噂と剣
噂は噂で終わる事って多いですよね。
初クエストをこなし、そこから採取クエストをこなして資金も貯まり、武器や防具を揃えてからはモンスター討伐の依頼も受けるようになった。
僕がアタッカーで、天使、もといアリスさんが回復や支援魔法。
アリスさんがモンスターを拘束、その間に僕が攻撃して倒す。それを繰り返して、モンスター討伐のクエストをクリアしていく。
最初は装備の使い方に戸惑い苦戦したが、毎日やれば慣れもする。
段々とアリスさんとの連携も取れ、楽に狩れるようになって楽しくもなった。
「ここら辺のモンスターはあらかた倒したかな」
「そうですね。そろっと町に戻りましょうか」
ギルドでクエスト達成報告をして報酬を受け取る。これももう慣れたものだ。
「そろっとワンランク上のモンスター討伐もいいかも知れませんね」
「ワンランク上?ってことは、強いモンスターが?」
「はい。町周辺はレベルの低いモンスターばかりですが、少し先にある洞窟には、大型のモンスターが潜んでいまして、その子分と思われるモンスターがうろついているという情報がありました。そのモンスターは初心者でも通用するとのことです」
「なら、そこに行ってみようかな…」
「わたしは構いませんよ」
「うん、じゃあそれをお願いします」
「わかりました。少々お待ちください」
大型のモンスターの討伐は今はできないかもしれないが、その子分ならいけると思う。
武器は剣、初めて使ってみたけど悪くなかった。何度も振って、使い方も覚えた。
でも新調した方がいいかな?そろっと刃が零れてきた。
武器屋にでも寄ってみようかな。
「なあ、盗まれたってよ」
「ああ?またかよ」
「ここ最近多いよな」
ギルド内にある酒場で他の冒険者が話すのが聞こえてきた。
「なんでも、その盗まれた物ってのは、一番高い物のみなんだよ」
「あ?どういうことだよ」
「宿屋で泊まってる客の身に着けていた高い物だけ盗んだり、忍び込んだ家から一番売れる美術品とかを盗むんだってさ」
「なんだそりゃ。まるで、何が高いかわかってるみてぇじゃねーか」
「だと思うぜ。目利きの盗人でしかも捕まえる証拠もない。こりゃあお手上げだな」
「「あっはっは!」」
そんな話が聞こえた。
盗みか……怖いな。
どの世界もやはりあるんだな。
僕も気をつけないと。
「クエスト受注完了しました。では、お気を付けていってらっしゃいませ」
ギルドを出て、アリスさんと話して武器屋に寄る。
「予算はあるけど、やっぱりもう少し貯めてからにしようかな…」
「でも、もしものことがありますから。新しくした方がいいかもしれませんよ」
「だよね。悩むなあ」
刃零れは危険だけど、まだ使えないわけではない。貧乏性が祟って命の危険ってことにもなりかねないけど、それでも貯めた方が後にもいいかもしれない。
「これなら打ち直した方が安いぞ」
「え、ほんとですか?」
「剣なら貸せるし、そっちの方が安くなる」
武器屋のおっちゃんがそうアドバイスくれる。
「そういうことなら、そうします!」
「おうよ。剣は三日もあれば直る。貸し出し用は安いやつだが、そこら辺の剣よりも使いやすいはずだ。好きなのを選べ」
気前のいいおっちゃんだ。
スキルに不穏な名前があったが、そんなの気のせいで、本当は運がいいのでは?
いい人ばかりで僕は泣きそうになる。
目頭が熱くなるのを呼吸をして抑える。
「サイトさん、どの剣にします?」
「んー、そうだなあ……」
簡素な物からゴツい物まで、割とそろっている。
その中でも取り分け空気が輝いているものがあった。
「じゃあ、これで」
選んだのは、柄に玉の装飾が施され、それ以外はシンプルだけどかっこいいやつにした。
「ほほお…」
おっちゃんがニヒルに笑う。
よくわからないけど、いい物っぽい。
「毎度ありー」
剣を腰に差し、僕とアリスさんは村外れの洞窟に向かった。
■ステータス■
名前サイト=サエギリ
レベル 6
打撃 25
防御 13
魔力 0
俊敏 10
打撃耐性 15
魔法耐性 0
運 0
◆特殊スキル◆
不運の悪夢