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どうやら彼には職業の選択権はないらしい。

オクペイションをジョブに変更しました。

 俺がクラスメイトを起こしに行った時は、もう六割くらいの人数が起きていた。おかげで、残りの寝ているクラスメイトを、素早く起こすことができた。


 起きたクラスメイトたちは、真っ先にここがどこなのか質問をしてきたが、向こうの建物、『役所』に向かう途中で説明することにした。


 そして、今はその『役所』に向かっているところだ。と言っても、そこまで遠くに歩くわけでもないので、すぐ着くのだが。


「―――と、言うわけなのだ。なにか質問がある者はいるか?」


 どうやら、説明が終わったみたいだ。クラスメ……面倒だから同級生でいいか。あまりの非現実的な推測に俺の同級生全員が状況を飲み込めていないみたいだ。


 しばらくすると、一人の男子、ちなみにイケメンが成雅に質問する。……イケメンはみんな死ねば良いのに。


 ほら、俺よりイケメンな奴がみんな死んだら、必然的に俺イケメンじゃん? ボッチでもイケメンには憧れるものだ。イケメンと関わりを持ったり、イケメンに淡い幻想を抱いたりするわけではないが何故か憧れてしまう。


「つまり、ここが成雅くんの作ったゲームに、酷似しているんだと言いたいんだね」


 彼は何の躊躇もなく成雅に質問をする。なかなか神経が図太いみたいだ。

 最近のリア充はここまで馴れ馴れしくなっているのか? 


 ……世も末だな。こんな世の中、末長く爆発してればいいのに。


「う、うむ。だがあくまで可能性があるというだけだ。それに、これから先、ずっと我の設定どおりのシナリオで進んでくれるとは思えない」

「それはどうしてだい?」

「恥ずかしながら、ゲームの作成は、まだチュートリアルまでしか終わっていないのだ。一応、その後の設定も考えてあるのだが、そこまでこの世界に、反映しているのかどうかは分からぬ、すまない……」


 そういえば、俺たちが死ぬ前にそんなこと言ってたな。


 チュートリアル以降の展開が予想できないとなると危険度が倍増どころか、うなぎもりになる。だから、できれば成雅の設定どおりに、ことが進んでくれれば、万々歳なのだが……やっぱり、そんな都合よく行くわけがないな。ご都合主義は現実にあるわけがない。あんなものはただの物語中の妄想だ。


 そんなことを考えているうちに役所につく。遠目に見たら、小さくて、小屋だと思っていたのだが、近くで見ると、俺の家よりは大きかった。全然小屋じゃないじゃないか。


 成雅によると、この小屋に入ってすぐ右手に、ATMのような機械があって、それで職業を選択できるらしい。いつでも転職できるから、気軽に選んでもいいとのことだ。

 そこで、職業についての説明が始まる。



 ◇◆◇



 職業(ジョブ)は数十もの種類がある。


 装備を作ったり、修復したりする鍛冶屋や、遠距離攻撃を持つ弓兵、主に片手剣と片手盾を扱う冒険者、カタナとヨロイを装備する武士など、いろいろなものがあるらしい。


 そして、例外はあるが、それぞれの職業には二次職や三次職というものが存在し、レベルが上がると選択できるようになるらしい。ただし、二次職に転職すると、一次職のレベルは引き継がないので注意しないといけない。


 職業選択マシーン(命名、成雅)の前を一列に並び、一人ずつアバター名の設定をして、なりたい職業を選んでいく。職業を選ぶと、体が光に包まれ、三秒ほどで、その職業にあった服装になる。どうやら、初期装備みたいだ。

 職業を選んだ人数が増えるにつれ、段々職業が偏っていく。男子なら、武士か冒険者。女子はほぼ全員がブリーストだ。……回復は十数人も要らないだろ。


 ようやく、最後尾にいた俺の番が来て、職業マシーンの画面に手を触れる。すると、いままでタップ音しか出さなかった職業マシーンから、別の音が出る。


《認証中―――認証を完了しました。

 ようこそ〈ユウギ〉様。

 ユニーク職業(ジョブ)を設定しています……

 設定完了。

 それでは転職します》


「は……?」

 

 え? 指紋認証? そんなのさっきまであったか?

 それに、アバター名と、職業、勝手に決められてるし。まさか、俺に選択権はない、とでも言いたいのだろうか。


 ……もしそうなら俺はこのポンコツをぶっ壊してやるからな。


 やっぱ止めとこう。器物損害で捕まりたくない。この歳で警察のお世話になるなんて絶対にイヤだ。

 まあ小二の頃に俺を見捨てた奴らが警察の世話になるのは大歓迎だが。


 それにユニークジョブというものを俺だけにくれたのだ。恩をあだで返すのはダメだって昔おばあちゃんが言ってた。


 ん? ユニークジョブ? 


