明があったら周囲は相当恐れるに違いない。魔族の国だけがあまりに違いすぎる。これも何かあるんだろうか。
「フローラ様、そろそろお背中をお流しいたします」
「え?ああ、そうですね……」
考え事をしているとカタリーナに手を引かれたのでそのままされるがままに連れて行かれる。鏡の前に座らさせられてようやく思い出した。
「あっ!カタリーナ!何故私にこのような際どい水着を渡したのです!皆さんで一緒に入るのならそう言ってくれればよかったではないですか。それにこんな際どい水着ではなくもっと他の物もあったはずでしょう?」
皆が入って来たのにも驚いたけどそれはまぁいいとしよう。皆なりのサプライズだったんだろう。可愛い女の子達と一緒に水着でキャッキャウフフだと思えば楽しい一時だ。それよりも問題は俺の水着だけ際どすぎることだ。
他の皆も水着を着ているけどそれぞれデザインが違う。まぁ体のサイズが違うから同じ水着というわけにもいかなかったんだろうけど、俺の水着だけ明らかにえっちぃ!際どい!
「これは遊びではないのです。フローラ様のお体を洗うにあたって、このような露出の少ない水着では洗えないではありませんか。これはフローラ様を隅々まで綺麗に洗うために必要なものだったのです」
「え?そっ、そうでしたか。ごめんなさい?」
何故かカタリーナに怒られたから謝る。そうなのか?俺が間違ってるのか?
まぁ……、水着を着て遊ぶんじゃないんだもんな?お風呂に入るという目的のためなら余計な布面積は小さい方が良い。スクール水着のようなワンピースの水着だと体が洗えないもんな?ビキニのようなツーピースなのは当然……、なのか?
でもカタリーナはスクール水着のようなものを着ている。クラウディアはスポーツブラや陸上用のブルマのような水着だ。俺が着てる紐のビキニよりしっかりしている。ルイーザは上は普通のビキニタイプで下は短パンのようなものだ。
ミコトは俺と少し似ている紐ビキニタイプで、アレクサンドラはもうちょっとしっかりしたツーピースの水着を着ている。
この中で明らかに俺だけ布面積が小さいし露出が多い。俺だけ変態さんの水着みたいになっている。そう思ったら段々恥ずかしくなってきた。皆水着だからいいかと思ったけど、これって俺だけやたら恥ずかしい格好をしてないか?
「フローラ様!隠さないでください!洗えないではありませんか!これはフローラ様を洗うためにこのようにしているのです!しっかり堂々としてください!」
「はっ、はいっ!」
またカタリーナに怒られたから背筋を伸ばしてじっとする。そうだよな……。これはお風呂で洗うためだもんな?だからある程度は水着が小さくないとちゃんと洗えない。これは何もおかしくないんだ……。
「って、それではカタリーナが洗えないではないですか。言ってることがおかしくないですか!?」
カタリーナは完全なワンピースタイプだ。これじゃほとんど洗えない。言ってることがおかしい。
「私はフローラ様を洗うためにこれを着て入ってきただけです。なので私を洗うことは考えなくても良いのです。フローラ様があがられた後で私はまた自分を洗います」
「なるほど……?」
それならいいのか?確かに筋は通っている?
「あ!ちょっとカタリーナ!抜け駆け禁止でしょ!私もフロトを洗うわよ!」
「私も……」
「僕も!」
「失礼しますねフローラさん」
「ちょっ!ちょっ!」
カタリーナに体を洗ってもらっていると皆が迫ってきた。あわあわでくんずほぐれつ……。カタリーナにはいつも着替えを手伝ってもらったり、色々としてもらっているからもう抵抗はないんだけど……、他の皆にまで体を洗われて、うれし恥ずかしのサプライズ入浴は長く続いたのだった。
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う~ん……。昨晩のお風呂は凄かった……。別に何をしたということはない。ただ皆であわあわになりながら体の洗いっこをしただけだ。これこそが俺の求めるキャッキャウフフだと言えるほどの極楽だった。そのまま俺の部屋に雪崩れ込んで皆で一つのベッドで眠った。
まだ何人か寝てるのを起こさないようにベッドから抜け出して、毎朝の日課を済ませて、朝食の席に着く。
そういえば最近は父のフォローがなくても何とか母に殺されることはなくなった。何しろここの所は父と別行動も多いからな。父がいない状況で母と訓練することも多くなった。それでも俺はまだ生きているんだからちょっとは対応出来るようになったということだろうか。
母が手加減上手になったとは思えない。今でも明らかにそれは死ぬだろうという一撃が飛んできたりする。そんな攻撃を掻い潜って生き残っているんだから、俺が避けるのがうまくなったということだろう。
皆で朝食になったけど誰も恥ずかしがっていない。俺だけなのか?確かに昨日お風呂に入っている間は段々楽しくなってきていたけど……。今日また思い出したら恥ずかしいと思うんだけど……、誰もそんな様子はなく平然としている。皆にとってはあれくらい普通なのかな?俺が意識しすぎなんだろうか?
