7. 入学試験 ♯2
短くてすみません。
(やっば、壁まで切っちゃったよ)
俺は氷属性の中級魔法の一つ、氷速斬を打っただけで的と運動場の壁まで壊してしまった。
「君、名前は?」
俺の横にいた、エレアノール理事長が言ってきた。
「ルーク・ディルフェンスです」
「ルーク君ね、君さぁ……特待生クラスに来る?」
「は!? 俺がですか」
「そう、君。筆記はー……いいや!」
「まじすか! あ、でも。今年は僕みたいなのがもう一人いますよ」
「誰だい?」
俺たちは周りが唖然していながら話を進めていった。
「おいで、氷月」
「はい」
そう言って氷月は俺の隣に並んで立った。
「雪女 氷月です」
「氷月は僕より水属性というか氷属性が得意です」
「へぇ、ルーク君より強いんだ。いいよ、君も特待生クラスにおいで」
「あ、ありがとうございます」
先ほどから氷月のようすがおかしい、どこかおどおどしている。まさか人見知りなのではと思うが、いつもの俺との会話を考えるとそうは思えない。
「じゃあ取り敢えず、クレア教官。この子たちは筆記なしで特待生入りで」
「わかりました」
その後俺たちは十分くらい歩いて職員棟の理事長室に来た。
「ま! 取り敢えずそこら辺に座って」
俺と氷月はソファに座った。その反対側に理事長が座った。
「あの、理事長」
俺は疑問に思っていたことを聞くことにした。
「ん? なに?」
「僕たちは特待生クラスなんて聞いた事がありません」
「うん。知ってる方が逆にすごいよ」
「と、言うのは?」
「特待生クラスなんて今作ったもん」
「い、今作ったんですか?」
「うん、だって君たちに魔法教えることが出来るの私ぐらいしか学校に居ないもん」
「じゃあ教官は理事長で、生徒は俺と氷月ってことですか?」
「うん、そだよ」
「そんな事勝手にしていいんですか?」
「私理事長だもん!」
と、無い胸を張るエレアノール理事長。
「そんな事より。早く口調を戻したら? バレバレだよ君。まぁ気づいてるのは私だけみたいだけど」
「そんな怖い顔しないでくださいよ。ただちょっと力を隠してるってだけじゃないですか」
「ちょっと? 君は何を言っているんだい? 私を騙すにはあと五十年は強くならないと」
そう言った途端理事長からとてつもない威圧と殺気を感じた。
「はぁ、めんどくせぇな」
俺は口調を元に戻し、魔力の抑制を解呪した。
「まさか理事長この術を見たことがあるのか?」
「無いよ。ここまで複雑で完璧な術は見たことがないよ」
知っていたら何か情報を持っているか聞きたかったんだけどな。
「そうですか」
「ま、その事は置いといて、明日から授業始めるから。明日この部屋に来て」
「寮と制服はどうすればいい?」
「ん~、寮は職員寮が空いてるから二人部屋に改造するよ、これから。あと制服も明日来た時に渡す事にしよう」
「わかりました」
「ヒヅキちゃんもそれでいいでしょ?」
「は、はい」
どうやらマジで人見知りらしいなこれは。
「よし。じゃあ職員寮に行こうか」
職員寮は理事長室から五分くらい歩いたところにあった。
「ここ……ですか?」
職員寮は二十五階建てくらいのビルだった。
「まぁ取り敢えずはここで、君たち専用の家が出来たらそこに移ってもらうから。やっぱり君たちも思うでしょ? 流石にここは狭いし、汚いよね」
(は? これで狭い? 汚い?)
ズレた感覚を持った理事長に連れられ、俺達は最上階の一番端の部屋に入った。部屋は5LDKの部屋だった。
「ここで二人か。まぁどう考えてもでかいな」
こんなに部屋はいらないのだが、まぁ相方は女の子なので部屋が多い事には損はしないだろう。
「それじゃあ、私は戻るね! また明日」
そう言って帰ろうとした理事長は俺の方へ歩いて来て、俺の耳に唇を当ててこう言った。
「相手は幼い女の子だからってハメを外しすぎちゃいけないからね?」
「外さないわ!」
その後笑いながら帰っていった理事長は置いといて、俺は後ろにいた氷月に話しかけた。
「お前、人見知りだったのな」
「え? 違いますよ。そんな訳無いじゃないですか」
「え、じゃあなんでずっと黙っていたんだよ。話す時もおどおどしてたし」
「ずっと周りの女の子を観察してたんですよ。あと理事長も」
「なんで、観察なんてするんだよ」
「そりゃあ周りには女の子がいっぱい居るんですからルークの事を狙っている女子が居るか見ていたんですよ、まぁ何だかんだで二人きりになれたので良かったですね!」
「そ、そうだな」
(おい理事長、俺よりも氷月の方がハメ外すかもしれないぞ)
☆
―――――その日の夜。
「よし、氷月」
「どうしたんですか?」
「家事とかの当番を決めよう」
「え? 全部私がやりますよ」
「え。氷月って料理とか掃除とか出来るんだ」
「そりゃあ出来ますよ。料理は日本食限定ですけどね」
「っ!! 氷月、俺の嫁になってくれ!」
「? 何言ってるんですか? もう夫婦じゃないですか。私たち」
「いや、まだ夫婦じゃないでしょ」
「まだって事はいずれ夫婦になるんですね」
「もう少し大人になってからな」
俺に許嫁が出来た。
特待生になった+氷月が許嫁になった。話でした。
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