第一話 始まりの日、二人の出会い
『予言』
【『彼ら』は出会う。そして全ての『予言』が動き出す】
【『彼ら』は出会う。出会い、『彼ら』に関する全ての者たちが動き出す】
【『彼ら』の封印を解きし者、一人は炎を操りし者、他方は氷を操りし者】
これまでとは違う通学路、見慣れない風景、これからの仲間らしき人たち。
ここにいる人たちには、当たり前の風景なのにぼくには、真新しく新鮮な場所です。
まあ、ぼくからすればこんな事はいつも通りだから慣れてはいるのですが・・・・・・、やっぱり、来たこともない場所を歩いていると、なんだか楽しくなるものです。
元々、父さんが小会社を経営している事もあって、引越しが多かったので、もうそろそろ、慣れてきている今日この頃なのですが。
でも、やっぱり慣れないのは、転校初日なのでしょうか~。
よく分からないのですけど、女子には毎回キャーキャー言われますし、男子には、ホントにおまえは男か?
とよく聞かれます。ホントになぜなのでしょう? ぼくってそんなに女っぽいのですかね? そこまでではない気がするのですが・・・・・・。
今はこれから、ぼくが明日から通う『登仙高校』に向かっている所なのです。
そうして、ようやく高校に着きました。
「ここが、明日からぼくの通う学校ですか~」
校門の前で、校舎を見上げていると・・・・・・、
「お~い。そこの彼女! ねえったら! お~い! お~い!」
なんか後ろから、チャラ~い男の人の声がしますね~。でも、「彼女~」と言っていたから、ぼくではないですよね。ぼくは男ですからね。
「お~い。そこの君だよ! そこの、カチューシャした君!」
ふと嫌な予感がして、頭の上をそっと触ってみると・・・・・・、そこにはカチューシャが・・・・・・。ぼくはそ~っと、後ろを向くと、
「お~! やっとこっち向いてくれたね!」
案の定、彼はぼくのほうを向いていました。しかも、なんとタイミングの悪い事に、ちょっと男なのか女なのか分かりにくい格好なのが残念です。
「ねえ。ここになんか用事があるの? 無いならさ、一緒に遊ばない?」
ぼく、男なんですが・・・・・・。そんな事を心の中で思っていると、肩に手を回されました。
「な、何するんですか!」
「いや、なにって、肩に手回しただけだろ?」
と、そんな風に言い争っていて気づかなかったのですが、周りに人ごみが出来ていました。
「(いるなら助けて~)」
そんな事を思っていると、人ごみの中から、誰かが出てきました。誰でしょう? と、そちらを見てみると、それは、茶髪の登仙の制服を着た女の子でした。
「その娘を放しな!」
その女の子は、そう叫ぶと同時に、彼の懐にもぐりこみ、彼の腹におもいっきりグーパンチを叩き込みました。すると彼は、吹っ飛んでいって、そのままどこかへ行ってしまいました。
どんな威力と勢いで殴ったらあんなふうに飛ぶんでしょう・・・・・・。
彼女は彼の腹に叩き込んだ拳を「ふっ」と吹くと、
「大丈夫? 怪我してない?」
と、ぼくを起き上がらせてくれました。
ぼくは彼女に見惚れながら、ハッと気づいて、「は、はい!」と礼を言いました。
聞いてみると、どうやら彼女は、この高校の生徒さんで、学校へ向かう途中で人ごみに気づいて、中を見てみたら、ぼくが絡まれていたので、助けてくれたんだそうです。彼女はとても良い人ですね~。
「あ、あの! お名前を聞いてもよろしいですか?」
そういえば、お名前を知りませんでした。聞かなければ、お礼が出来ません!
「ああ、あたしは『月神 飛鳥』って言うんだ。君は?」
そう聞かれたので、ちょっと緊張していたのですが、
「え、えっとぼくは、『黒羽 遊』といいます」
「へぇ~。君の名前は遊って言うのか」
彼女に、名前を呼ばれた瞬間、顔が真っ赤になったのが自分でも分かりました。
「ど、どうした? 顔がものすごい赤いけど・・・・・・」
な、なんでしょう。ものすごく顔が熱いのです。あうあう。その時、飛鳥さんがぼくの頬に触れてきました! また、顔が熱いです!
