2:事件が起こった
「お前、今日から俺の嫁な」
教室内を激震が襲った。
これは、テロだ。
御曹司、これは告白と受け取って間違いありませんか?
僕は彼女に声をかけたまま、固まった。
まずいまずいまずい。頭の中で警報が鳴る。これは、まずいーーー。
気がつくと、静寂がこの場を支配していた。
人間というのは、驚き過ぎると固まるらしい。
ーー御曹司は、時が止まった教室の中を、悠々と歩いていく。
逃げろ!!僕は思う。今ならまだ間に合う。僕のために!!
「おい」
御曹司は、少女の手を取り語りかけた。僕は、まだ信じてる。人違いであることを。
「我が一族の嫁として、俺に嫁いで来い、我が運命の女よ」
アー、ナニカイッテルヨ?
僕の耳がおかしいのかな。日常生活ではまず聞かない言葉の羅列が、頭の中で日本語として処理出来ない。
それは、彼女も同じようだった。
初対面、告白、求婚。展開、早すぎませんか。
「・・・・・・・」
彼女は、一度。彼の顔をまじまじと見たあと。
それが、他の同じモブキャラと同じように御曹司に見惚れている訳じゃないことが、僕には分かった。
彼女は御曹司をガン無視した。スルーした。
一番やってはいけないことをした。御曹司を無視。これまで誰もやってのけたことのない偉業。そして、僕に声をかけた。
「・・・・ねぇ、俊輔。この頭のおかしい人は誰?」