勇者の食事
僕は駅に向けて歩きだした
今は帰ってとにかく頭中を整理したい
本当に今日は色々あって、肉体、精神とのも疲れた
家路の途中頭の中では絶えず、アベルが何かを見て絶叫している。
(あのすごい速さの四角い鉄の箱はなんだー!! 動力は魔法か!?)
(何で地面が硬いんだー!! 土や石はないのかー)
(この地面から生えている石の棒は何だー)
(この建物は、大聖堂をはるかに越える高さと、大きさだ!)
(この乗り物の速さはなんだー!! 景色が流れているー!! うおー!!)
(異世界すげー!!!)
(おー!! 何だー!! すげー! 何だー!!)
うるさいがとりあえず今は無視。
なんだかんだで家についた
鍵を開け2階の自分の部屋のベッドに倒れこんだ
アベルがまだ興奮してなんだかんだいっているが、今は疲れた・・・・
(文化が、文化が・・・・文化が違いすぎる)
(うー うー ぶ、 ぶ、 文化が爆発だー!!!!)
「うるさい!!!」
(すまん 興奮しすぎた お前の世界すごすぎ)
「わかったから少し休ませて」
(・・・・了解)
僕は目をつぶると、すぐ眠りについた
「....はんよ・・・・ヒロ・・・・」
「ごはんよ・・・・ヒロ」
僕を呼ぶ声がきこえる。それは聞きなれた声ですごく安心する声
「ご飯よヒロ 降りてきなさい」
僕はこの聞きなれた声にほとんど反射的に声をだす
「うーい」
もう窓の外は暗く時刻は午後9時だ。腹もへっている
僕の家の夕飯は、母さんが働いていることもあり、普通の家より夕食の時間は遅い。ちなみに家族は僕と母さんと、単身赴任中の父の三人家族である
声が聞こえる
(・・・ん 俺も寝ていたのか)
(何か肉が焼けるいい匂いがするな)
(さては飯の時間か)
あ~やっぱり頭にいるのね。寝て起きれば、全部夢とかではないのね。しかもご飯の匂いで起きるのね。
(異文化交流~ 異文化交流~ どんな飯かな~♪)
しかもノリノリなのね
「冷めるわよ、早く降りてきなさーい」
「聞こえてるよ~」
僕は階段を降り、ダイニングに向かい、定位置の椅子にすわった
「今日はヒロの好きなハンバーグよ」
「わかったよ」
母さんがジト目で見ている。そして悲しい表情をする
僕はボソッと「いただきます」と言う
母さんが悲しむわけは知っている、昔の僕つまり幼稚園生、小学校低学年の僕はハンバーグが大好きで、母さんがハンバーグを作ると、非常に喜んだそうだ。ただもう僕は高校生である「わーい、わーい、今日は大好きなハンバーグだー」なんて言うこともないし、おいしーを連発することもない。ただ食べなれた味のハンバーグをただ、ただ食べるたけである
が!
(う、う、う、う、う、ま、い、ぞ~~~~~~~~~~~)
な、な、な なんだー! 頭のなかで昔の料理アニメのようなリアクションをとっている人がいる
(こ、こ、これは何と言う食べ物だ?)
ハンバーグだけど
(ハンバーグというのか。なんと力強い響きだ。グと最後が引き締まるのもいい)
そうなの?
(この香ばしい匂いは、ただの肉ではないな)
ただの牛と豚の合い挽き肉だと思うけど
(な、な、なんと、2種類の肉をブレンドしているのか・・・・す、すごい発想だ。普通は思いつかん。 しかも肉のほかに自然の風味がする。 なぜだ? なぜだ?)
それはね
(言うなー! 当ててみせる。当てて見せるぞ。勇者の名にかけて!)
?! そのセリフって!
(野菜だな、野菜であろう、隠れていても俺にはわかる! こま切れにして肉忍ばせたな! 小癪なまねを危うく騙される所だったわ。)
(しかも 味付けのソース・・・・・
(付け合せの・・・・・
(何と言う繊細な・・・・
うるさいから。
(さてはお前の母上は{食の錬金術師}だな。そうだろ、そうなんだろ、)
わかったから
そんな脳内やり取りが繰り広げられながら、僕の今夜の夕食は進む
「ご馳走様」
僕は立ち上がり、また自分の部屋に向かおうとする
母がまた僕を悲しい目でみつめている。だからもう言わないって、「とってもおいしかったよ。母さん、また作ってね」とか言わないから。そんな目で見ないでよ。
僕は階段を上りかけた。
(おい。それだけか?こんなにおいしい料理を食べてそれだけか? もっとあるだろう おいしかったよとか、うまいとか、ありがとうとか 元気が出たよとか)
だからそういうのはもうないから、もうそんな年でないから・・・・・
でも何だろう今日は何か引っかかる。アベルが言った言葉だ。ありがとう? うまい? 違うな。
あ!
・・・・・元気が出たよ・・・・・・・だ。
それは昔ぼくが幼稚園の頃
「なんだーそれ」
「へんなの」
「ただ青いだけじゃん」
僕は同じりんご組みのお友達から、工作の時間につくった船(船のつもりの牛乳パック工作)のあまりのへんてこぶりに、ダメな意味で注目をあびていた
自分でもこんなはずではなかったのだ。昨日テレビでみたような、かっこいい船がつくりたかぅたのだ。頭の中のイメージと出来上がりの違いに、自分でも愕然としていた中での同世代からの容赦ない言葉・・・・
「先生ーワタナベ君が変なの作ってるよー」
「そんなこと言わないの、ワタナベ君も一所懸命作ったんだから その~ えーと 飛行機?」
決定てきだった
「船だよー わーん わーん」
僕はいつまでもないていいた・・・・・
先生が気を使って今日の出来事を母親に電話してくれたようだ。今思えばいい先生だったんだなー。普通電話までしないよね
「そうですか。わざわざすみません・・・わかりました・・・・わざわざありがとうございます・・・・
では失礼します」
先生からの電話おわり母が声をかけてきた
「先生から聞いたわよ、かなしたっわね。でもねヒロ君の思い通りにいかないことはこれから、いっぱいあるのよ。だからそんなに泣かないの。今日はヒロ君が元気がでるような美味しいものつくってあげるから元気出して」
そして母がつくってくれたのがハンバーグだ。
そう僕はそのときからハンバーグが好きになったのだ
「おいしい おいしいよ ママ。元気出てきたよ・・・・」
そうだ。そのときから、僕がへこんで元気がないときは必ずハンバーグだ。
足を捻挫した時、発表会がうまくいかなかった時、テストが散々だった時
母はここ最近元気がない僕にハンバーグをつくったのだ。
そう思った瞬間、胃の辺りが熱くなり、頭に声が響いた
(ほら、なんかあるだろ)アベルの声だ
「うまかったよ。かーさん。すこし元気でた」
それだけ言うと急にはずかしくなり自分の部屋に駆け上った。
母の驚く顔とうれしそうな表情が横目でみえた。
誤字脱字はご容赦ください