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堕ちた勇者の英雄伝  作者: 学聖生
異世界チュートリアル編
20/26

無気力な道しるべ

予約掲載を忘れて、遅刻しました(笑)

 起きたあとはすぐに行動した。

 ギルドで簡単なクエストを受けてはこなし、少しずつお金を貯める。

 失った分を取り戻し、どうにか生きねばならない。

 ステータスも低いままなのもどうかと思い、倒せるモンスターは片っ端から倒していく。

 僕には魔力がないからか、魔法は相変わらず使えずにいる。レベルは関係なく、他のステータスは上がっても、魔力は上がらないし魔法も覚えない。

 スキルも覚えることはなく、ただモンスターを斬りつけるだけになる。

 それでも何もしないよりはマシだから、とにかくできるクエストをこなし、何日かすると等々僕ができるクエストがなくなった。


「お金も少しは貯まってきたから、そろっと移動しようかな…」


 せっかくの異世界。あちこち旅するのも悪くない。ずっと同じ場所というのも退屈だし


「もっと強くなって、もっと上のモンスターを狩れるようにならないと」


 ただでさえ低いステータス、簡単なことしかできないというのも芸がない。

 スキルはどうやって覚えるかもわからない。

 要らないスキルは覚えているというのに…。


「ここは…?」


 旅に出発する準備をするために町で買い物をしていると、昨日までなかった見知らぬ建物ーー大きなテントが張られていた。

 サーカスでもやってるのか?

 なんとなしに足を伸ばしてみることにした。

 紫基調の三角テント、全長10メートル以上はあるだろうか。

 なのに人の気配はない。来ている人自体少ないというか、ない。

 中に何かあるのか?もう何か始まっていて、だから人の気配がないのかな。それとも、人気がないとか。


「入ってみたらわかるか」


 中は暗く、何も見えない。


「はいはいはい、いらっしゃいませ。初めてのご客人ですねぇ」


 奥から人が出て来たと思ってよく見ると、どこかで見た顔だった。


「どこかで見た顔だな…」

「おやおやおや、勇者様ではありませんか」

「やめろっ、僕は勇者なんかじゃない…」

「それは失礼しました。それでご用はなんでしょうか?」

「ここはなんだ。あんたは何してる」

「奴隷売買所でございます。ワタクシ、奴隷商を営んでまして、はい」

「だからあの場に居たのか……僕をあの女の奴隷にするために」

「そうです。ワタクシ、お金積まれると嫌とは言えない質なので」


 商人なら悪人に加担していたとしても、商売だから仕方ないのか?

 だからってお金積まれたらなんでもするというのは違うと思うが。

 僕はこの世界のことを知らないからそこは口を出せない。


「それなら、僕の右肩の奴隷の印を消してくれ」

「誠にすみません。そのことですが、ワタクシには不可能でございます」

「なぜ」

「お客様の右肩に刻まれた奴隷の印、奴隷紋は通常のモノとは違い、上位の魔術を加えた特別なモノとなっております。そう易々とは解けないのでございます」


 面倒な物を刻んでくれたものだ。

 僕は主人の居ない奴隷というレッテルが貼られ、どこかへ売り飛ばされても仕方ない状態だ。

 そうならないためにも、情報は必要だ。


「なら、どうすればいい」

「ワタクシにはどうしようも…」

「これでどうだ」

「はいはいはい、ワタクシの知る者に心当たりがあります」


 お金を見せるとすぐに情報をくれた。

 調子のいい奴だ。


「少々お待ちください」


 十数分して戻ってくる。


「これをお持ちください」

「これは?」

「ワタクシからの紹介状と、奴隷商会員カードでございます。この会員カードがあればいつでも奴隷をお安く、さらにポイントが付いてお得でございます」

「いや案内地図か何かくれよ」


 思わず突っ込んでしまった。


「それは盲点!またお待ちくださいませ」


 またか。

 盲点でもないだろ。どこの誰の所に行くとかまだ聞いてない。


「……にしても」


 薄暗いからよくわからなかったけど、檻がたくさんあるのが見える。中に奴隷と思われる者がそれぞれ入っている。

 モンスターとか人っぽいのとか、いろいろいるみたいだ。


「はいはいはい、お待たせしました。これが奴隷紋に詳しい人の居場所を示す地図です」

「ありがと……って、これ、真っ白なんだけど」

「このご時世ですから、奪われても大丈夫なように呪文によってのみ地図が現れる仕組みになっております」


 それどこの魔法使い。

 火炙りってじゃないのが異世界って感じもするが。


「呪文って、魔法使えない人でも効くものなの?」

「一般の方でも、魔力が皆無な方でも、誰でも使えます」

「そうなんだ」

「地図に会員カードを当てて貰いまして、呪文を唱えます。するとあら不思議。ただの白紙が運命を変える希望の紙に!」

「ふざけないでいいから」

「これは失礼」


 この痩せ細ったおっさんは食えないな。

 どこまで本気なのか。


「先ほどからワタクシの後ろ側がお気になさるようですね~」

「…いや、別に」

「どの奴隷も活きが良いですよ、どうですか?」

「いらない」

「そうですか~、残念です」


 見透かしたような物言いに道化のような仕草、何か含みがある。

 商人はこんな感じなのかな。


「ですがお客様はきっと、またここに来ることでしょう」

「もう来ないよ」

「はいはいはい、またのお越しを」


 やっぱり食えない。

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