5. 俺、七歳になったので学校に行きます。 ♯2
これから不定期になります。
両親と魔法学園に行くことを決めてからもう四日が径った。この四日間で俺は魔法と陰陽術の合わせ技を作る事に成功した、俺は、『魔導陰陽術』と名付けた。魔導陰陽術は、陰陽術の基本である呪符に好きな属性のマナを流し、威力を倍増させることが出来る、魔法と陰陽術のハイブリットである。
今俺と雪女は俺の部屋で明日の出発に向けて荷物をまとめているところだ。
「よしっ! 準備も終わったし、明日から離れちゃう街にでも行くか」
と、俺が雪女に向かって言うと、雪女は嬉しそうにこういった。
(いいですね。――大輝様と二人でデート…)
ん?最後の方はブツブツ言って何言ったか聞こえなかったけど、まぁ本人は嬉しそうにしているので気にしないことにした。
その後俺たちは街に来てぶらぶらしていると、ある露天商店の前で俺は足を止めた。
(? どうしたんですか? 大輝様)
「あぁ、ちょっと面白そうなものを売っていてな」
(面白そうなもの?)
と、言いながら雪女も見ると。
(魔導具。ですか?)
「あぁ、魔導陰陽術に合う魔導具があるかと思ったんだがな。どうやらうってないようだ」
(それは残念ですね。でも王都に行けばあるかもしれませんよ?)
「そうだな、早く王都に行きたいな」
その日は結局街を歩いただけで終わった。
☆
―――――翌朝。
家の前で両親と別れの挨拶をする。
「父さん、母さん。僕、主席になって貴族になるよ」
「ええ。頑張るのよ、ルーク」
と、言って母さんは僕の頭を撫でた。ちょっと恥ずかしいけど我慢する。
「ルーク。長期休暇の時にはちゃんと戻ってくるんだぞ。それから、これを持っていけ」
父が渡してきたのは一本のショートソードだ。
「これは?」
「俺が冒険者時代に使っていたショートソードだ」
「そうなんだ! ありがとう、大事に使うよ」
俺は鞘に入ったショートソードをベルトに刺した。
「それじゃあ、父さん、母さん。行ってきます」
「「行って来い(らっしゃい)」」
俺は両親に手を振りながら馬車の中に入った。
☆
―――――馬車の中。
俺は御者に聞こえない程度の声で雪女と話していた。
「雪女、お前はこれからどうする?」
(どうするとは?)
「お前も実体化して学園に入学するか?」
(え。私でも入学できるんですか?)
「ああ、魔法学園は魔法が上手ければだれでもはいれる。だが――」
と、前置きして俺は雪女に魔法学園の仕組みを教えた。魔法学園は魔法が上手ければ誰でも入れると言ったが、魔法学園に来る奴は大抵は凄腕ばかりだ。生まれ持った才能があればたとえ平民でも入れる。その事から生徒は権力を振るったら謹慎、または退学になる。
(じゃあ私でも入れるんですね!)
「まぁ、そうなんだがな。問題はお前の見た目だ」
(見た目、ですか?)
「どう見ても七歳には見えないだろ。十五歳あたりだ」
(じゃあ若ければいいんですね?)
「ああ。だが、どうにかできるのか?」
「そりゃあできますよ。妖を舐めてはいけませんよ)
そういった瞬間雪女の周りの温度が下がっていくのが分かった。
「なんだこれは」
そう言っていると、温度が戻ったと思い雪女を見ると、六歳か七歳のかわいい女の子がいた。
「お、お前。雪女か?」
(はい、そうです。雪女です)
「そんなことが出来るのか。まぁ、これで安心だな」
(これで大輝様と一緒に過ごせますね!)
