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prologー水音
はじめまして。これからよろしくお願いします。
ーー冷たい。
水面に波紋を作り、水面下では炭酸が泡立つように空気がぶくぶくとシャボン玉みたいに浮き上がってゆく。
体は沈みつつ、暗闇を纏い光は遠ざける。
重たく、静かに、暗い世界へと迷い込む。
(何だか、心地いいな……全部捨てて来たからかな)
息は苦しいが、それ以上に気分がいい。
冷たい水は僕を受け入れ、すべてを包み込んでくれる。
(このまま……何も…かも……)
現実を諦め棄てた僕にお似合いの最後。
目を閉じるとそこは、ただの無音の世界だった。