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太陽と月のレクイエム  作者: 陽月 瀬南
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天界の大巫女

扉をくぐってすぐに、少し耳鳴りを感じて目を閉じた。

徐々に目を開けると、そこはスターライト王国じゃなかった。

太陽と月が交わる天界。

「太陽の御子に月の御子よ、よく来ましたね」

声に振り向くと、そこには巫女装束のようなものを見にまとったひとがいた。

「わたくしはディライト。天界の大巫女です。あなたが太陽の御子、ヒナタ。そしてあなたが、月の御子トワイライト。ずっと見てきたわ。あなたたち、今まで見てきた中で一番チカラの強い子ね」

ヒナタ、と言われて隣を見ると、スカーレット王国の王族の印、赤い瞳に金色の髪を持った男の子が立っていた。私と同じくらいの歳のように見える。

私は魔法をかけてあるものの、「ずっと見てきた」と聞いて記憶が消えてしまうかもしれないと思い大巫女に聞いた。

「大巫女…様、天界にオーブドラゴンがいるというのは本当のことですか?それが本当なら、どうして今まで強いチカラを持った御子がここまで来なかったのですか?大巫女のつとめに任期はあるのですか?」

大巫女は少し驚いたような顔をした。そしてすこし笑うと、口を開いた。

「どちらにせよ、あなた方は記憶を失ってしまうことですし、土産に1つずつ答えてさしあげましょう。

まず1つ目。オーブドラゴンは本当にいますよ。まだわたくしのチカラで眠り続けてはいますが…。長くは持ちません。この先あと20年持つかどうか…といったところですから。

次に2つ目。そうね…。まず大巫女の資格から話しましょう。

オーブドラゴンを長く眠らせることができる女子が、大巫女の資格を得ています。わたくしは、2000年前に御子のつとめを終えましたが、そのときの大巫女のオーブドラゴンを押さえるチカラが弱くなってきていたのです。すぐにチカラの強い者が見つかるはずもなく、わたくしは急遽大巫女となりました。それから神官が必死に探していて、ここまで来たのです。

厳密には来なかった、と言うより、「大巫女の器を持つ者が見つからなかった」からです。

そして3つ目。巫女と違い、任期は決まっていません。大巫女のつとめは、オーブドラゴンを鎮め、永遠に眠らせること。それが出来るまで、大巫女のつとめは終わらないのです。死ぬまでが任期、と言っても過言ではありません。

ですが、20年後…もしくは1000年後には永久に眠らせることができるかもしれません。それができるのは、トワイライト、ヒナタ、あなた方です」

「ええっ!?」

「そんな…!?」

ヒナタも私も、悲鳴に近い驚きの声を発した。それに、ヒナタは男で大巫女になれないはず。

「大巫女として眠らせなくても良いのです。あくまでもこれは形だけです。

わたくしのチカラが続けば、あなた方がつとめを終えた頃に、大巫女の座はトワイライトのものになるでしょう。それでは、これを」

差し出してきたのは、御子の衣装だった。私のは、藍色の布に銀色の刺繍がしてあり、裾が長め。海に浮かぶ月のようなドレス。

ヒナタのは、緋色に金色の刺繍がしてあり、まさしく王族というようなデザイン。

大巫女が手にしていた杖を振ると、私とヒナタは衣装に着替え終わっていた。

ふとヒナタを見ると、すこし震えていた。なにかに怯えているように。すると突然、

「どうしてここに。名前は分かるのに…。それ以外は全く分からない…!!」

と叫び出した。衣装に仕掛けてあった記憶喪失の魔法が作動したのだろう、ヒナタは記憶を失っていた。私は、魔法のおかげで何ともなかったが、記憶を失ったフリはした。すると大巫女は、

「記憶を失ってしまったのね…。かわいそうに。大丈夫、あなた方は御子のチカラを持っているのだから。わたくしの言う通りに朝と夜につとめを果たせば大丈夫よ」

と笑った。そのときの笑みが、微笑みというより、冷たかったのを見逃さなかった。

そのとき、私は大巫女が洗脳をかけてきた、と真っ先に思ってしまった。




夕刻、黄昏時が巡ってきたのを感じ、私は目を覚ました。

綺麗な夕焼けが私の頬を染める。

私は、支度を終えて祈りの祭壇に向かった。

「きましたね、月の御子よ。それでは、やってごらんなさい。今日の日の入りは17時よ」

私は、ルミナスからもらった杖を握りしめて、大きく息を吸った。


「月輪を、我が手に収めよ

引き連れよ、鎮座する星々

与えよ、やわらかな光を…」


歌うように奏でると、やがて日が沈み、白い月が顔を見せた。

「流石ね。未来の大巫女」

大巫女が喜んでいたのをよそに、私は天空の月の神殿に戻った。

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