10. 新しい入居者
少し時間が空いちゃいました。
俺たちはセシリアを連れて森を抜けて王都へ続く街道を歩いていた。
「そういえば俺たちの方はまだ自己紹介をしてなかったな。俺はルークだ」
「私は氷月です」
「よろしくお願いします」
「そんな敬語を使わなくていいんだぞ? 子供はもっと無邪気にしていた方が可愛いぞ?」
「か、可愛い……」
と、当たり前なことを言ったのだがセシリアは顔を赤くして何かを言っていると、氷月が俺をジト目で見てきた。
「どうしたんだよ氷月」
「いいえ。なんでも。ただ夫に浮気されそうだなと思っただけです」
と、少し怒っているように言った。
「あ、あの」
「ん? どうした」
「お兄ちゃんとお姉ちゃんって呼んでもいいですか?」
「え? お兄ちゃ「いいですよ!」」
俺が聞き返そうとしたのと同時に氷月が返事をした。
「お、おい氷月」
「別に呼び方なんてどうでもいいですよね?」
やけに嬉しそうに言ってくる氷月。
「まぁ、いいけど」
「ありがとう! ルークお兄ちゃん、ヒヅキお姉ちゃん」
何だかんだ話していると王都に着いた。
「ここが王都かぁ!」
セシリアは楽しそうに周りを見ている。
「王都に来るのは初めてなのか?」
「うん!」
俺達はセシリアと王都の街並みを見ながら学園に戻った。
「失礼します。理事長」
ノックをし、理事長室の中に入った。
「ん。おかえり、そろそろ戻ってくる頃だと思っていたよ」
と、言った後に理事長は俺と氷月が手をつないでいるセシリアを見た。
「ルーク。お持ち帰りは理事長として許しませんよ?」
「違うわ! 俺にそんな性癖はないから!」
「そうです! ルークは私に一途なんですから!」
「変なことを言うな氷月」
「まぁルークがロリコンな事は置いといて、その子はどうしたんですか?」
はぁ、と溜息を吐いた後俺はセシリアを助けた時の話をした。
「なるほど。そうなってしまっては確かに放っておけないですね。ですが学園に置くというのも難しいですね、いっそあなた達の娘にするというのは?」
「俺たちの歳で娘が居たらおかしいだろ」
「別に何おかしくないですよ? 貴族は十歳で結婚する時もありますので別に娘が居ても大丈夫だと思いますが」
「私はいいと思いますよ?」
「だが九歳なんだから一年俺達で見て来年になったらこの学園に入学ってのでもいいんじゃないのか?」
「その一年をどこで過ごすかですよ問題は」
「何を言ってるんだ理事長。俺達にはでかい寮があるじゃないか」
「あの部屋で過ごせますか?」
「余るくらいだよ」
「わかりました。ではあなたたち専用の寮の建設を進めますか」
その後今日の課題の報告をして、俺たちは寮に戻った。
「ここが俺たちの寮だよセシリア」
「広いです!」
「あんまり五月蝿くすると周りの人達に迷惑だからな」
「はいです」
と、言ってリビングに走って行くセシリアを見て。
「可愛いですね、ルーク」
「そうだな」
「あんな子が欲しいですね」
「そうだな」
「もう私たちの子供にしちゃいましょう」
「そう……おい、誘導させんな」
「チッ」
「聞こえるように舌打ちすんなよ」
俺は氷月の額にデコピンをしながら言った。
「痛いですよルーク」
「お前が俺に無理やり了承を得ようとしたからだろ」
氷月と笑いながらリビングに行くとセシリアはソファの上で寝ていた。
「寝ちゃいましたねセシリアちゃん」
「あんな事があったんだ、今日はもう寝かせてやれ」
「じゃあ私のベットに寝かせてきます」
「それはいいけど、一緒に寝るのか?」
「ルークとですけどね」
「ったく、今日だけだぞ」
「やりました!」
セシリアをベットに寝かせた後、晩御飯を食べ俺は風呂に入っていた。
「この世界に湯船に入る風習があって本当に良かったよ」
俺はよく友達と話していて異世界には湯船に入る風習がないかもしれないと話していて不安だったが、この世界には湯船があって本当によかった。
そう思っていると脱衣場から声がした。
「ルークお兄ちゃん。セシリアもお風呂に入っていいですか?」
「!? セ、セシリア!? どうした急に」
「セシリアも一緒にお風呂入りたいです!」
(まてよ、まてよ。それは不味いだろ。だうする?)
そこで俺は一つの考えが浮かんだ?
「セシリア、氷月と入ればいいんじゃないのか?」
「ルークお兄ちゃんと入りたいです」
(マジかよ、どうするか)
「ルークお兄ちゃんはセシリアとお風呂に入るの嫌?」
と、泣きそうな声で言ってくるセシリアに俺は『わかった』としか言えなかった。
「やったです!」
そう言いながら裸のセシリアが入ってきた
(なるべく見ないようにしよう)
「どうしたんですか? ルークお兄ちゃん」
「ううん、何でもない」
湯船の中で遊ぶセシリアが時々俺の視界に入るたびに俺は反対側を向いた。
時々見えるセシリアの体は普通の女の子で、中身が高校生の俺からすると凄く可愛い。
「ルークお兄ちゃん、洗いっこしよ!」
(やはりきたか、来ると思った)
「いいよ」
何だかんだでセシリアと風呂に入った俺はそのまま氷月の部屋に行った。
「氷月、入るぞ」
俺は氷月の部屋に入った。
「どうしたんですか?」
「お前の仕業だろ?」
「何がですか?」
「セシリアの事だ」
「セシリアちゃんがどうしたんですか?」
「いつまでとぼけるつもりだ」
「何のことですか」
俺は風呂でのことを氷月に説明した。
「な!? セシリアちゃんとお風呂に入ったんですか!?」
「その反応はお前は関わってないんだな」
「そんなことする訳無いじゃないですか」
「だよな、だとしたら何が理由なんだろうな」
「ただ単にルークの事が好きなだけじゃないですか?」
「そうだといいんだけどな、スパイかもしれないぞ」
「もしそうだとしたらどうします?」
真剣な表情になった氷月が言った。
「取り敢えず、警戒して、いずれ証拠を探す」
「わかりました」
「いちようこの家には結界を張って、お前には式神をつける、セシリアには式神に監視させる」
「わかりました。私はスパイじゃないことを願っています」
「あぁ、俺もだよ」
その後俺は自分の部屋に入った。
「さて、やるか」
『急急如律令』
俺は式神を五体出した。
「お前たち二体は氷月の護衛をしろ、氷月に何かあったら俺に報告しろ」
「お前たち二体はセシリアの警戒に当たれ、同じく何かあったら報告を」
「残りのお前は家の警護に当たれ。解散」
(取り敢えずこれで家と氷月は心配ないだろう。あとは家の結界か)
俺は玄関に向かった。
(何も起きなければいいんだけどな)




