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堕ちた勇者の英雄伝  作者: 学聖生
異世界チュートリアル編
26/26

ござる少女は謎ばかり

毎日投稿を目指してましたが、しばらく不定期投稿になります。

 井戸にヒモが通された桶を投げ、底の水を汲みヒモを掴み引き水の入った桶を引っ張り上げる。

 水に布を濡らして絞り、リンの体を拭いていく。

 和服のござる少女のその様子を僕は横から眺める。


「体のあちこちに縛られた痕や切り傷があるけれど、これはサイトさんがやったの?でござる」

「違う。盗賊に襲われた」

「なるほど。でござる。無力ながらこの子を助けたのね。でござる」


 リンの体を丁寧に拭きながら嫌味を含んだ言い回しをしてくる。


「……そうだ。僕の力が及ばなかった。だからリンを危険な目に遭わせた。僕の落ち度が原因だ」

「素直なのね。でござる」

「それよりおまえ……君は誰だ?」

「私はただのこの家の使用人よ。でござる」

「使用人?」

「私事でこの家にご厄介になっているの。でござる」


 口調は柔らかめになったが、まだ淡々とした応えではあるな。


「名前はなんて言うんだ?」

「ノイチ。でござる」

「その語尾?のござるはなんだ」

「私の師匠の教えなの。でござる」

「師匠?この家の女か?」

「あの人は違うの。でござる。師匠は私の親、みたいなもの。でござる」


 和服少女にござる口調を教え込んだのはその師匠って奴か。奇っ怪な奴が居たもんだ。


「てことは、そのお師匠さんは忍者なのか?」

「にん、じゃ…とは、なんなの?でござる」

「そのござる口調で忍術を使う者のことだよ。主の言うことを聞く隠密行動部隊、みたいなもんかな」


 細かい所までは知らないけど、そんな感じだった気がする。 

 まぁ、詳細に語ったところで、だ。このノイチって子がどう思うか。


「なるほど。師匠が言っていたことと少々合致するの。でござる」


 リンの服を着直させると、一言。


「終わったの。でござる」


 キメ顔でそう言った。

 リンを抱えまた家の中に戻ると、布団に寝かせる。


「ただいま帰りました。でござる」

「帰ったか。どうだった」

「特に問題はありません。でござる。結界は上々、魔物も寄り付けない様です」

「ならいい。素材は?」

「ここに。でござる」

「中々だな」

「今回はいい仕事をしたと自負しています。でござる」

「ああ。褒めてやる」


 僕がリンの様子を見ている間、二人はやり取りを終える。


「さて、君はこれからどうするの?」

「この林を抜けて町へ向かう。そこに居る人に用があるんだ」

「そう」

「ここだ」


 まっさらな地図だけは価値がないと思われたからか残っていた。

 向かっている場所を示すと、彼女はあっけからんと言う。


「そこには誰にもいないよ」

「は?」

「もう用は済んだもの。引っ越したわ」

「どういうことだ?なぜそんなことを知っている」

「だってそこ、あたしの家だもの」

「ーーな」

「なんだってこんなところにーなんて思ってる?あたしだって好きでこんな所に住んでるわけじゃないんだけどね。ま、いろいろあるわけよ」

「……」

「それで、あたし何の用なの?」

「ああ。奴隷の印を解いてほしい」

「その子の?あたし、安くないわよ?」

「リンじゃない。僕のだ」

「へぇ。あなたも奴隷だったの」

「そういうことだ。何とかできないか?」

「奴隷紋なら奴隷商にでも頼めばいいのに」「それができないらしい。どうやら特別なやつらしくて」

「見せてみろ」


 上を脱ぎ、背を見せる。


「これは……なるほどね」

「わかるか?」

「この紋は確かに奴隷紋ではないわね」

「奴隷紋じゃ、ない?」

「ということは魔的術式、魔開紋。でござる」

「そういうことになるかなー」


 何を言っているのだ、この人らは。

 ただの奴隷紋ではない、みたいなことは言っていたが……どうやら、思っていた以上に厄介なものらしい。たぶん。


「しかもこれ、古代魔語(フィロ)ね」

「ふぃ…?」

「古代の魔族が使用していたと言われる言語、現代では解読できる者は一握り、存在自体が伝説的になっているの。でござる」

「待って、何言っているのかさっぱりなんだが…」


 魔族とか伝説とか、その奴隷紋にどんな関係があるんだ。わけがわからん。


「そういえばあなたは無知だったわね。どの程度なら知っているの?」

「そうだが、人から言われるとイラッとくるな…」


 ここまでの経緯を掻い摘まんで話した。

 自分でもわからないことが多い。少しでもこの世界の情報がほしい。


「まさか、転移者とは。なるほど、その無知はそこからか。異質なのも受け入れられる」

「それで、これは消せそうか?」

「端的に言って、無理ねー」

「なぜだ」

「あなたが無知だからよ。通常の奴隷紋と違って、これは知ることで消印にも力にもできるのよ」

「は?」

「ま、あなた次第ってことね。まずはこの世界、魔力のことを知りなさい。話はそれからね」

「焦らすなよ」

「言ったでしょ。あたしは高いの。ほいそれと教えてはあげないわ」


 どうやらこれ以上言っても無駄な様だ。


「知るには何したらいい?」

「ノイチ」

「はい。でござる」

「案内してあげて」

「わかりました。でござる」

「え?」

「私が話を継ぐの。でござる。着いてきて。でござる」


 僕が答えるのも待たず家を出るノイチ。


「そこのお嬢さんはあたしが見てるから、早よお行き」

「……わかった」


 何をされるのか。

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