前途多難な召喚の儀式
「なんなのよこいつは!」
ーせっかく人が気持ちよく昼寝してたっつうのに誰だこのうるさい女はー
「こんなことありえない。私の召喚獣がこんなただの人間だなんてぜったあぁぁいに認めないんだから!!」
「リリューさん。確かにあなたはこの人間を召喚したのですよ。人間が召喚獣というのは聞いたことがありませんが召喚の儀式の掟は絶対です。認めないなんてことはできません。」
先ほどから怒声を上げる女の声とそれをなだめる男の声が聞こえる。
ーったく、起こされた上にわけのわからないことを喚きちらしやがってー
昼寝のために着用したアイマスクを取り、うるさい女の顔を拝もうとするとそこには予想していたものとは違う世界が広がっていた。
「確かに俺は自分の部屋で寝ていたはずなのに・・・」
目の前に広がる風景は見慣れた自室ではなく、芝生がおおい茂る大地に周りは石造りの建物が広がっていた。現実に理解が追いつかず呆然座り込んでいると後ろから声をかけられた。
「ねえ、キミキミ。私の言うことわかる?」
うるさい女の声とは違う声に振り向くとそこには目線をあわあせてかがんでいる一人の少女がいた。
純白の肌につぶらな瞳、誰が見ても美人だと口を揃えて言うであろう少女の顔の一部分に違和感を感じた。
確かに美人は美人なのだが目がどうしてもある一点に向いてしまう。認めたくはないが
「耳… とがってない?」
「あぁ、これ?やっぱり召喚されたんだね君。私みたいなエルフがいない世界からやってきたみたいだね。こんにちは、私はアイリスっていうの。召喚獣が召喚者以外と言葉が通じるなんてびっくりだよ」
「びっくりはこっちのセリフだっつうの。それにさっきから俺のこと召喚獣とか呼んでるけどどういうことなんだ?」
アイリスと名乗る少女に自分が置かれている状況を把握しようと問いかけると背後から地響きとともにうるさい女の声が聞こえた。
「だっれの友達にてぇ出してるのよ!」
声とともに放たれたドロップキックを後頭部に受け、顔を地面にのめり込ませた勢いのまま手がアイリスの胸元に向かい、その手が触れた直後、短い悲鳴とともに強烈な追撃を受けそのまま気を失ってしまうのであった。