6. 入学試験 ♯1
やっと王都についた俺たちはまず
王都に入るために門にできた列に並んでいる。王都に入るためには門の前で入門審査をして許可を得ないと王都には入れない仕組みになっている。
「そこの馬車! 中にいる人を出せ」
入門審査をしている兵士に呼び止められたので馬車から出る。
「私はルーク・ディルフェンス。 バーナード・ディルフェンスの息子です」
「そうでしたか。何か本人確認できるものはありますか?」
俺はディルフェンス家の紋様の刻まれたペンダントを見せた。
「確かにディルフェンス家の紋様ですね。ではどうぞお通りください」
そう言われた後俺は馬車の中に戻った。
(このペンダント付けてきてよかった)
門を抜けて外を見たら人に溢れかえっていた。
「すごい人だな」
(流石王都って感じですね)
その後俺たちは王都にあるそこそこ高い宿に行った。
「それではルーク様。私はこれで帰ります」
「うん。お疲れ様」
そう言って御者は帰っていった。
一度路地裏に行き、氷月を実体化させた。
「よし、それじゃあこれからどうしようか」
(明日に備えてもう寝ますか?)
「いや、まだ昼だよ?」
(そう言えばそうですね)
「じゃあ、昼飯でも食べに行こうか」
(賛成です!)
氷月はすっかり食べ物に興味を持ったらしい。
その後俺たちは露天で買い食いをし、その後宿の近くのカフェでのんびりすることにした。
「このケーキおいしいです!」
「それはよかったな」
「ルークも食べたいですか?」
「別にいらない」
そう言うと氷月はニヤリと嫌な笑みをした。これは変なことを思いついた時の顔だ。
「そんなこと言わないで食べてみてくださいよ~」
「はぁ、わかったよ。皿渡せ」
「いいえ、私があ~ん。してあげます!」
やっぱりな。どうせこんなことだろうと思っていた、今までもそうだった。あの笑みを浮かべた後は大抵くだらない事をする。だが、それに対抗すべく策を思いついた。
「わかったよ」
そう言って俺は口を開けた。
「はい。あ~ん」
俺は氷月の食べていた見たこともないフルーツのタルトを食べた。よし、ここからが反撃だ。
「うん、うまい。よしじゃあ次は俺がやろう」
「へっ!? ルークが!? 私に?」
顔を赤くした氷月は驚いていた。
「ほら早く口を開けろよ」
「え、あ……はい…」
氷月の口にケーキを入れようとして俺は手を止め自分の口にケーキを運んだ。
「え? ルーク?」
「冗談だ。俺がそんな事するわけがないだろう」
「ルークは酷いです!」
「面白くてつい」
「じゃあ最初からやってください」
「…は?」
「は? じゃなくて、早くあ~んしてください」
「わかったよ」
「嘘です。お返しです」
と言って笑う氷月につられて俺も笑ってしまう。
その後俺たちは宿に戻って明日に備えて早く寝ることにした。勿論別々の部屋で。
☆
―――――翌朝。
俺たちは魔法学園に向かっていた。
「魔法学園の試験って魔法を使えばいいんですか?」
そう。魔法学園の入学試験の内容は魔法の実技と筆記試験の二つがありまず魔法実技が第一次試験、筆記が二次試験となっている。その事を氷月に説明した。
「じゃあ魔法が使えなかったら筆記を受けられないんですか?」
「まぁそうなんだけど。よく考えてみろ、魔法学園に魔法が使えない奴が行くわけがないだろう」
「じゃあ魔法が使えない人はどうするんですか?」
「ここには魔法学園ともう一つ学校がある。騎士養成学校だ。魔法適性が低い奴は大抵騎士学校に行く」
「なるほど」
そんな事を話していると魔法学園についた。魔法学園は主に四つの建物で出来ている。初等部、中等部、高等部の各学生棟とでかい体育館のような建物がある。
門を潜った俺たちは取り敢えず初等部の学生棟に向かった。
学生棟の左側にある小さな聖堂の前に並び受付をしてから聖堂の中に入るらしい。
受付をした後に聖堂に入ると一見小さいように見えたが奥行きがあって結構広かった。すでに大勢の新入生がいた。
「ざっと見て今のところ六百人程度だな。受付が後五分だから俺達で最後の方だからこの六百人の中から三百人。半分か。結構多いな」
「この中から半分ですか。少ないですね」
「仕方がないだろう。国から援助して貰ってるとしてもこれ以上は人員が足りない筈だ。三百でも受け入れられるだけすごい事だよ」
「一学年三百×三学年×三部。……二千七百人…」
「そういう事だな」
「すごすぎますね。恐るべし魔法学園」
「ほら、理事長の挨拶だ」
盛大な拍手と一緒に紫色のローブと帽子を被ったいかにも魔法使いといった老婆……じゃなくて幼女が出てきた。
(は!? なんでこんなところに子供がいるんだよ!)
「こんにちは。新入生の皆さん。私はこの魔法学園の理事長、エレアノール・イヴです」
(あの子が理事長なのか? ロリババァじゃねぇか!)
そう思った瞬間理事長は俺を見た。
(今、俺のことを見たのか? 相手の考えていることが分かる魔法でもあるのだろうか。謎が多いな)
結局理事長のことを考えていて話は全く聞いてなかったので、氷月に聞くことにした。
「この後聖堂の反対側にある運動場にて第一次試験をするらしいです」
「わかった。ありがとう、氷月」
俺たちは他の人に流されながら運動場に来た。そこには先ほどのエレアノール理事長がいた。
「それでは試験のやり方を説明します。クレア教官、説明をお願いできますか?」
理事長の隣にいたクレア教官が説明をし始めた。
「まず、試験のやり方は三十m先の的に得意な属性の魔法を当ててください」
周りがざわつき始めた。『三十mも先なんて遠くないか?』『俺二十mまでしか飛んだことないんだけど』と、小声で呟いていると。
「静かに。いいですか、魔法を三十mも飛ばせない子はこの学園にはいりません。誰だってやればできるのです。恨むのなら、頑張って練習をしなかった過去の自分を恨みなさい」
(なるほど。いい事言うじゃねぇか、是非とも一度話してみたいものだ)
「それでは。第一次試験開始です!」
理事長が開始と言った後にクレア教官に言われ俺たちは適当に五列に並べられ、俺は真ん中の列に並んだ。
並び終わった後各列で試験が始まった。前のほうでは詠唱の声が聞こえる。
「炎の精霊よ、我が手に炎よ、集い来たれ! ファイヤーボール!」
「水の精霊よ、命の源たる水よ、我が手に集え! ウォーターガン!」
「母なる大地よ、敵を貫く礫となれ! ストーンバレット!」
「風よ、我が敵を切り刻め! エアスラッシュ!」
「光の神よ、闇を貫け! ライトアロー!」
「我が影よ、敵を貫け! シャドウスラッシュ!」
何だかんだで俺の番が来た。
(さて、どの魔法を使うかな)
俺は中級までの水魔法を覚えているのでどれにするか悩んでいた。
(じゃあ中級魔法でいいか)
「凍てつく氷の刃よ、我が敵を殲滅せよ! 氷速斬!」
俺は水属性の延長線上にある氷属性の魔法を使った……のだが、的だけでなく壁まで切ってしまった。
(やっば、壁まで切っちゃったよ)