「い、いえ、だ、大丈夫です! 元気です。あ、ありがとうございました。飛鳥さん」
「ホントに大丈夫か? なんかあったら、これに連絡しろよ。また、助けてやるから」
そう言って、彼女は紙に何かを書いて、それを渡してくれました。中身を見てみると、そこには、携帯のメールアドレスと、電話番号が書いてありました。
そして飛鳥さんは去り際に、
「今度からは気をつけな、遊」
と言って学校の中へ入っていったのです。
「か、かっこいい」
ぼくは飛鳥さんのうしろ姿を見ながら、胸のドキドキを抑えていたのでした。
*
飛鳥さんが去った後、ぼくはどんな学校なのか見に来ただけだったのですが、すぐに帰路につかず、近くを散策し、満足して家に戻ろうとしていたときです。
そこで、妙なものを見つけたのです。
それは、宙に空いた、炎で包まれた小さな穴でした。
ぼくはその時、なぜかそこから動けなく、いえ動きたくなくなってしまったのです。
一瞬、《時ハ来タレリ》という小さな声が聞こえたような気がしたのですが、それは、気のせいでしょう。
「あ、あれはなんでしょうか」
周りの人には見えていないようですし・・・・・・、幻覚のようなものでしょうか? でも、この動けないのはなぜなのでしょう。
「な!? なんでこいつ、俺についてきやがるんだ!」
どこからか声がしました! ですが、周りをきょろきょろして見ても、誰もいません。
あるのは、得体の知れない小さな穴だけです。
「くそっ! ・・・・・・しかたねぇ! よっ!」
そんな声と共に、その小さな穴から、一人の男の子が出てきました。
その男の子は、右眼は前髪に隠れてこちらからは見えないのですが、左眼は炎のように燃える紅い眼です。
それと、右眼を隠している右側の前髪は白色なのに対して、左側の髪の毛は、黒色なのです。
そして、たぶん推測するに左頬から下の左半身にかけて黒い痣のようなものがあるのでしょう。それに、白いロングコートに、その下に黒のシャツ、黒いズボンといういでたちです。
「何見てんだ? ・・・・・・と、こんな事をしている場合じゃないんだ」
突然、彼は空中に、なにかを出現させました。
「『変身』!」
そう叫ぶと、突然現れた男の子は、光に包まれ小さなインコになりました。
「うわぁ!」
「うるせぇな! とりあえず、説明は後だ。まずは、お前に説明しなきゃいけねぇことがある」
目の色が、真っ赤な突然現れたインコは僕の肩に止まるとそんな事を言ってきました。とにかく、なにか僕は疲れているのでしょう。インコがしゃべるなんて・・・・・・、
「ええ! インコがしゃべった!」
「またか! っていうか俺はインコじゃねぇ」
「いや、インコじゃないですか」
「は? 何言って・・・・・・、そっか! 俺インコになったんだった! ってだからこんな事してる場合じゃないんだって!」
インコが、そういって羽根でツッコンできました。その次の瞬間、そのインコが出てきた穴からギギギギッという音が聞こえてきました。
「な、なんですかこの音!」
「やっぱ、お前にも聞こえてんのか・・・・・・。・・・・・・。しかたねぇ。遊。戦え! お前が戦わなけりゃこの町は消える!」
何でぼくの名前を? それに、戦わなきゃこの町が消える? 何冗談を言って―、
「こいつは、冗談でもなんでもねぇぞ。マジだ。本気と書いてマジだ」
戦う? 何と? どうやって?
「戦い方は俺が教えてやる。というかそれも決まってることなんだけどな。だけど、お前には『可能性』ってのがあるらしいからな。それに掛けるしかねぇだろ」
インコがそういった瞬間、穴から黒い鬼のような怪物が!
「あいつだ! あいつは俺たちがこっちの世界に移動してくる途中で襲ってきたんだ。あいつのせいで弟ともはぐれちまうし、魔力も取られちまうし、そのせいでほとんどの攻撃魔法使えねぇし、困ってたんだ」
「こんな奴と戦って、勝てるわけないじゃないですか! それに魔法ってなんですか。ぼくには戦う術すらないし、ぼくは普通よりも弱い人間なのですよ! こんな怪物と戦わなきゃいけない理由はないです!」
そうだ! ぼくが戦わなきゃいけない理由なんてどこにも―、
「理由ならあるさ。あいつが見えてるのは、今のところお前と俺しかいない」
「なっ! そんなわけ―」
・・・・・・。・・・・・・そういえば、さっきから周りの人たちが動いていないような。
「それにこいつが、こっちにいる限りここの時間はずっと停止したままっぽいしな」
そんな、それじゃあこのまま、コイツを野放しにしておくと・・・・・・、母さんが、それに飛鳥さんも・・・・・・、
「・・・・・・。・・・・・・どうやって戦うのですか?」
「やっとやる気になったか・・・・・・。まずは、お前も戦えるようにしないとな」
彼はそういうと、どこから出してきたのか何かを、ぼくに手渡しました。
「これは・・・・・・?」
それは見たことのない形をした鍵でした。
「そいつは、お前の中にある、こっちの世界の奴に封印された力を解放する鍵・・・・・・らしい」
らしいって・・・・・・。そこには、ぼくの名前が・・・・・・、この字は・・・・・・、おじいさんの字!
