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没落貴族の召喚獣  作者: 灰色のクリスタル
最初の命令は死刑宣告
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生と死の狭間の世界で

ーあぁ、かっこわりーなぁ、俺。あんな啖呵切っといてこのザマじゃ目も当てられないなぁー


意識を失ったレイジの精神は薄暗い生と死の狭間の世界でたゆたっていた。後悔と自責の思いを噛みしめるたびに、世界から徐々に切り離されていく。そんな感慨に包まれながら最期のその瞬間ときを迎えるまでここでただただ待ち続ける。そんな誰もいないはずの孤独の世界でレイジに語りかける声があった。


「あなたがあの子の召喚獣ですか」

「だ、誰だ」

「誰だと問われると少し困りますね。私たちは個ではなく集合体。クロノリティアの、リリュー家の先祖御一行と言えばわかりやすいでしょうか」


突然の声にキョロキョロと周りをしきりに見回すレイジの前に淡く光る小さな塊が現れる。小さな塊は徐々に大きさを増し、何十人という人の形を形作る。光の形は男のものもあれば女のものもあった。


「ってことは俺ってもう死んでる・・・・・・のか?」

「いいえ。今はまだ。でもこのままではいずれあなたは死んでしまうでしょうね」

「そ、そうか・・・・・・。それであいつのご先祖様が俺に何の用なわけ?」

「実は、あなたに頼みたいことがあるのです」

「頼みたいこと?」

「はい、私たちはあの子に何も残せなかった。それどころか私たちの犯した罪の呪いを背負わせてしまいました。」

「罪の呪い・・・・・・」

「はい、そうです。あなたも耳にしてはいないでしょうか?私たちの家の者の召喚獣が弱いものばかりになってしまったことを」


ふとレイジの頭にアイリスに言われた言葉が思い出された。はっとしたレイジの態度を同意ととった光る人形は話を進める。そうしている間にも光る人形は徐々に細やかな表情を読み取れるまでにその形を変化させていた。


「私たちの侵した罪とは召喚獣のリセット。その罪は私たちの強欲により重ねられました。貴族としての権力という名の蜜を得るために」


語り続ける光る人形の表情には悔恨の念が浮かび上がっていた。


「強い召喚獣を持つものが強い権力を持つ。その考えに私たちは何も疑問を覚えずに強くない召喚獣なら躊躇することなくリセットを行いました。その結果、一世代で時には何十体にも及ぶ召喚獣の屍を積み上げました。他の一族と比べても比にならないほどにリセマラの回数には差がありましたし、さらにリセットの試合を見世物にして荒稼ぎを繰り返しました。無残に殺させたり、趣味趣向に合わせた殺し方をしたりと。私たちの呪いは私たちがリセマラを行い、殺してきた召喚獣の恨みによってもたらされたものです」

「おかしくないか?その話だと呪いによってさらにリセットが激しくなるだろ?召喚獣たちがわざわざ死ぬことになる呪いをかけるのか?矛盾してないか?自分がかけた呪いで自分たちが犠牲になっているだろ?」

「確かに召喚される召喚獣は犠牲になり殺されます。しかし、彼らにとってこの世界での死は生死の死とは違うのです。この世界で死んだ召喚獣は肉体を再構成されて元の世界に再召喚されます。召喚獣たちの目的はリセマラを繰り返した私たちの一族への復讐。私たちは自ら、権力を得るために手を伸ばす行為で自滅していき、さらに犠牲となる召喚獣の遺恨の念が呪いを強固にしていく。犠牲となる召喚獣さえ厭わずに。この呪いはまさに自らの首を絞めさせる呪いでした」


肉を切らせて骨を断たせる呪いには執拗なまでの執念が、連鎖的に呪いを肥大化させて一族の最後一人まで呪い続けようとする頑なな信念が込められていた。


「そうして衰廃しきった私たちの、あの子の元にあなたがあらわれた。そしてこの生と死の狭間の世界にあなたが訪れた。召喚獣でありながら人間という特異的なあなたが。そんなあなたに私たちはあの子を、クロノリティアを助けて、この呪いから救い出して欲しいのです。それが私たちの頼みたいことです」

「悪いけどさ、今あんたらが言った通り俺はただの人間だぜ。呪いをどうこうする以前にドラゴンの餌食になる寸前。俺の方が助けて欲しいくらいなんだが」

「いいえ。あなたにはできる。あなたは特別な、この世界で人間という特異的な存在として召喚された召喚獣なのですから。」

「そうだとしても俺は死ねば元の世界に戻れるんだろう?死ぬのはごめんだが、それで戻れるっていうなら腹ぁくくるしかねぇだろ」

「そうです。ですからこの私たちの頼み事に強制力はありません。あなたが決めるのです。この世界で死んで元の世界へと戻るのか、それともあの子を助けてこの世界で生きていくのか」


答えは決まっている。いきなりドロップキックをするわ飯にパンを二つしか用意してくれない。そんな奴を助けてやる義理なんてありはしない。それだけなら・・・・・・。


「たっく、仕方ねぇ。あのエディって奴、ムカつくしあいつの思い通りってのも面白くねぇしな」


頭を掻きむしりながら渋々そう答えるレイジの姿に光の人形は小さく微笑むながら頭をさげる。すると薄暗い生と死の狭間に光が差し始める。この世界の終りを告げるように。


「もうあなたの目覚めも近いようですね。あの子をよろしくお願いします」


その言葉を最後にレイジの視界は光に覆われ、意識は薄れていった。

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