 俺は『ユニーク』という言葉に少し違和感を覚える。

 これは普通のゲームでいう、ユニークスキルのことだろうか?


 ……もしかしたら、俺は凄いことになっているのかもしれない。


 だってユニークだぜ? この世界でたった一つだけの職業だぜ? なにか特別なものに違いない。俺はチートを所望する。


《全員の職業の設定を完了しました。

 初心者の方には受け付けにて『ステータスカード』を配布しますのでお受け取りください》


 なにやら、メニューが確認できる、便利なアイテムが配られるらしい。上級者になると、ステータスの確認や、アイテムの取り出しはイメージでできるらしいが、初心者にはイメージが難しいので、無料で提供するサービスをしているみたいだ。これで慣れるまで練習しろとのこと。


 まあ、もらえるものなら遠慮なくもらっておこう、と思い受け付けに向かう。


「あの〜、『ステータスカード』をひとつ頂けないでしょうか」


 受け付けの窓口の前に立ち、深呼吸してから小さな声で言う。役員は奥の部屋にいるようで、俺の小さな声に気づかずシーンとしている。

 は、恥ずかしい。


「あ、あの」


 今度は勇気を振り絞って、すこし大きめの声を出す。


「は〜い」


 今度はちゃんと聞こえたのか、奥の部屋から返事が聞こえる。しばらくして奥の部屋から出てきたのは、なんと美人さんだった。しかも、今まで見たことのないくらいの。


 そんな状況で、コミュ障な俺が冷静でいられるわけもなく、テンパってしまう。

 ……まあいいか。どーせこれからは関わることないんだし。恥を捨てるか。


「ス、『ステータスカード』を一つ頂けないでしょうかっ!」


 緊張からか、つい早口になってしまう。顔には出ないが、俺の心の中では日本中大地震が起こっているのと匹敵するくらい、動揺している。なんか、よく分からん例えだな。


「ふふ、急がなくてもちゃんとありますよ。はい、どうぞ」


 無表情なのが幸いしたのか、俺が緊張しているとは思われなかったようだ。そうでなくてもこの人には、俺が焦っているように見えたはずだ。


 カードのようなものを受け取る。縁が黒く中は赤色、そしてカードの裏にドラゴンが描いてある。なんかカッコいいと感じてしまう俺は中二病なのだろうか。


 とりあえず自分のステータスを確認することにした。

 誰にも見られないように、外の草むらまで行き、カードを握って強く念じてみる。

 するとカードの表に文字がゆっくりと出てきた。

 生唾を飲みながら、おそるおそるステータスを除く。




 ステータス

 名前:ユウギ Lv.1

 称号:『異世界からの渡り人』

 種族:人間

 職業:ニート 《変更不可能》


 魔力:40/40


 筋力:1

 魔法:4

 敏捷:1

 防御:1

 幸運:1

 技能:『全てを託して』

 装備:服装 《学生服》

    武器 《なし》

    防具 《なし》



 ……。


「ニートが転生するのはテンプレだが転生してニートになるのは初耳だぞ。…」


 あまりにもひどいステータスに、驚愕を通り越し、逆に冷静になってしまった。

 弱すぎるだろ俺のステータス。頼むから変更不可能なんて言わないでくれますかね、ホント怖いんで。


 頭の中でツッコミをする。これだけ脳を使ったのは何年ぶりだろうか。


 こうなったら、このスキルにかけるしかないな。




 スキル説明

『全てを託して』


 このスキルを使うと、自分の体力を全て使って複数人のプレイヤーの体力を全回復させることができます。

 ⚠︎なお、このスキルを使用すると、使用者は体力がなくなり、死にます。




「ステータスも使えなければスキルも使えねえ……」


 あまりにことに目眩がする。きっとこれは夢だ。そうに違いない。



 ◇◆◇



 その後、何事かと様子を見に来た、クラスメイト、アバター名〈ユイ〉さんによると、俺は、真っ白に燃え尽きていたらしい。

こんにちはの方はこんにちは。こんばんはの方はこんばんは。十宮ユウギです。初めましての方は一話から読んでくださいお願いします。


今回、職業が決まりました。


 


 もはや、職業ですらないな。と思った俺は悪くない。

 


 それでは次回も閲覧お願いします。


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