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第一話「念願の女の子に生まれ変わった!」


 あぁ今日も疲れた……。


 それほど良いわけでも悪いわけでもない普通の学校を卒業して普通に就職して普通に生きていく。そのはずだったのにどこでどう間違えたのか……。


 毎朝始発の電車に乗れるように早朝に起きて終電で家に帰る。家に帰れば飯、風呂、寝る、以外にほとんど何も出来ない。名目上毎週休みがあるはずなのに月に二日でも休みがあれば良い方だ。俺は何故こんな生活をして生きているのか……。


 別に馬鹿大学を出たわけじゃない。それほど良いということはないけど普通のレベルだったはずだ。俺も社交的というわけじゃないけど特別人付き合いが出来ないとか苦手というほどでもない。学生の時からそれなりの友達に囲まれて普通に過ごしてきたはずだった。


 就活だって普通にしてそれなりに内定もいくつかもらって普通の会社に就職して……、普通に恋愛して普通に結婚して普通に死んでいく。そんな当たり前のような人生をなんとなく想像していたのに現実はまったく違った。


 山田やまだ 春花はるか、性別・男、年齢・28歳、彼女・妻子なし。大学卒業後一ヶ月でとある理由により最初に就職した会社を退社。以降はニートとフリーターを繰り返し三年前にようやく再就職するも就職先は世の中で言う所の超ブラック企業だ……。


 俺には一つ趣味があった。俺は女の子達がキャッキャウフフしているのを見るのが大好きだ。二次元、三次元を問わずとにかく女の子達が百合百合しているのが大好物なんだ。


 別に性的接触でなければならないということはない。もちろん夜のおかずにはそういったアダルトなものも利用させてもらっているけど必ずしもアダルト要素がなければならないということはない。


 とにかく漫画でもアニメでもゲームでも、俺は女の子達がキャッキャウフフしているものばかりを観て集めてプレイしている。本来はそういう趣旨じゃないゲームでも女の子達がキャッキャウフフするようにしかプレイしない。


 所謂乙女ゲーでも攻略対象の男達なんてそっちのけでただただライバルや友達の女の子の所へ足繁く通って脳内で女の子達がキャッキャウフフしている姿を想像して、誰も攻略出来ずにバッドエンドを繰り返す。それくらい徹底して俺は百合百合するのが好きだ。


 毎日始発に乗って終電で帰ってくる俺は貴重な睡眠時間や休日を使ってでも撮り貯めたアニメを観て漫画を読んでゲームをプレイする。俺が最初の会社にいられなくなったのもこの趣味が原因だった。


 これまで学校でも一度も俺は自分の趣味を他人に見せたこともなければ知られたこともなかった。俺なりに自分の趣味というか性癖というかが歪んでいることは自覚している。だからひっそりと一人で楽しんでいただけだ。


 だけど社会人になって少し浮かれていたのだろうか。俺は間違って小さな女の子達が魔法少女になってキャッキャウフフする……、は俺の脳内だけか、魔法少女になって悪と戦う女児向けアニメシリーズのハンカチを間違えて職場に持って行ってしまった。


 しかも運の悪いことにそれを落として拾った相手がちょっとむかつく嫌な感じの先輩だった。その先輩は皆の前で俺のハンカチを見せびらかして晒し者にした。


『お前そんな年にもなってこんなハンカチ使ってるのか?おーい!皆見てみろよ!山田のハンカチこれだぜ!』


 なんて言ってスマホで写真まで撮ってあちこちに見せびらかして……。


 それ以来俺は事ある毎にその話を持ち出されてキュアちゃんなんてあだ名までつけられた。あだ名の由来はそのハンカチのアニメのタイトルからだ。先輩は仕事先でまでわざわざ俺のことをキュアちゃんと呼んで取引相手にその話題を出して俺を晒し者にしていた。そんな俺がまともに相手先に取り合ってもらえるはずもなく仕事もまともに出来なくなっていた。


 暫くは辛抱していた俺だったけどその先輩の嫌がらせは徐々にエスカレートしてとうとうブチ切れた俺は先輩を殴ってしまった。会社はクビになったし生まれて初めて警察にもお世話になった俺はあっという間に笑ってしまうくらい簡単に転落人生を歩んでいった。


 確かに安易に殴った俺も悪かったのかもしれない。でもだからってあの先輩は何の罪にも問われず俺から受け取った慰謝料で悠々自適に暮らして、あれだけ人前で散々な目に遭わされた俺は多額の借金を背負わされて会社もクビになり社会から追放されなければならないようなことをしたんだろうか。


 殴ったから悪いのか?そこへ至るまでの経緯は関係なく俺だけが一方的に社会不適合者なのか?他人の趣味を馬鹿にして晒し者にする奴は社会不適合者じゃないのか?


