prolog2ー悲惨な現実
prologの原因となった一つです。
家族を失ったのは、小学生の頃だった。
5年生に上がり高学年となって責任感が生まれ、家にも小さな妹や優秀な兄がいるから学校でいいところ見せなければと意気込む。
桜が舞い散るのをやめた5月半ば、友達と和気あいあいと帰り、家の鍵を差した時にはわからなかった。中がどうなっているのか。
兄は振り替え休日で大学は休みだから家にこもって論文を書くと言っていたし、妹はまだ幼稚園児でこの日はもう母が迎えに行っているはずで、母は仕事柄家にいることが多い。
だから違和感に気付くのにはそう遅くなかった。
家に入ると、静かだった。
静かすぎた。
変だと思いながらも家に上がり、母は居ないのかと静寂から思い、兄の邪魔しないように自分の部屋でランドセルを下ろしてからリビングへと向かった。
そこで衝撃を襲う。
母が…妹が……ーー血まみれになって倒れていた。
あまりのことでしばらく立ち尽くし、イヤな予感がして兄の部屋に向かった。
(お兄ちゃんっ、お兄ちゃん……!)
ドンドンと強く扉を叩き、兄を呼ぶ。
「兄ちゃん!いるかっ!?」
返事はなく、血の気がどんどん下がるのを感じながら扉を勢いよく開く。
「ーーーーーー」
もう言葉も出なかった。
そこには兄はいなかった。
血にまみれる肉の塊と化した物がそこにあるだけだった。
ぼくは家族三人、一気に失った。
父親だけは仕事でその日家に居なかったことが幸いした。
父が帰宅した頃には、僕はずっとその場に立ち尽くしていたそうだ。その時の記憶はないが、そのあと父に抱き締められていたことと、警察が押し寄せてきたことは覚えている。
その日からぼくは二人家族となった。