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第二百二十三話「マルガレーテがやってきた!」


 王城から帰って来た俺は自室で寛ぐ。何かカーンブルクの自室より王都のカーザース邸の方が落ち着くな……。王都に染まったつもりはないけど滞在期間の問題だろう。


 カーンブルクのカーン邸は勝手に増改築されてたから元々俺が利用していた時と様子が変わっていた。まるで知らない新しい家に居たような感覚であまり落ち着かなかったのも無理からぬことだろう。それに比べて王都のカーザース邸は学園に通うために王都に来てからずっと住んでいた。どちらの方が長く利用していたかを考えれば当然の結果だ。


 自室で寛ぎながら色々と考える。まずヘルムートは俺より早く戻ってきていた。本当にヘタレのヘタレートだな。あの様子じゃクリスタとの進展なんて何もなかっただろう。クリスタは可愛いし性格も良いし、今は傾きかかっているとはいっても家柄も良い。寄ってくる男なんてたくさんいるだろうしあまりぼーっとしてたら誰かにとられても知らないぞ。


 それからマルガレーテだ。マルガレーテももっとはっきりした性格かと思っていたけどどうやらそんなことはないらしい。むしろ引っ込み思案で大人しいご令嬢だ。あれじゃルートヴィヒを振り向かせるのも難しいだろう。


 マルガレーテだって高位貴族のご令嬢らしく気品溢れる美しい女性だ。だけど性格が大人しすぎるし自分に自信がないのかネガティブな面もある。俺はそういう大和撫子のような子も大好きだしお嫁さんにしたいとも思うけどこの世界ではあまりモテないタイプかもしれない。


 クリスタやアレクサンドラのようなご令嬢達も確かにそれに近いものはあるんだけど、それでもやっぱりマルガレーテとは少々タイプが違う。マルガレーテのはただお淑やかというだけじゃなくて……、大人しすぎるというか自信なさげというか……。


 そういう子を守ってあげたくなっちゃう!というのはあるだろう。庇護欲をそそるようなタイプならそれはそれでモテると思う。でもルートヴィヒはそういうタイプでもないかもしれない。マルガレーテのようなタイプを好きになる人もいるだろうけどルートヴィヒの好みとは違う気がする。


 俺の中ではもうルートヴィヒとマルガレーテをくっつけることは確定だ。ルートヴィヒがマルガレーテのことを好きになって二人がくっついてくれたら全ては丸く収まる。全員幸せハッピーエンドだ。


 ただこのままマルガレーテの性格じゃルートヴィヒを振り向かせることは出来ない。最初はマルガレーテと協力してルートヴィヒをマルガレーテの虜にさせようと思っていたけどこのままじゃ無理だ。まずはマルガレーテが変わらないことには机上の空論ですらないまま終わってしまう。


