治癒師 イザベル
ー流石に俺……死んだかなー
レイジがそう思ったのは体に浮遊感があったからだ。視界はまだおぼつかず、まるで水中から水面を仰いで見ているかのようだった。全身をねっとりと包む何かはなぜかレイジに安らぎを与えていた。
レイジが心地よい感覚に浸っていると女性の声が聞こえてくる。
「あら、やっと目を覚ましたみたいね」
レイジはまだ意識が覚醒しきっていない状態のまま、ねっとりとした何かの中から吐き出される。
「おぼぉっ。な、なんだここは」
突如、床の上へと吐き出されたレイジは口の中に残ったねっとりした何かを吐き出す。吐き出されたねっとりした何かはレイジを吐き出した塊へと向かい、一つになる。
「あらら、まだ口の中に残ってたのね」
声の主は床を鳴らしながらレイジの元へと近づく。レイジは近づいた人物は赤く長い髪に真っ白な白衣を着こなした女性だった。胸元を大きくはだけさせた豊満なバストにレイジの目は釘付けにされていた。その目線に気づいた女性は妖艶に笑いながら話しかけた。
「あんなに傷だらけだったのにもう元気みたいね、うふふ」
レイジは女性の声に顔を真っ赤にしながら自分の体を確認する。レッドドラゴンにやられた傷は嘘のように跡形もなく消え去っていた。驚きを隠せずにいるレイジを見て嬉しそうに笑う。
「レイジくん、かな~り危なかったのよ。すご~く血も流れちゃってたしね。まぁ、この国一番の治癒師である私、イザベルが付いたんだから当たり前なんだけどね」
「あんたが治してくれたのか?」
「そうよ。まぁ正確には私の召喚獣のスライムちゃんがやったんだけどね」
「ありがとう。助かったよ」
ねっとりした塊もといイザベルの召喚獣のスライムはもぞもぞとそのねっとりした体を動かしていた。その様子は快復したレイジを見てご機嫌なようにも自分の成果に胸を躍らせているようにも見えた。
「それにしても、エディくんのレッドドラゴンを倒した重症の召喚獣が運ばれてくるって言われてどんなのかと思ったら人間って……さすがに驚いたわよ。しかもこんなひょろっとした」
「……ご期待に沿えず、すいませんね」
辛口の評価に拗ねてしまうレイジにイザベルは慌ててフォローする。
「あっ。別にあなたが凄くないってことじゃないのよ。召喚獣であるあなたが召喚を行い、召喚した剣で戦い勝ったことも聞いてるもの。それにそれだけじゃあないの」
「それだけじゃない?」
「治療中にあなたの召喚紋を見せてもらったわ。あなたが白の召喚紋の持ち主であることもさることながらその召喚紋の模様。似ているのよ、とても。この国の人なら誰だって知っているお伽話の英雄譚の召喚獣の召喚紋にね」




