町を出る
やっとマップ移動です。
まだまだ先は遠いです。
「はぁ、お腹空いた」
余計な道を食ったせいでお腹空いていたのを忘れていた。
どこか食べ物買って食べるか。それとも、酒屋かどこかで食べるか。
と思ったけど、周りの視線が痛いな。
僕が見られてるわけではないっぽい。僕に着いて来ている彼女に視線が集まっているみたいだ。
「まずは、服屋か」
「……へ」
きっと、服がボロいから白い目で見られるんだ。
女の子だし、おめかししてやらないとな。
「来い」
「……は、はい」
適当な服屋に寄り、似合いそうな服を見立てる。
「これに着替えて来い」
「…へ、でも」
「早くしろ」
「は、はいっ」
少し威圧し過ぎたかな。
でも、こうでも言わないと動かないしな。
そういえば、子供相手はまともに話したことなかったな……苦手かもしれない。
唯一の妹はもう、居なくなったし……。
「こ、これで……よろしいでしょうか?」
「うん。良くなった」
試着室で着替えた彼女は見映えがぐーんと良くなった。
子供らしい容姿になった。これで痛い目に見られないかな。
「よし、行くぞ」
「へ、あ、はい…っ」
服の代金を支払い、店を出る。
町の人の視線はなくなったし、今度は食べ物屋かな。
出費が痛いけど、背に腹はかえられない。
次の町に着いたら、また貯めるか。
「ほら、食べなよ」
「…へ?」
表通りの適当な酒屋で食べたい物を注文して、食べる。
肉やスープは空腹に効く。
「要らないのか?」
「……(ふるふる)」
「なら食べな。これから旅に出る。今の内に食べておかないと、動けないぞ」
「……」
一向に手を付けようとしない。
お腹空いてないのかな。
「ほら、あーん」
スープを掬い、彼女の口元へ運ぶ。
「あーん」
「……あ、ん…」
「どうだ?」
「……おいし」
「うん。食べな」
「…はい」
やっと食べだした。
昔、妹は食わず嫌いの野菜とか、僕が先に食べてから食べさせると食べたな。
今になっては、ただの思い出に過ぎないが。
「名前は?」
「……もがもごご」
「飲み込んでからでいいよ」
「……リン=ブランデ」
「リンな」
「(こくこく)」
少しは元気になってきたかな。
食べたら出発かな。
食器の使い方が綺麗だ。どこかのお嬢様か…いや、それはないか。家は貧乏だって言ってたし。親がちゃんとした人だったのか。
「食べたな。行くぞ」
「…あ、はいっ」
食べて丸くなったというか、牢の痩せ細っていたさっきとは違う気がする。
気のせいかな。そんなすぐには変わらんか。
見た目は変わったが。
と言っても、長く伸びた髪が邪魔そうだ。これでは戦いに支障がでるかもしれない。
いや、戦わせていいものか?こんな子供に。だったらなんで奴隷なんて買ったんだって話だ。
低い僕のステータスを補うためだろ。ここで戸惑ってはだめだ。強くなるんだ、僕は。
「…ぁ」
「どうした」
「…い、いえっ」
リンの目の先にあったのはアクセサリーの並ぶ露店だった。
ステータス上昇補正の掛かる代物や、単純な飾りが我ここにありと言わんばかりにキラキラと輝く。
「欲しいのか?」
「あ、いえ、そんな、こと…は……」
遠慮してるな。
年相応とは言い難いが、奴隷として生きていたんだ。無礼を働くとぶたれたりするとか思ってるのか。
並んである適当な魔力向上補正のヘアゴムと、敏捷向上補正のヘアピンを買う。
「後ろ向け」
「え、あの…」
「いいから」
「あ、はぃっ」
髪を結ぶ。少し雑だが、こんなものだろう。
「こっち向け」
「……ひぅ」
前髪をヘアピンして留める。
「よし、これでいいな」
ツインテールの少しオシャレな女の子。
少しは年相応に見えるかな。
「じゃあ、行くか」
「は……はい!」
いよいよ次の町へ出発だ。




