ベルの頼み
「それから僕はその日あった出来事を国王様に話した。国王様は僕らを本当によくしてくれた。とても感謝しているよ。僕がネルの召喚獣として生きている事を知っているのは国王様とレイジ君だけだ。ネルにも教えていない」
「どうして教えないんだ。ネルにとって君は最後の家族なんじゃないのかい」
「弟がこの話を聞いたらどう解釈すると思う?簡単だ。自分のせいで母を殺し兄を召喚獣にしてしまったと思うだろう。これは弟が背負うべき罪ではない。僕の罪だ。だから弟は知らなくていいんだ」
「ベルはそれでいいのか?」
「構わないよ。召喚獣になったあの日に僕は弟の影として生きる事を決めたんだから」
レイジはそれ以上、ベルの考えに口出しすべきではないと感じた。どちらかと言えばベルの意思が堅く、変える事ができないと感じたのだ。
だから、レイジは話題を変える事にした。なぜ、今まで秘密にしてきた事をレイジに打ち明けたのか迫るため。
「それで、昔話を話した理由は?なんかあるんだろ」
「……弟は今、グランヴァジアに対する復讐に生きている。レイジには弟を復讐から解放して欲しいんだ。弟には復讐以外の道を歩んで欲しい」
「まーた難しい事を」
「そんな事は分かっているさ。弟は他人と関わるのをひどく嫌ってしまっているからね。弟はまた大切な人を失ってしまわないか怖がっているんだ。でもこのままじゃダメと思う。僕は人間は一人じゃ生きていけないと思うから。だからレイジ、弟の友達になってやってくれよ」
ベルはそう言いながらレイジの肩を激しく揺さぶる。レイジはベルの激しい説得〈攻撃〉にしぶしぶといった様子で了承する。
「わ、分かったから。出来るだけやってみるよ」
「レイジ、弟を頼むよ。もちろん、僕も協力は惜しまないからね」
こうしてレイジはまた一つ面倒ごとに巻き込まれる事になったのであった。