しとしと、ぴちょん。
しとしと。
雨が降っている。
曇が太陽を覆う。
まるで私の心のようだ。
かさかさ。
ふと庭を眺める。
淡い青紫した紫陽花。
その葉に這う蝸牛。
あっ。
ぐしゃり。
蝸牛が葉から落ちた。
湿った土に殻から落ちた。
藻掻けど足掻けど戻らない。
もう、戻れそうもないな。
ちくり。
胸が少しだけ痛む。
何故かは分からないが。
ほんの、少しだけ。
あっ。
ひょい。
甥っ子が蝸牛を拾う。
楽しそうに眺めた後。
そのまま紫陽花の葉へ。
…………。
ぴちょん。
雨粒が一粒零れた。
私は気が付かなかった。
どうやらもう晴れたらしい。
……もう、いいのよね。
すすっ。
座布団から立ち上がる。
枯れた畳を踏み締める。
晴れた空には虹が架かった。
今日は夫の三回忌。
今日は私の結婚記念日。
前へ進むしかないのに、
それは斯くも難しい。
そんなものなのでしょう。
読み取り、感じ取り。
心動く何かがありましたら、
至極の喜びで御座います。