ともかく今日こそはカーンブルクへ移動する。カールの体調も良くなったようだし、さすがに今日も移動しないと言われたら放っていく。俺がずっと付きっ切りで面倒を見なければならないことじゃないだろう。
まぁそんな心配も杞憂でカールもカーンブルクへ向かうことになった。ヘルムートの家までは案内しよう。あとは適当に案内役や馬車を用意するからロイス家とラインゲン家でやってほしい。
カーンブルクに到着するとクリスタが両親達をヘルムートの家で迎えるというので任せることにした。これから俺は仕事や視察やと大忙しだ。ラインゲン家のスケジュールに合わせていられない。そのことはクリスタやヘルムートに伝えたから後は勝手にやってくれるだろう。
カーンブルクの屋敷も……、やっぱりまた改装されている。いや、改装なんて優しいものじゃない。増改築だな……。勝手に広がっている。
今の所俺の屋敷から北側はまだそんなに発展していない。北に行ってもヘクセンナハトがあって山越えの街道があるだけだ。もちろん山を越えればキーンがあるけど、キーンに行くなら街道を通らなくても船で行ける。
いくらモンスターのあまり出ない森とは言っても絶対に安全とは言い切れない。馬車では運べる荷物の量にも限りがあるし、ヘクセンナハトの上り下りは大変だ。馬の足にも響くし、上りだけじゃなくて下りで制御出来るように荷物の重量を管理しなければならない。
それに比べたら船で川を下る方が移動も楽で、危険も少なく、運べる荷物も多い。船にも座礁や沈没の危険はあるけど、川ならそうそう死ぬようなことはないだろう。最悪船が沈んでも岸まで逃れるのは難しくない。沖へ出る船が沈没したら大変だけど川なら救助もすぐに来るだろうし、船で下る方が圧倒的に有利だ。
だから町の北はそれほど発達していない。まだポツポツと家が建ったり、少し離れた所に休憩所があったりという程度だ。今はまだ北側は発達していないから俺の屋敷を広げるなら今のうちということらしい。将来町の中心になるように発達したら、後から屋敷を広げることが難しくなる。今のうちに敷地を確保しておこうということらしい。
これ以上広げる必要はないと思うんだけど……。それは町の整備計画を担当している者達が考えることだから俺はあまりとやかく言うまい。何故口を出さないかと言うと、俺が口を出したら俺の責任で全てしなければならなくなるからだ。うちの組織は言った者が責任を持ってやれ、というスタイルだから余計なことに口を出したら大変なことになる。
下の立場の者でも思ったことや意見をバンバン言えるように、その代わり無責任に言うだけ言って人任せにしないように、きちんと筋が通っている意見や練られた計画なら意見が出せるようになっている。そして意見が通ればそれを言い出した者が責任を持ってそれを計画、実行、管理、しなければならない。
俺が何かに口を出せばその責任者が俺になってしまうからなるべく余計なことは言わないようにしている。もちろん必要であれば口も出すし、全てを俺がやってられないから人に任せることもある。特にまだ経験の浅い者や見識の浅い者には俺が考えたプランをやらせて実務経験を積ませたりしている。
それは良いけど家のこととか、工事計画についてまで全て俺が意見を出して管理していたら俺の手が足りなくなる。そういうことはなるべくスルーして任せられる仕事は任せるのが一番だ。
「ここも見るたびに変わってるわね」
「そうですね……」
ミコトの言葉に同意する。しかもこれもまだ完成形じゃないというんだからどこを目指しているのか……。あまり派手で立派にしすぎても困ると思うんだけど……。
「まぁ入りましょうか……。ここは皆さんの家でもありますからね」
「え……、それって……」
俺がわざとそう言うとルイーザが真っ赤になっていた。ここが皆の家でもあるということは……、そういうことだ。それを察した者達が順番に赤くなっていく。可愛い!連れて帰りたい!ってここが家だったわ。
「さぁ、ぼーっとしていないで入りましょう」
「あっ!ちょっ、待ってよ!」
皆で久しぶりに帰って来た我が家へと入ったのだった。