 何とかしてマルガレーテを積極的にさせてルートヴィヒを攻略させなければ……。カタリーナ達も呼んで色々と相談した方が良いだろう。何しろ俺は女の子のことなんてあまりわからないからな。そういうわけで俺は五人のお嫁さん達に協力を仰いだのだった。




  ~~~~~~~




 マルガレーテは案外暇なのか約束してから三日後の今日うちに来ることになっていた。普通なら約束をしてそんなにすぐに来れるとは思えないんだけど普段王城でブラブラしているだけだから暇なのかもしれない。


 俺がまだ学園が休みというのもあるだろう。学園が始まってからだと色々と面倒も増えるからマルガレーテが気を利かせてくれたというのもあると思う。


 俺が王城を訪ねた日はまだ予定日は決まっていなかったけど次の日には手紙が届いて今日時間が取れるから今日遊ぼうということになった。屋敷で待っていると先触れが来たので玄関口に出てマルガレーテを待つ。


 俺は辺境伯令嬢でありマルガレーテは公爵令嬢なのだから俺が出迎えるのは当然のことだ。それもわざわざこちらが相手を招いているんだから身分差に関わらず出迎えるのは礼儀とすら言えるだろう。中には横柄な態度で出迎えもしない奴もいるけどあれはないと俺は個人的には思う。


 貴族社会ではそれが罷り通るのかもしれないけど俺の感覚としてはどちらが上であろうが下であろうが客人を迎えるのにその態度はないだろうと思う。個人的に思うだけだからそういう態度の奴が居たからって何か言うわけではないけどその人に対する評価が下がるのは言うまでもないことだろう。


「ようこそおいでくださいましたマルガレーテ様」


「フローラ様……、あっ……」


「ぷりんちゃーん!」


「――ッ!?」


 馬車から降りて来たマルガレーテと話をしていたら突然馬車からエレオノーレが飛び出して来た。慌てて空中でキャッチする。危ない……。もし落として怪我でもさせたら大事だ……。例え本人が勝手に余計なことをして勝手に怪我をしたとしても自分の家で王女様が怪我したなどということになったら市中引き回し打ち首獄門だって有り得る。


 そんなオーバーな、と思うかもしれないけど現実的に有り得る話だ。それだけ客人を迎えるということには責任があり招いた客人が自分の家で怪我をしたり、ましてや死んだりしたら大変なことになる。それが王様が溺愛している王女様ともなればそれがどれほどのことかわかるというものだろう。それはともかく……、だ。


「マルガレーテ様?」


「え~っと……、エレオノーレ様もどうしても言われるので……」


 どうしてもと言われたからと安易に一国の王女様を連れ出していいとでも思ってるんですかねぇ?やっぱりマルガレーテには教育が必要なようだ。


「あっ!あっ!きちんと国王陛下のお許しもいただいていますよ?プリンちゃん……、じゃなくて、フローラ様の所へ行くと言ったらそれなら良いと言ってくださいました」


 ヴィルヘルム~~っ!そこは止める所だろうが!何で俺の所なら良いんだよ!そんなことを言うならもうエレオノーレは俺がもらっちゃうぞ!


 いや、別に性的な意味じゃないけどね?俺はロリでもペドでもないし……。でも可愛いものは大好きだ。エレオノーレは少々危なっかしいけど可愛い。可愛いは正義!


「はぁ……。もう来てしまったものは仕方がありません……。それではエレオノーレ様、マルガレーテ様ようこそいらっしゃいました」


 もう半分諦めた俺は二人を屋敷に案内したのだった。




  ~~~~~~~




 最初に少しお茶に誘ったけどお茶を飲みながら話すことが目的じゃない。今日は色々としなければならないことがある。


「マルガレーテ様、まずはお風呂に入りましょう」


「…………え?」


 少しだけお茶を飲んで寛いだ俺は早速本題に入った。今日はマルガレーテ改造計画の第一弾を発動する。そのためにはまずは風呂だ。


「さぁさぁ!行きますよ!」


「ちょっ、ちょっ……」


 まだ状況が飲み込めていないマルガレーテを連れて風呂場に向かう。さぁ!マルガレーテと裸の付き合いだ!むふふっ!


 マルガレーテはルートヴィヒのことが好きだし俺も二人をくっつけようと思っている。だけどそれはそれとして俺がルートヴィヒより先にマルガレーテの素肌を見させてもらうとしましょうか。


 これは何もおかしなことじゃない。マルガレーテは公爵家のご令嬢なんだから家人やメイド達に日常的に肌くらい見られているだろう。着替えや入浴を手伝ってもらってるはずだしご令嬢は案外人に裸を見られても平気な顔をしている。日頃からそういう生活をしているからそういう者に見られても何とも思わないものだ。


「さぁ!それでは一緒にお風呂に……」


「マルガレーテ様、不肖ながら私がお風呂の使い方及び注意点をご説明いたします。必要とあれば私がお手伝いもいたします。フローラ様は席にお戻りになってエレオノーレ様とお待ちください」