 それともそんな歪んだ趣味を持っているから悪いのか?別に俺は誰かに趣味のことで強要したこともないし権利を主張したこともない。ただそれに類するものを必死で集めて一人で楽しんでいただけだ。


 会社をクビになってから俺はまともに就職先も見つからずいくつもバイトを掛け持ちして先輩への慰謝料を払った。当然無理をすれば体がおかしくなる。体を壊すとバイトなんて簡単にクビになってニートになる。両親にも負担をかけて養ってもらって先輩への慰謝料も肩代わりしてもらう。


 体が治っても前科者の俺は中々真っ当な仕事にはつけない。変な時期の就活で簡単に次が見つかるほど世の中甘くはなく、俺の経歴も問題だったのかもしれない。


 そりゃそうだ。就職一ヶ月ですぐに仕事を辞めたような奴はまたすぐ辞めるんじゃないかと見られても仕方ないんだろう。その後はフリーターとニートの繰り返し。傷害で逮捕されて入退院を繰り返し離職してからの期間も空いてるとあっては真っ当な仕事になんて就けない。ようやく見つけた仕事はご覧の超ブラック企業で休みどころか睡眠時間さえ確保出来ない有様だ。


 それでもいい。それでも俺は百合百合とキャッキャウフフさえあれば良いんだ……。


 今日は撮り貯めているアニメを観てからやりかけのゲームをプレイしなければ……。


 何だか……、頭が痛い……。それに胸も苦しい……?


