勇者の自殺
見渡す限り石、岩石、岩の灰色の世界、下界に比べ空気の薄いここは命の気配はなく
見下ろせば右に雲海、左に火口。
ここはケミューン大陸の中央部ブリッサ山脈、セカイの柱と呼ばれるアビル山火口。現在噴火の兆候はないが、かつて1年間に及ぶ大噴火でふもとの街、村を焼き、噴煙は天空から太陽を2年間なくした。
マグマの吹き出た大穴に複数の人影がある
「本当に行くの」
「ああ」
「そんなのただの言い伝えだ!」
「せっかく世界を救ったんだ、他に助かる方法があるはずだ こんなのただの自殺だ!
俺たち仲間だろ、呪いがなんだ!ずっと一緒だ!」
一人のおとこが、火口に飛び込もうとしている。それをとめようと複数の男女が、思いとどまらせようと、
自分の友に心からの声をかけている。あるものは泣きじゃくりながら、またあるものは怒鳴り肩をつかみ揺さぶりながら、方や女はすでに決意の固い男の前で諦めたのか泣きはらした目でじっと男をみている
「すまない こうするのが一番いいんだ」
バチン! 女はいきなり男のほほをぶった
「あなたは本当に馬鹿よ!」
「すまない・・・・ ではいくよ。なーに、これで死ぬと決まったわけじゃない。言い伝えでは1000年前の
勇者は無事帰ってきたんだ。心配するな俺が死ぬわけないだろ。」
そう言うと現在の勇者アベルは、打たれたほほをさすりながら、女に自分の母の形見の首飾りをかけ、力強くうなずく。そして女がなにか言おうしたとき、勇者の真紅のマントが大きくなびくと、アベルは飛んだ。
「アベル~」
「ばかやろー」
後には仲間の悲鳴、叫び、嗚咽が山頂に響いた・・・・
馬鹿みたいな青い空、僕の下には忙しそうにしている人たち 夏休み初日、僕は自殺しようと繁華街のある商業ビルの屋上にいる。
ここ何ヶ月の間死ぬのにふさわしい場所を探まわりして、やっとみつけた死に安い場所。
ここなら夜も非常階段を使い最上階までもぼることができ、屋上に出る鉄柵ドアはよじのぼれる。
夜は昼ほどではないが程よく人通りもあり、そんなに時間を空けずに僕の死体を見つけてくれるだろう。何日も見つからず腐ったら、死んでしまったとしても悲しい
さて自殺決行の夜まで時間があるし、飛び降りる場所の最終確認でもするか、と思い落下防止用の柵をよじ登り、人生最後の場所の確認をし、下を覗きこんだ。
「う~~やっぱりたけーな」
夏なので汗が当然噴出しているが、ビルの谷間の吹き上げてくる風のせいで、汗が吹き飛んだ
僕はイメージトレーニングをする
恐怖は一瞬だ、目をつぶって倒れるようにして・・・・
!?待てよそうするとうつぶせ状態だから、地面が近づくのが見えて顔面から激突するのか・・・・
ダメだ、耐えられない。
やはりバック(仰向け体制)か・・・・
痛みは一瞬だろうな、激突後しばらく意識があるのかな・・・走馬灯みえるのかな?
くそ!だいたいなんで僕だけこんな思いをしなきゃいけないんだ!
でもまたあの屈辱的な日々はもうたえられない
しかし高いな・・・・・無理に今日でなくてもいいんだよな。夏休みも始まったばかりだし今日はやめにしようか。・・・・そうだよ!まだ、SMSフレンドともお別れしてないし
・・・よし、本日は中止!
さーて帰ろう と思いよじのばったフェンスに手をかけた、そのときフェンスがもげた。
当然、僕は後ろ向きに空中にいた(落ちた)
は!? なぜ? 昇ったときは大丈夫だったろ
え~~~~~~~ うそ~~~~~~(落下中)
これで僕の人生おわり 一様予定通りのバック体制だけど、ということはこれまでの人生が走馬灯のように・・ドスン いで グチャ ・・・・ならないじゃないか・・・ あれまだ昼なのにそら赤い・・・
そ・ら・黒い・・・・ん?光が落ちてくる。
・・・・大ジョブ・・・・大丈夫・・・大丈夫か・・・・大丈夫か少年
俺か助けてやる 少し時間をもどして激突寸前に前方回転受身×5 そこの植物に体を預けるようにしてさらに全身鋼鉄魔法アスト〇△
「君、大丈夫か?」
声が聞こえる
「頭打ってないか? 名前言えるか」
名前聞いてる
「僕は渡辺 ユキヒロ」
目をおそるおそる開けると、知らないおじさんが手を差し出して、いて反射的に手をだすと、僕を道路の植え込みから引き上げてくれた
僕は死んでいなかった。
2話に続く
読んでくださりありがとうございます 誤字脱字等ありましたら、ご容赦お願いします