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一人の魔王  作者: Taku
8/11

人間,,,そして魔王の○○

気分屋ですみません(´。・д人)

 魔王は勇者の話を聞いて熟考していた。

 何故人間同士が争い合う必要がある。同じ人種なのだから協力し合えばいいものの・・・我は人間を全く知らないが、少なくとも今までの勇者は好戦的なタイプではなかったはずなのに。それほどまでに人は愚かなのか・・・なんという愚策、愚直なのだ。人はそこまで争いたいのか。

 魔王は勇者の話を聞いて人間の評価を下げた。


「11年前か、ならあやつのせいか…」


 魔王はボソッと呟いたのをリリアルは聞き逃さなかった。リリアルは困惑した表情で魔王に聞いた。


「魔王、それってどういうことなの…」

「・・・11年前のあの大地震はほぼユルダスティン、我の元部下のせいだ」


 それを聞いてリリアルはますます混乱した。

 何故そんなことをしたのか、1人の魔族がそんな大それた芸当をやれるのか、魔王の元部下?!

 そんな様々な疑問が尽きなかった。


「まず先にこちらの魔の陣営について少し教えてやろう。魔の勢力図としては我の下に大きな組織が2つある。1つは人間に対して不干渉を望む《穏健派》2つ目は対称に人間に対して武力をもって滅ぼさんとするのが《強硬派》この2つが存在していた。2つはお互いに相手の組織に牽制し合っていた。何故ならどちらかが先に事を起こしてしまっては相手の組織に主導権を握りてしまい魔の世界に戦乱を与えてしまうからだ。それはどちらの勢力も望むところではなかった。だからお互いに何も出来ず膠着状態にあったわけだ。しかし11年前に事は起こった・・・強硬派の長であるユルダスティンが穏健派の反対を押し切り、独断でそのまま大陸全てを巻き込むほどの大地震を起こしたのだ。結果ユルダスティンは全ての魔力を使いそのまま死に、それで強硬派がその勢いに乗じて人間達の世界に乗り込んで行った。穏健派もそれで直ぐに動きたかったのだろうが魔の世界の損傷が激しく強硬派を押し留めるほどの戦力はなかったのだろう。おそらくその勇者の村を滅ぼしたのは魔の者達が陥れた国だろう。そういう報告があったのを我は覚えておる。」


 リリアルはここまで聞いて唖然をしていた。

 でも1つ気になったことがある。


「あなたは、あなたはそれをただ呆然とその大地震が起きるまで、ううん、起きてからもただそうやって傍観していたっていうの!?」


 リリアルは半ばやつ当たるかのように魔王に怒鳴りつける。

 リリアルにとってその立場にいた魔王は唯一その状況をなんとか出来る存在であったとリリアルは推測する。だからリリアルは何故それを止めてくれなかったと言わんばかりに魔王にあたる。無論これは魔王は悪くは無い、悪いのは強硬派である者達である。しかしリリアルには長年の言えなかった苦しみの言葉が誰かのせいにしたいという憎しみがこぼれた結果だ。


「そう、だな・・・確かに我なら止められたかもしれん。けれども我は何もしなかった。その理由はただ興味がなかったからだ。」

「興味が、ない?」


 リリアルは聴いて耳を疑った。自分の部下達の行いに興味を示す示さないで動くのかと


「何千何万と生きていれば達観するのだよ。自分の行いが何を意味するのかを・・・」


 魔王はどこか遠くを見るような目をして勇者から目を離し、上を見上げる。


「我は生まれてから魔王という存在であった。誰からも崇められ畏れられ一種の信仰みたいなものであった。我のやっていることは絶対と信じられ期待され、生まれた頃の我は有頂天になっていたのだろうさ。皆の望みを少しでも叶えようと魔の世界を良くしようと励んだ。そのために人間達の世界をも蝕みもしたさ、だがそれも時間という流れの前では何も意味をなさなかった。我には寿命、老いというのが存在せぬ。しかしほかの魔の者達は別で寿命や老いというのは存在する。その死にゆくもの達見て我は確かに幸せには出来るのだろうと思った。ならば我の幸せとは何かと考えた。そうして考え始めてもう何千年と経つが未だに答えは見つかっておらん」


 リリアルはその魔王の吐露を聞いて冷静になった。

 私はなんで魔王に八つ当たりしたんだ、確かに魔王はその2つの勢力の衝突を止められたからもしれない、けど魔王は一切この件については関わっていないのだ。そこを私は…


「ごめんなさい、魔王はこの件に関わってはいないのに怒鳴ったりして。」

「ふん、止められなかった時点で我もあやつらと同じだがな」


 リリアルはベッドに座りながら魔王に頭を下げ謝った。それを見て魔王は可笑しいのか若干笑った。


「魔王、さっきの話だけどあなたの幸せって魔の世界を良くすることじゃないの?」

「それは王の責務から来るものだ、魔の世界を良くしたいとは思う。されど自分の幸せとは違う。それに今は強硬派の主だったユルダスティンが死んで魔の世界では穏健派がほとんど仕切っておる。そこに割り込むほど我は馬鹿では無い」


 魔王は一度息を整え、リリアルと目を合わせる。


「今は・・・貴様の話を聞いて()()してる自分がいる」

「えっ」

「何故あの時に止めていなかったのだろうと我は初めて()()というものをした・・・」


 何故だろう、何故魔王はこんなにも悲しそうな表情を浮かべているんだろう。何故私の話で悲壮感溢れる顔をするの・・・


「な、なんでこの話であなたがそんなにも悲しそうな顔をするの」

「・・・我にもわからん、が、貴様の話を聞いて原因も分かりそれを止められる立場でありながらも止めることが出来なかったということが、何故か今になってすごく悔やまれる。なぜだろうな」


 魔王はリリアルに優しく微笑みかける。

 ここまで来ればリリアルも正直になるしかない。

 あぁ、彼はすごく根が良い人物である。確かに彼は容易に人殺しもするであろう。けどそれは決して自分のためではない。彼は生物に対して忠実なのだ。ならばおかしいのは私達であろう。魔王という私達の世界では絶対悪そして勇者は善、という考え。だがそれは間違ってはいないだろうか。何故なら殺しに来た私をこんなにも魔王は優しい温かな顔を見せてくるのだから。







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