「あとその大輝様って呼び方。今は『大輝』じゃないくて、『ルーク』だ」
(じゃあ私のことも『雪女』じゃなくて『|氷月≪ひづき≫』って呼んでくださいよ~」
「わかったよ、氷月」
(はい! ルーク様)
「様もいらない」
え~様は大事ですよ。と駄々をこねる雪……氷月を見て笑うと氷月もつられて笑っていた。
☆
―――――出発してから三日がたった。
そろそろ尻が痛いし、疲労もたまって疲れてきた。七歳に五日間の馬車の旅は厳しすぎる。氷月は俺が氷月って呼ぶたびにニヤニヤ笑っている。相当嬉しいのだろう。
「あ~。疲れたよもう」
(まだ三日しか立ってないですよ)
「体を動かしたい、遊びたい」
段々自分の中のストレスが溜まっていくのが分かる。
そんな時前から声がした。
「ルークさん。中間地点のカレンの街にもうすぐ着きますよ」
「っ! 寄ってくれ!」
「了解しました」
その会話の後氷月が話してきた。
(よかったですね。ルーク)
「ちょうどよかったよ。いろいろ見て回ろうか」
(私も行きたいです!)
「わかったよ。でも馬車から降りた後な」
☆
―――――カレンの街、入り口。
「はぁ~、やっと休める」
「私は門の前で待機しているので、終わったら戻ってきてください」
「わかった~」
そのまま俺達は家と家の間に入っていき、氷月を実体化させて出てきた。
「はぁ~、やっと遊べます」
「よし、行くか」
「そうですね!」
「おい。氷月」
「なんでしょうか」
「なんで腕を組むんだよ」
「えぇぇぇ! 私みたいな可愛い女の子を一人で歩かせるんですか!?」
「自分で言うな自分で。まぁいいけどさ」
と言って俺たちは露天商店が並ぶ商店街に向かった。
「見てくださいルーク! おいしそうな食べ物がたくさん売ってますよ!」
「ああ! どれもおいしそうだ」
「私あの鹿肉の串焼きがいいです!」
「俺も食べたい!」
数分後。俺たちは色々な食べ物を食べていた。
「どれもうまかったな」
「そうですね。次は何を食べますか?」
「まだ食べるのかよ。俺は少し休んでから行くから一人で行って来い」
「ちぇ! 釣れませんね」
そのまま氷月は商店街のほうに歩いて行った。
〈氷月視点〉
(まったく。あれぐらいで音を上げるなんてルークはまだまだですね)
そう思いながら歩いていると、裏路地を歩いていた。
(あれ? 商店街に向かって歩いていたんですが、戻りますか)
ドンッ! そう思って振りかえって歩こうとしたら、人とぶつかった。
「あ、すみません」
「あぁぁぁん、嬢ちゃんよぉ、そりゃあねぇんじゃねぇか?」
「?」
分からなかったので首を傾げたら。
「だから、金をよこせってんだよ」
「すみません、それは無理です」
「じゃあ体で支払ってもらわないとなぁ!」
そう言ってでかい男は私を壁に押し付けた。
(あぁーこんな感じの人はどこにもいるんですね。どうしましょう、今すぐ吹き飛ばしてやりたいですがルークに禁止されてますし)
と、考えていると。
「ちょっといいかなそこのデカ男」
「あぁ? 今度は誰だよ」
そこにはルークの姿があった。
〈ルーク視点〉
(はぁ、やっぱり後をつけてきて正解だったな)
ルークは氷月に気付かれないように後をつけて来ていた。
「その子は僕の連れでね。離してくれないかな」
「はっ! なんだよガキの分際で王子様気取りか?」
「はぁぁぁぁぁ」
と、溜息をついてもう一回言ってやった。
「もう一度言う。その子を離せって言ってんだよデカ男」
俺は殺気を少し放って言った。
「なっ! なんだよその目は!」
デカ男は筋肉で太くなった手で襲ってきた――が、遅すぎる。俺はその手を掴んで柔道の投げ技の基本、背負い投げをした。
「ぐはぁ!」
と、声を上げて男は気を失った。
「全く、あんな男お前ならすぐに倒せただろう」
俺は拍手をしている氷月に行言った。
「だってルークが魔法を人に使うなって言ったから使わなかったんじゃないですか」
「あぁ、思い出した」
「約束を守ったんですから!」
と言って氷月は俺に頭を向けてきた。これは、頭を撫でろってことか。そう思い氷月の頭を撫でると。
「えへへ~」
と笑っていた。ちょっと子供っぽくてかわいいと思った。
(あ、今見た目子供だったわ)
「なぁ氷月。見た目が幼くなると性格も幼なくなるのか?」
「そんなことある訳無いじゃないですか!」
と言って顔を赤くしたまま怒る氷月であった。
☆
―――――あれからさらに二日。
俺たちはやっと王都に到着した。