 俺はまだしたいことがたくさんある。こんな所で……、眠ってる場合じゃ…………。


 ………………

 …………

 ……






  ~~~~~~~




 ハッと目が覚めた。俺はいつの間に眠っていたのだろうか。今何時だ?仕事に行かなくちゃ……。折角のアニメとゲームの貴重な時間がなくなってしまった。


 ……おかしい。起きたはずなのに目が見えない?いや、ぼんやりと見えているけどはっきりとした視界が確保出来ていない。それに体も思うように動かせず何かに包まれて抱きかかえられているかのような感じがする。


 ぼんやりとした視界とはっきり聞こえない耳に集中していると何やら聞こえてきた。そして俺に何か柔らかいものが押し付けられている。主に口元に……。


 気のせいだろうか。それとも俺の頭がおかしくなったのか。ぼんやりとした視界に見えるのは日本人ではない洋風?の顔立ちをした美人ともろにむき出しにされたおっぱいだった。それが俺の口元に押し付けられている。なにやら赤ん坊にお乳を飲ませようとしている時のような感じだ。


 聞こえてくる言葉はまったく知らない未知の言語。英語や独語や仏語なんてメジャーな言葉では断じてない。その辺りの言語ならば俺も大学で初歩的なものとはいえ学んだこともある。日常会話出来るほどではないにしても聞いていればいくつか知っている単語が出てもおかしくはない。それらがまったくないこの聞きなれない言語はまったく未知のものだと断言出来る。


 時々語りかけてくるかのように話す言葉に『フローラ』という言葉がある。どうやら俺のことをフローラと呼んでいるようだ。春花だからフローラってか?笑えない。確かに子供の頃は女みたいな名前だって馬鹿にされたこともあるけど春花だからフローラだなんて言われたこともない。


 よく見えない視界で周囲を見てみる。ちょっと豪華な洋風の部屋。メイドの格好をした女性。洋風の顔をした美人がおっぱいを俺に押し付けてきている。その表情はやや困ったような感じでメイドらしき人と何やら話していることから俺がおっぱいを飲まないから困っているのだろう。


 二人が心配しながらあれこれしているのでやむを得ず俺は美人さんのおっぱいにしゃぶりついた。何か生ぬるくてあまりおいしくないミルクを仕方なしに飲む。いい年をした俺がこんな赤ちゃんプレイをしなければならないなんて恥ずかしすぎるけど我慢だ。


 俺はもうなんとなくこの状況に察しがついている。俺の頭がおかしくなったか、これもまだ夢の中でもない限りは恐らく俺は異世界転生でもしたんだろう。でなければ説明がつかないことが多い。というかそれ以外に説明しようがない。


 前世の俺、山田春花の死因は何だろう。過労とかかな。最後の方の記憶では頭が痛くて胸が苦しかった覚えがある。それほど苦痛もなかったのか、単に忘れているだけか前世での死んだ時の苦痛の記憶はあまりないのは救いだろうか。


 いつの時代のどこの国とはわからないけど周囲の様子は一言で言えばイメージの中の中世以前のヨーロッパという風だ。


 もちろん建築様式がどうだとか、飾られている物がどうだとか、そんなことは俺にはわからない。漠然と古い時代のヨーロッパ風と聞いて普通の人がイメージするようなものだとしかわからない。


 俺を抱いてお乳をくれている女性。恐らく俺の母親らしき人物もどう見ても日本人の顔立ちじゃない。じゃあどこの何民族だって言われても知らない。洋風の顔だっていってもそれがスラブ人なのかゲルマン人なのかラテン人なのかもわからない。ただ何となく洋風だというだけだ。


 ただはっきりしているのは俺の母親もメイドさんも洋風の顔立ちであり、母親は滅茶苦茶美人だということだ。もし俺がこの母親の血を引いているのなら俺もさぞ美形に育つことだろう。


 結構な量のお乳を飲んだ俺はもういらないとばかりに先っぽを離して顔を背ける。俺がいらないと言うまでいつまでも飲ませるつもりなのか全然離してくれない。


 母親らしき人とメイドさんは何やら話している。そして俺を抱きかえる。お乳を飲ませるために横向きに抱かれていたのを今度は母親と胸を合わせるように縦に抱かれて背中をポンポンされた。あまりにポンポンされるためにゲップが出るとベッドに寝かされた。


 部屋の豪華さといい、メイドさんがいることといい、赤ん坊を寝かせるにしては豪華なベッドといい、どうやらここは結構裕福な家のようだ。


 その豪華なベッドに寝かされた俺は足を持ち上げられて下半身を触られる。……ちょっと待て。お乳を飲む授乳プレイだけでも十分恥ずかしかったのにまさか……。


 ぎゃーーーーっ!やっぱりか!


 俺は下半身を剥かれて下を確かめられた。その時ようやく俺は違和感に気付いた。裸に剥かれて持ち上げられた足から見える下半身には慣れ親しんだ俺の息子さんがなかった。


 ……つまり、今生の俺は……、女の子?


 ひゃっほーーーーっ!キターーー!


 女の子だ!俺は女の子に生まれ変わったんだ!母親がこれだけ綺麗だってことは俺もきっと美人に育つに違いない。


 俺は今まで女の子達がキャッキャウフフするのを眺めるのが趣味だった。何故ならば俺は男で女の子とキャッキャウフフすることは出来なかったからだ。


 だけど別に俺は眺めるのが好きで参加したくないというわけじゃない。俺だって参加出来るものなら参加したかった。俺自身が女の子を相手にキャッキャウフフしたかった。ただ単純に俺が男だったから出来なくて我慢していただけだ。


 それが今生では出来る!俺は女の子に生まれたんだからキャッキャウフフ出来るんだ!あんな社畜生活なんて終わっても何も惜しくなんてない。三年の間に両親には借金は全て返し終わっているから前世に未練の欠片もない。それどころか今生では記憶を持ったまま女の子に生まれるなんてなんてご褒美なんだろうか。


 これは前世で苦労した俺に神様が与えてくれた報いなのか。


 今生の家がどの程度の家なのかはまだわからない。言語が理解不能で母親らしき人だって本当に母親なのかはわからない。だけど一つだけ言えることは今生では俺は勝ち組人生だ。お乳をくれた人が乳母で俺の母親じゃないなんて可能性はほとんどない。何故ならば乳母は普通子供の家よりも身分の低い者がなるからだ。


 この美人の母親らしき人よりも俺の方が身分が低い家系という可能性はほぼあり得ない。そもそも寝かされたベッドが超高級なのに俺がこのメイドさんの子供でしたなんてまずないだろう。


 今生は金持ちの家に生まれて美人の母親のもとに女として産まれた。俺にとってはこれ以上ないくらいに幸運なことだ。


 前世では苦労した俺は今生でこそ人生を謳歌してキャッキャウフフしてやる!



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 先輩が悠々自適に暮らしてるのが まだ読んでないのでわからないですが報いを受けていて欲しいなぁ
[気になる点] (異世界転生でもしたんだろう)のくだりでは、前文を読んだところ、異世界の要素を判断する材料が欠けているので、何かしらいれた方が言いと思います。
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