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没落貴族の召喚獣  作者: 灰色のクリスタル
最初の命令は死刑宣告
2/42

契約

「うっ、痛ってぇ」

「召喚獣くん、目を覚ましたよクロノリティア」


後頭部に強い痛みを覚えつつ目を覚ました場所は室内だった。

どうやら気絶した後、ここに運ばれてベッドに寝かされていたようだ。


「ホント、女の子相手にのされる召喚獣とか情けなさすぎるわ」

「いやいや、勘違いでやっちゃったのにその言い草わないんじゃないかなクロノリティア」

「トドメはあんただけどね!」

「それは言わないでよ〜クロノリティアのイジワル!」


声に怒りの影が見える少女と腹いせにいじられてむくれる少女。

そんな二人の少女の会話は渦中の男を置き去りにして進む。


「おいおい、人にいきなりドロップキックをかましやがって詫びの一言もないのかよ」

「はぁ?謝って欲しいのはこっちの方よ!あんたのせいで……私の人生計画は台無しよ」

「何を言って…」

「私にはやらなきゃいけないことがあるの。召喚師になって家を復興させなきゃいけないのに。その第一歩である召喚の儀式であんたみたいな召喚獣を召喚しちゃうなんて……サイアクだわ」



悔しさをかみ殺した声で言い切ると扉を軋ませて部屋に新たな人物が現れた。


「騒がしくなったと思ってきてみたら、あなたたちは揃いも揃って私のキャリアに泥を拭うことばかりするのですね」

「「先生、すいません」」


怒りをあらわに現れた人物は丸ぶちの眼鏡に覇気のない目をした細身の男性だった。

男はこちらをその覇気のない目で睨みつけると侮蔑を込めた言葉で言い放った。


「全くを持って不愉快ですよ。私の担当する生徒からこのようなイレギュラーが発生するなんて。しかし召喚の儀式は絶対です。リリューさんこれ以上問題を作る前にさっさと契約を結びなさい。」

「先生、やはりこいつと契約は……」

「リリューさん、もうその話はしたでしょう。掟は守らなければなりません。それともこれ以上問題を増やしてさらに私の顔に泥を塗りたいというのですかぁ!この没落貴族の娘がぁ!」


その細身の見た目とは裏腹の激しい怒気にクロノリティアはそれ以上言葉を返せない。

自然と部屋に重たい空気が充満する。


「チッ、申し訳ない。私としたことが声を荒げてしまいました。では、リリューさん。早く契約を」

「はい」


言葉に隠しきれない怒気をまとわせて放つ男の言葉にさっきまでの威勢が嘘のようにちぢこまり小動物のように震えるクロノリティアだったがその口には悔しさをにじませていた。


「掟か何かしらねぇけどよ。俺はその女と契約を結ぶなんてこっちから願い下げッっ」


男の視線が向くと同時に言葉を続けられなくなった。先ほどの怒気とは比べ物にならないほどの視線に乗せられた殺意を受けたからではない。そう、まるで蛇に睨まれたかのように舌が口が体が動かなくなったのだ。いいや、まるでではなく睨まれたのだ、男の背後から伸びる目玉だけで人の頭ほどもある巨大な蛇の瞳に。


「黙れ!この諸悪の根源が!お前のせいで私がどれほどの不利益を被ることになると思っている。できることならお前をバジリスクの餌にでもしてやるところだが私にその資格がないことは誠に口惜しいよ。リリューさん契約の言葉を」


そう言わられてレイジの前に立つクロノリティアは最後のあがきのように強く歯を食い締めていた。


「汝、われが召喚し使役する召喚獣なり、この契約の印を刻み、忠誠を誓え」


詠唱が終わるとレイジの手の甲が光り出し印が刻まれた。男はそれを見届けると少し満足したように嘆息した。


契約これはしっかりとできるのですね」


と侮蔑の視線とともに言葉を発し終えると同時に男の背後にいた大蛇が虚空に消えていった。消えていくと同時にレイジの体の自由を奪っていた硬直もしだいに弱くなる。


「では、私は失礼します」


男が部屋を後にするとさっきまでの空気が嘘のように軽くなった。レイジの顔には玉のように大きな脂汗が浮かんでいた。


「うぅ…仕方ない。こうなったらエディに頼むしかないわ」

「待ってクロノリティア!エディに頼むの⁉︎あいつに頼んだりなんかしたら何を対価にされるかわかったもんじゃないわ」

「だったらどうしろっていうのよ。私が召喚師になるためにできることはこれしかないんだから!いいからアイリスはそいつを見ていて。私行ってくる」


そうアイリスに言い残すとクロノリティアは部屋から飛び出していった。


「あぁ、行っちゃったよ。どうしよう、召喚獣くん」

「って俺に尋ねられても……というか俺にはレイジっていう名前があるんだ。さっきから人のことを召喚獣とか呼びやがって」

「ごめんごめん。そうだよね。君は人間の召喚獣。名前があってもおかしくないよね。初めましてレイジくん」


そう言ってベッドの隣に腰掛けているアイリスはレイジに笑みを向けた。

さっきまでの恐れが嘘のようにアイリスの笑みに塗り替えられる。アイリスの笑みにはそれほどの力があった。


「アイリスだったか?ここがどこで何が起きているのか教えてくれないか?」

「そうだね。それじゃあクロノリティアが戻ってくるまでこの世界のこと、そして君が置かれている状態について話そうか」


そう言ってレイジの隣に腰掛けるとアイリスは語り始めた。

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