決意と召喚
「レッドドラゴン、そろそろド派手に最後を飾ってやりな」
エディの命令を聞いたレッドドラゴンはレイジに向けてその巨大な体躯を一歩、また一歩と地響きを立てながら歩みを進めて行く。それはまるで死のカウントダウンのようにゆっくりとだが確かに刻まれていった。
死のカウントダウンがあと数歩でレイジに届くその時、打ちのめされて、うつむいてうなだれているクロノリティアの頭上を黒い影が覆う。
「クロノリティアのバッカアァァァー!!」
その声にクロノリティアが頭上を見上げるとそこにはグリフォンに乗ったアイリスが急降下でこちらに向かってきていた。アイリスはクロノリティアのすぐ近くにグリフォンを着地させると一目散にクロノリティアに詰め寄った。
「ア、アイリス。何しに来たのよ、今は」
「何しに来たのよじゃないよ。レイジくんが運命に抗おうとしているのにその召喚士のあなたは何をしてるの。家を復興させるんでしょ?なら、一緒に運命に抗ってみなよ。こんな所でただ泣いてる見ているだけのあなたに家の復興なんかできるわけない」
「アイリスに何がわかるのよ。人がドラゴンにかなうわけにじゃない」
「そうだよ、それでもレイジくんは諦めてない。あなたの野望だって同じでそんなに簡単な話じゃないでしょ。諦めるな、諦めたら何もできないよ」
アイリスに肩を掴まれての熱弁にクロノリティアは口籠もってしまう。
突然の試合への闖入者に動揺していた会場が平常を取り戻し、アイリスへ向けてヤジが飛ぶ。アイリスはそのヤジを気にもとめずに叱咤を続ける。
「レイジくんもいつまでそこで寝てるの。さっきの啖呵は嘘だったの?強いって証明して見せてよ」
「確かにそうだな。証明しないとだよな」
そう言って地面へ突っ伏していたレイジがよろめきながらも起き上がる。額から血を流しながらも壁に背を預けながら立ち上がる姿は誰から目も限界が近いことが明らかだった。
「レイジ・・・・・・なんで立ち上がるのよ」
「負けたくないから、それだけだよ」
そう言いながら目前に迫るレッドドラゴンを鋭い眼光で睨みつける。その眼光には、死にかけの人間とは思えないほどに凄まじい殺気と覚悟が刻まれていた。
レッドドラゴンは明らかに優勢な立場にもかかわらず、思わず眼光にたじろぐ。その異質な状況に観客は静まり返ってしまう。その中でいち早く正気を取り戻したのはエディだったが、嫌な胸騒ぎに襲われて勇み足気味に声を荒げる。
「何をしている!早くそいつを殺せ!」
エディの声で我に返ったレッドドラゴンはレイジを睨みつけつつその距離を詰める。レイジも負けじと睨みつけ、足を引きずりながらも進む。
「クロノリティア、レイジくんは覚悟を決めたよ。あなたはどうするの?」
「・・・・・・・わかったわよ。バカレイジ!口だけじゃないってとこ見せてみなさいよ」
「可愛い女の子二人にここまで言わせてるんだから勝ってよね、レイジくん」
「あぁ、やってやるよ。俺なりの、俺だけの戦い方で!」
そう宣言すると右手を突き出して構えるレイジにレッドドラゴンは身構える。全員の視線を集めるレイジは意を決して唱える。
「サモン!!」
それは召喚士が召喚獣を召喚するときに唱える呪文だった。それを聞いたエディと観客たちは爆笑の渦に飲み込まれる。
「ふっ、君は最後まで笑わせてくれるな。召喚獣が召喚だなん・・・・・・!?」
エディは最後まで言うことが出来なかった。それは突然、レイジの右手が光り始めたからだった。光が弱まるとレイジの右手には一振りの剣が握られていた。その剣の刀身は真紅に染め上げられ、チリチリと音を立てながら火の粉を散らしていた。それを見たエディは動揺しながらも言葉を紡いだ。
「ああぁ、まさか召喚するとは。しかも炎を帯びた剣、まさにイレギュラーの召喚獣といったところか。びっびっくりさせてくれるね。でもさぁ、残念だけどレッドドラゴンに炎は効かないんだ。惜しかったね」
その言葉を引き金にして、レイジにドラゴンの鉤爪が襲いかかる。




