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いつか僕にも花束を  作者: アルーエット
2/8

黒い悪魔に魂を

暗い地下室に、ドルトはいた。

光といえば松明が数本あるだけ。部屋の中央をオレンジに照らした。

そこで悪魔召喚の儀式を行った。

床に魔法陣を描き、その左右に鏡を置いて呪文を唱える。すると合わせ鏡の間に悪魔が現れると、本に書いてあった。

しかし別の本にはそれに加え、生贄も必要だとも書かれていたりした。

試行錯誤を繰り返し、正しい方法を見出すと実行に移した。


魔法陣の上に、合わせ鏡の間に悪魔は現れた。

「やあ、初めまして。貴様は願いを叶えたいみたいだ。だから我を呼んだのだろう」

黒髪の、黒い服を着た女とも男ともいえない悪魔。人間と大差のない容貌にすこし戸惑いながらドルトは願いを告げた。

「その通りさ。魂と引き換えに叶えてくれるんだろう?僕には死んだ妹がいる。まだ死体は腐っていない。今なら間に合う。僕の命を妹へやってくれ」

「陳腐な願いだ。どうなっても知らんが叶えてやろう。魂が我のものとなればいいだけの話。さあ、頭をさげて(ひざまず)け」

悪魔に言われた通りにすると、頭に手を翳された。

頭と手の隙間から黒い光が(ひらめ)いて、その瞬間に地下室の松明が全て消えた。

悪魔とは思えないほどに澄んだ声が響く。

「完了だ。妹の元へ行ってみるといい。息をして瞬きもしていることだろう。魂は確かにもらった。美味しそうではないが腹の足しになるだろう」

魂を抜かれても、体には何も異常もないように感じた。むしろ体が軽く感じるような。

ドルトは妹の元へ飛んで行った。


棺桶の蓋は開き、妹はおぼつかない足どりで歩いていた。生き返った妹をドルトは抱きしめ、涙をこらえた。同時に妹を毒殺した者への怒りをおさえて、尋ねた。

「君は誰に殺されたんだ?」

妹は(うつ)ろな目でドルトを見て、言った。

「私は何故生きているの?」

ドルトは答えが返ってこないのにやきもきした。

「僕は悪魔に魂を売った。魂と引き換えに君の命を取り戻したんだ」

妹は目を見開いて、溢れ出た涙を見せまいとするようにうずくまった。

「なんてこと!」

ドルトは優しい口調で言った。

「気にしなくていい。僕の意思でやったことだ。僕は君のためなら魂など惜しくない」

しかし、その言葉は妹に届いていないみたいで、妹は叫んだ。


「これじゃあ自殺した意味がないじゃないの!」


「……え?」

ドルトは耳を疑った。

妹は誰かに毒殺されたのじゃなかったのか?

自殺…だと?

「もう一回死んでやる!きっと毒で死んだのが悪かったんだわ!心臓を貫かねば!」

妹はふらつきながら台所まで駆けた。

そして包丁を取り出して。

「来るんじゃないわよ、ドルト。来たら刺してやるんだから」

妹に近付いていたドルトは動きを止めた。


妹、豹変!

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