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ドルトの気の赴くまま
「あなたはもともと神でした」
「ああ、そうかい。やはり話は聞かない。そういうのは争いの種だから。教祖になんてなるもんか。さよなら」
馬鹿馬鹿しい。
教会を出たドルトは手綱を取った。いや、からくりを動かすレバーを引いた。
からくり馬車は動き、街へと続く轍を辿り始めた。
あなたはもともと神でした。
くだらないね。悪魔がいても神はいない。神は不死など許さない。
ぶつぶつ言いながら操縦していると、道端にいる赤い服の少女が手を挙げた。
ブレーキをかけ、馬車を止めた。
「なんだい?本が欲しいのか?」
「あのー、トリスバの街へ行くんですよね。乗せてってもらえますか?」
少女は乗せてもらう気満々でドルトを見た。
断る理由はなかった。
「いいよ。操縦席の後ろに部屋がある。そこで椅子に座っていてくれ」
「はーい」
るんるんで部屋に入った少女は操縦席に面した窓からドルトを見つめた。
他にすることがないだけで、それに理由はない。
この椅子、床に固定されてる。
それに少女はちょっとした感動を覚えただけで、トリスバの街を待った。