2人の胸に赤い花
妹は包丁を構え、足を肩幅に開いて、ドルトを見据えた。
まだ、自殺だったことを信じられないドルトは、なんで…と呟く。
「なんで自殺なんかしたんだ」
妹が少し揺らいだ。
「全て上手くいってたろう?飯も毎日食べられたし、恋人とも仲が良かっただろ?なんで…」
「分かってない…ドルトは、知らない!私が一番恐れていることを!」
叫ぶ妹にドルトは身じろぎした。
「私は、美しいわ。町中の女に嫉妬されるぐらいに。でも10年後は?まだ美しいでしょう。では50年後は?老化により、皮膚はたるみ肌は乾燥し、体のあちこちに痛みを感じながら死ぬ!私は醜い姿で死にたくない!永遠に若くて美しいままでいたい!そうなれば、今死ぬしかない!」
「そんなの…。仕方がないことだよ。美しくいるために自殺まですることないじゃないか!第一に人間は死ぬと腐る!目も当てられない姿になってしまう。それでもいいのか!」
妹はドルトをキッと睨む。
「それなら年をとって死んでも同じじゃないの!いい?私は美しい姿を人々に刻みつけて消えたいの。それができないならあるいは、若さを保ったまま永遠に生き続ける。それが私の願いよ」
それはつまり、とドルトは言った。
「美しさを見せびらかしたいということ?」
妹は睨んだまま、口元は少し笑って答える。
「ご名答」
次に瞬きした時、ドルトの胸には包丁が刺さっていた。
倒れたドルトの胸から包丁を抜き出した妹は自分の胸にも包丁を立てて。
服が赤く染まって、妹は倒れた。
青い目は光を失い、瞬きをしなくなった。
ドルトにはそれら一瞬の出来事がとてつもなく長い間に起きたことに感じられた。だけど。
妹の命はあっけなく。
自分の命はあっけなく。
現実から目を逸らしたくて別の事を考えた。
そうだ。悪魔を呼び出したけれど、送還の儀はやっていなかった。悪魔を帰さなければ儀式は成功とはいえない。
ドルトは立ち上がった。胸からどくどく血が溢れだしている。痛みは感じていたが、自分が自分でないような気がして、他人事のように思えた。
そして地下室へ向かった。
残酷な描写かな?
R指定とかいるのだろうか?