対面
「貴様が、今年の勇者で間違いないな」
我は女に聞いた。
女は話し掛けられたことに驚いたが答えてくれる。
「・・・そう、です。私が今年の勇者のリリアル・ブラッディ・クレディングです」
「ほう、自分から名乗るのか。我から聞こうとしていたから手間が省けたぞ」
勇者は1体1の緊張感でその胸部プレートで覆われている胸の中が締め付けられるような感じがし、顔色が少しずつ悪くなっていく一方だ。
おそらく普段当てられたことがない我の密度の濃い魔力に当てられて体内の魔力が変に感じておるのだろう。
なんとなくそれを感じ取り、魔王は若干魔力の放出を抑える。
勇者は少しずつ顔色がも良くなっていくが、急に楽になった事に驚きつつ魔王に話しかける。
「こちらからも念の為に聞いておきます。あなたが魔王なのですか」
「そう、だと言ったらどうするのだ・・・勇者よ」
我は絶対の自信を持って、嫌な笑いを浮かべ威嚇する。
「魔王を倒します、絶対に・・・」
「そのセリフは何回も聞いた、何回も何回も。しかし、結局我に敵う者は居なかった。それが貴様の命運になるぞ、それでも貴様は我に立ち向かおうと言うのか?」
「・・・私には勇者としての使命があります。それは魔王を倒すこと、ならばどんな事があろうと魔王に挑みます。・・・・・・そう、私は絶対に殺らないと」
勇者は最後、小さく何かを言うと腰にかけてある刀の柄に手を置く。魔王は違うことを考えていたため最後の言葉が聞こえていなかった。
「使命、か・・・」と、魔王は呟いた。
「そうか、我の忠告を聞いてまだ抗おうと言うのか・・・クックックッ、面白いな小娘」
やはり今年の勇者は違う。今までの勇者にも何人か同じ事を言ったが、その勇者はこの城から逃げていった。
我のニヤけた顔に不満を持ったのか勇者はやや不機嫌な表情を見せる。
「なにを笑って・・・」
「笑いたくもなる、自ら敵わぬと思っている相手に立ち向かうのがどれほど滑稽かと、な」
「それ、は・・・」
「分かっておるのだろ、貴様も多少の実力があるのだから自分の敵う敵わない相手ぐらい判別出来るだろう」
「それでも・・・私は・・・」
勇者は視線を逸らし体の力が少し抜ける。
分かっているのだろう、実力差を。
「まあ、よい。挑むと言うのなら向かってこい」
我は玉座から立ち上がると勇者に視線を合わせるため瞳を下に向ける。玉座に座っていると同じ身長くらいに見えていたのが、立ち上がると我が勇者よりも十センチ程高くなった。
立ち上がったのは久方ぶりだな。
勇者も覚悟を決めたのか1度深呼吸をする。そして刀に柄を握る。
「では、いきます・・・」
「こい・・・・・・ただし、すぐには死ぬなよ。それでは面白くないからな」
そう言うがすぐに死ぬ事はないだろう。きちんと手加減はするからな。
そして勇者は居合の構えで、地面に着いた脚を勢い良く蹴った。