14. 囮作戦 #1
遅れたし、短くてすみません。
シュタインの魔法学園襲撃事件から一年が過ぎた。
魔法学園は再建………いや、前よりも豪華な外見と内装になった。
一体今回の再建でどれだけのお金がかかったのやら、考えると頭が痛くなってくる。
俺と氷月は理事長に呼ばれて理事長室に来ている。
「それで、話って何ですか」
「シュタインについての情報が集まったよ。いい情報か悪い情報どっちから聞きたい?」
「………いい情報から聞こう」
「いい情報ね、了解。……えっと、シュタインの居場所が分かったよ。王都の北にあるカタリナ街にシュタインの研究所がある」
「奴はそこに居るのか?」
「研究所の中に入ってないからわからないけど、多分気づかれてると思うよ」
「今行っても奴が居ないか」
「それじゃあ次は悪い情報ね。シュタインの作る魔物の事で……………これは飽くまで推測の話だけど、この一年で魔物の数は一つの国ではどうしようもない位の力を持っていても可笑しくないと思う」
顔を俯かせて理事長が言った。理事長のこんな雰囲気初めて見た、それほどまでに酷い状況なのだろう。
「国は今回の事をどうするつもりなんだ?」
「国民には知らせずに対処したいと思っているらしいけど、また襲撃して来たらどうしようもないよ」
「そこで俺に案がある」
「案って?」
「魔法学園で優秀な生徒を百人位使わせてもらってもいいか?」
「それは理事長としてなら無理だね。でも、聞くだけ聞いてみようか」
まず、と前置きして俺は理事長に作戦を教えた。
まぁ簡単に言うと囮作戦である。俺と氷月が魔物を釣って砦まで行く、その砦には魔法学園の生徒百人が魔法の詠唱をして、砦の近くまで来たら魔法を発動して撃破。これの繰り返しで魔物はどうにかできる。
「なるほど、確かにあなた達なら囮になるでしょうし、いい作戦ですね」
「どうだろうか、生徒を借りてもいいか?」
「………………わかりました。砦には私も行きますので生徒に何かあったら私が対処しましょう」
「ありがとう、理事長」
「では私はこれから忙しいので失礼します」
そう言って理事長は部屋を出て行った。
「大丈夫でしょうか…」
「大丈夫って何がだ?」
「セシリアちゃんの事、シュタインとの戦いの事ですよ」
確かにセシリアの事は気になっていた、あれからセシリアはどこかに消えてしまった。いや、どこに居るのかはわかる。きっとシュタインの所に居るのだろう、絶対に助け出すからな。
俺達は理事長室を後にした。
☆
―――――翌朝。
今日も理事長室に呼び出されていた。
「早速昨日と今日で下準備は完了したよ。王国にも報告して了承を得たし、今朝職員会議をして砦には生徒百人+学園の職員で百三十人は集まったよ」
「流石理事長ですね」
珍しく氷月が理事長の前で話した。
「そうだろう? なんてったって理事長だからね!」
褒められた理事長は嬉しそうにない胸を張っている。
「それだけですか?」
「それと、今日の午後に王城に来てくれと国王が言ってたよ」
「国王が? なんでだ?」
「さぁ?」
「わかった。伝言ありがとう」
俺達は理事長室を後にして、ギルドに向かった。
「おはよう、ルーク君」
「おはようございます」
受付嬢に挨拶してクエストを受けた後、いつもの樹海に向かった。
☆
今回のクエストはオーガが増殖してきたらしいので、オーガの討伐だ。
いつも通り魔物探しは式神に任せてちょっとは早いけど昼食を食べていると早速見つかったらしい、式神が戻ってきた。
式神の道案内の元、場所に向かうと、オーガの群れが出来ていた。ざっと五十体。
「なるほどね、これは増えすぎだな」
こんな群れが沢山あるとしたら多すぎる。
早速殲滅することにした。
『炎竜風斬』
オーガ達を囲むように熱風が渦巻いている。この風はただの風じゃない、斬れる竜巻が炎を纏った感じだ。
オーガ達は自分に何が起きたのかもわからないまま絶命していった。
残ったオーガは氷月が吹雪を起こして凍った。
倒した後オーガを数えたら五十七体いた。もう十分倒しただろう。
俺達はオーガの牙を取ってギルドに戻った。
ギルドでクエストを完了させて王城に向かった。
「でっか」
王城の下まで来て、上を見上げたら遠くから見た時よりも大きくて格好いい。
王城の前には門兵が居たので声をかけることにした。
「あの、すみません」
「あなたがルーク様ですね?」
「あ、はい。ルーク・ディルフェンスです」
「ルーク様の後ろにおれられるのが氷月様ですね」
「はい」
「お待ちしておりました。中へどうぞ」
言われた通り中に入ると中は学園よりも豪華だった。シャンデリアや絵画、様々な芸術品もあった。
その後執事のような人に談話室に案内され、中に入った。
談話室には既に何人かの人が居た。鎧を着た人や、ローブを着た人、それから…理事長もいた。
「理事長も呼ばれてたんですね」
「理事長ですから! 偉いですから!」
またない胸を張っているので無視することにして俺達は椅子に腰を掛けた。
☆
十分ぐらいしたらいきなり扉が開かれた。
ドアの向こうには王冠を頭に乗せた人が立っていた。あの人が国王だろう。
「皆、よく集まってくれた。ありがとう(・ ・・・・・・・・・ ・・・・・)」
おいおいまじかよ。笑いそうになっちまったよ。王様声が裏返ってんぞ。
隣に座っている氷月を見たら、肩が震えていた。笑うのを堪えているようだ。




