ダンジョンの恐怖
ダンジョンというとまず思い浮かぶのはゲームでよく見る形のものだろう。必要なアイテムを持ち込み挑んでゆく。ダンジョン内で現れるモンスターを倒し、強くなりながら、武器やアイテムを収集しつつ進むものだ。
しかし、実際はそう簡単に強くなれるものではない。それに太陽が差し込むことのない奥は手元の灯りのみが唯一の頼りとなる。その灯りも万能のものではない。松明の炎は風で揺らめき、消えてしまうのではないかと言う言い寄れぬ不安を与えてくる。一方のランタンはと言うと割れてしまえばそれでおしまいである。
現実はゲームとは違うのだ。灯りの確保と戦闘とを同時のこなさなければならない。それにアイテムは耐久値など関係なしに壊れてしまう。
レイジはダンジョンを目の前にして何かを感じ取った。それは心霊スポットを前にした時の感覚に近いものだった。魔物をこの目にしたわけではない。だが、この奥に確かにいる様な感じがする。その感覚は鼻腔を微かに刺激する鉄の匂いがより鮮やかに写して行く。
平和の中で生きてきたレイジにとってダンジョンの暗闇と死の香りの効果は絶大だった。一度、死の間際に立っていることが余計に鮮明に恐怖を映し出す。レイジは簡単に恐怖に、暗闇に飲み込まれていく。立ち止まってしまう。
「レイジくん、どうしたの?早く行こうよ」
「ぐずぐずしてないで行くわよ」
その恐怖から助け出してくれたのは2人の何気ない言葉だった。今、レイジは1人ではない。クロノリティアたちがいる。1人ではないと言うことが恐怖を和らげてくれる。忘れさせてくれる。
「今行く」
ただそれだけで一歩を踏み出す勇気が出せた。恐怖はまだ目の前にある。でもみんながいるならなんとかなりそうなそんな気がした。
そうしてレイジはダンジョンへと足を踏み入れた。




