夢か現実か
胡蝶の夢というのがありますが、夢が現実であればいいなと思えばいいこと多々あります。
何も感じなくなり、静かなまま水の中で眠りについた。
ーーと思った時期が僕にもありました。
気が付くと息をするのが楽になり、ゆっくり呼吸しながら目を開けると、僕は知らない場所で空を見上げていた。
手を動かすと、ザラザラとした感触。掴み、体を起こす。
地面に倒れていた。さっきまで川に沈んでいたのに、周りには水がある様子もない。それどころか、見渡せば木々が生え、道が奥にまで続いている。
服は軽く、水に浸食されていないようだ。
「ここ、どこ……?」
天国?地獄?
地獄は勘弁だ。生きていて地獄だったのに、死んでも地獄とかどんだけ理不尽なのさ。
というか、まだ死んだかもわからない。
あまりにも現実味がなく、今までの出来事が夢かのような感覚。
「でも、地面は本物……」
土は乾き、サラサラと手から溢れる。
感触はある。
「……痛い」
頬をつねり現実か夢かを確かめる。
まさしく現実、ここは現実の世界。
《グルルルル…ゥ》
何か背後から気配を感じる。
なんだか生暖かい風も首元にかかり、獣のような臭いもする。
なんだかとってもイヤな予感がした。
「え、えっと……あ、はは」
背後に何がいるのか確かめようとゆっくり首を後ろへ向けると、そこには大きな黒い毛に覆われたーー狼がいた。