 カタリーナぁぁぁぁ!それはないでしょ!折角マルガレーテの裸が見れると思っていたのに……。


「フローラ様……」


「はい!すぐ戻ります!それではマルガレーテ様、カタリーナに色々と聞いてください!」


 怖い顔になったカタリーナに睨まれて俺は慌てて風呂場を出てエレオノーレの所へと戻ったのだった。




  ~~~~~~~




 エレオノーレと遊びながら待っていると暫くしてマルガレーテが戻ってきた。ほんのり良い香りがしている。少し濡れたその姿は艶っぽい。くそぅ……。ルートヴィヒめ。こんな美人な幼馴染に好意を寄せられているっていうのに気付きもしないで……。あいつは芋だ。朴念仁だ。


「あの……、大変素晴らしいお風呂でしたがこれに一体何の意味が?それに何故採寸されたのでしょうか……」


 困惑した様子のマルガレーテがそう言っている。俺はただマルガレーテをお風呂に入らせただけじゃない。お肌は磨いてこそ綺麗になるものだ。だから色々と肌を綺麗にしたりスキンケアしたりするようにさせた。


 カタリーナが指示通りしていれば色々化粧品やスキンケアの研究開発をしてもらっているアンネリーゼが開発したものを使ってきたはずだ。お風呂もただのお湯ではなく所謂入浴剤のようなものを入れたものだし、ただ石鹸で洗えば良いというものではなく美肌効果や保湿効果のある石鹸を使うように指示している。


 それから体中の採寸もしてきたはずだ。マルガレーテの体型を把握してそれに合う下着や衣装を用意するために体中隅から隅まで測らせている。


 くそぅ……。カタリーナに追い出されさえしなければ俺もお風呂でマッサージされたりスキンケアされているマルガレーテの姿が拝めたはずなのに……。それに体中の寸法が全て知れたはずだったのに……。


「フローラ様……」


「えっ、え~っと……、マルガレーテ様、お風呂や採寸中にもお聞きしたかもしれませんが、女性のお肌というのはこうしてお手入れしてあげなければいけないのですよ。女性がより輝くためにはこうしたお手入れが必要なのです。それからマルガレーテ様の魅力をより引き出すための下着や衣装を作るために採寸させていただきました」


 カタリーナがジロリと睨んでくるから俺は何かを誤魔化すように早口でマルガレーテに説明した。何か今日のカタリーナさんは怖い……。


「そして今からは少しお化粧の練習をしましょう。あまりやりすぎるのはよくないですが程ほどのお化粧ならばよりマルガレーテ様の魅力が惹き立てられるはずです」


 現段階で普及している化粧はまだまだ絵画のレベルだ。顔というキャンパスに絵画を描いているような、現代人の俺からすればひどい状態だと思うようなものが罷り通っている。もちろんこの世界の人達だってそれを見て綺麗だとか素敵だとは思っていない。あまり良い顔じゃない人や年を取った人が誤魔化すのに顔に絵画を描いている。


 だけどお化粧だって現代風に、濃すぎないようにナチュラルメイクをすればマルガレーテのような素材からして良い女性はもっと際立つことだろう。最初は化粧と言われて若干引き攣った顔をしていたマルガレーテもカタリーナやうちのメイド達に化粧をされていくうちに驚いた顔でそれを見詰めていた。


「これが……、お化粧?」


「はい。今世間で広まっているようなお化粧は少しあれですが……、同じお化粧でもこのようにやり方を変えればマルガレーテ様の魅力をさらに引き出すことも出来るのですよ」


 チークも自然な感じに仕上げて、陰影をつけたり、色を変えたりして健康的で見た目も映えるように軽く整える。アイラインやアイシャドーを少し入れたり口紅を塗ったり……、この世界で普及している化粧のように塗りたくるんじゃなくて軽く、自然に、少しだけ強調したり弱めたりしていく。


「これが……、私?」


 マルガレーテは鏡に映る自分を見て驚いていた。でもそんなものは驚くには値しない。ノーメイクでもそこらのアイドルなんて目じゃないほどに整った顔をしていたマルガレーテがきちんとメイクすれば化けるのは当たり前だ。


「マルガレーテきれー!」


「エレオノーレ様……、ありがとうございます」


 エレオノーレもやっぱり女の子なのかな。まだ小さいというのに自分も化粧したいとか、化粧されたマルガレーテを見てはしゃいだりとか、こんなに小さいのにもう女の子をしている。


「寝る前には必ずお化粧は落としてくださいね。そのまま眠ると肌荒れの原因にもなります。お肌のお手入れは絶対に欠かしてはなりませんよ」


「はぁ……。フローラ様がいつもお美しいのはこういうことに手間暇かけてお手入れされておられるからなんですね……」


 俺がマルガレーテに色々と注意していると感心したようにそんなことを言っていた。でも待って欲しい。それは違う。


「私は基本的にお化粧もしませんしお手入れもしていませんよ?」


 男である俺が出かけるからといちいち化粧したりお風呂前後や寝る前にスキンケアしたりするわけがない。たまにお嫁さん達に悪戯で化粧されたりすることはあるけど普段化粧して出て行くなんてしたことがないぞ。


「…………一気に説得力がなくなりました」


「え?え?」


 さっきまでマルガレーテは驚いたり楽しそうにしたりしていたのに一気にテンションが下がっていた。何で?一体何があったんだ?



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[一言] ようやく追いつきました!……感想思ったこと全部書こうとすると長くなるので短めに。  >>本当にヘタレのヘタレートだな  フローラちゃんとりあえず鏡置いておくね?  現状王家がフローラの…
[一言] エレオノーレ様にもお化粧してあげよう( ˘ω˘ )!
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