「そいつを、頭よりも上に振りかぶって、下に思いっきり振るんだ! その時に、『開封』って叫べ!
そうすれば、おまえが、自分自身でこの町を守れる!」
彼が言っていることは、百パーセント信じることは出来ません。
が、それでも目の前で起こっていることは信じることが出来ます。
意識を鍵に集中し、彼が言っていたことを、頭の中で思い出しながら、ぼくはこの町を守りたいと願い・・・・・・、
「『開封』!」
叫びました。するとぼくの周りに暖かな光が・・・・・・、
【ようやく、彼らが来たんだね? 遊】
「おじいさん!」
光の中からぼくの死んだはずのおじいさんの声がしました
「どこなんですか! いるのなら出てきてください!」
【彼らに着いて行け! 着いていって、その先にある絶望の『予言』を変えるんだ。お前には、いや、お前たちにはその『可能性』があるのだから・・・・・・】
おじいさんは何の話をしているのですか? どこから語りかけているのですか!
【さあ、呼びなさい。お前の中にある『伝器』を、『黒槍』と『黒鎧』を・・・・・・】
『伝器』・・・・・・? 分からない。なんですかそれは?
おじいさんの声が聞こえなくなると、ぼくの目の前には小さな光が二つ・・・・・・。
「これは・・・・・・」
ぼくは、その二つの光の正体を知っていました。
「あれ? これって、女物じゃないですか! ぼくは男・・・・・・、あれ? すこし胸が出ているような・・・・・・。それに目線も低くなっている気がします・・・・・・」
あれ? ぼく、女になっちゃいました!
「ぼくは、男だ~!」
気づくと、怪物の目の前にいました。
「ギャオギャオォォォォォン」
「気をつけろ! お前が封印解いている間に、町に攻撃しやがった。コイツ、パワーがハンパねぇ! まともにやったら、お前も・・・・・・、ってお前女だったのか!」
彼は余計な事には、気づくみたいです。それよりも、彼が言った事は、本当のことのようですね。町の一角が消えてなくなっている・・・・・・。それだけあの怪物は、強いのでしょう。だけど・・・・・・、
「あの怪物に負ける気がしません!」
「ギャオォォォォォン!」
怪物の叫び声と共に、怪物の腕がこちらに飛んできました。
「あぶねぇ! 避けろ!」
彼がそう叫ぶと同時に、
「『黒槍』!」
怪物の腕をかわしながら、『黒槍』でその腕を、切り裂く。さらに、追撃し、少しずつ町から遠ざけていきます。
「ギャオォォォォォン! ギャオォォォン!」
ぼくの、作戦通り怪物は僕を追ってきます。
「ほうら! こっちです!」
怪物を挑発しながら、攻撃し、また逃げる、を繰り返し、町の外れのほうの山につれてくる事に成功しました。
ここまで来れば・・・・・・、
「ここなら、存分に暴れられます! さあ、かかってきなさい!」
「ギャオォォォォォォン!」
怪物は、またもや挑発に乗ってこちらに攻撃を仕掛けてきました。
「それを待ってたいたのです!」
怪物が振るった拳を、交わしその腕の周りを螺旋状に切り裂いていきます。
この攻撃で、怪物が一瞬怯んだのをぼくは見逃しませんでした。
「これで決める!」
ぼくは、空高く飛び上がり『黒槍』を振り上げ、
「邪悪な魂を聖なる一撃で浄化する! 『黒翼の槍』!」
叫ぶと同時に、『黒槍』を投げつけました。
「ギャオォォォォォォォォ・・・・・・」
怪物は、ぼくの一撃を受けると、跡形もなく消滅し、怪物によって破壊された町も、綺麗に直ってい
ったみたいです。
「ふぅ。疲れました」
勝負は一瞬で決まったものの、気力を全部持っていかれてしまいました。
破壊された町が完全に直った事を、確認した後、ぼくは元の場所に降りていきました。それにしても、疲れました。
「それで? あなたはいったい・・・・・・」
ぼくが言おうとしたとき、またさっきの光が現れ、気づくと元の姿に戻っていました。ふぅ。よかったです。元に戻れて・・・・・・。このまま女は嫌ですからね。
「結局あなたは誰なのですか? とりあえず名乗ってください。話はそれからです」
「このままでいいのか? このままだと、お前インコに話しかけている変な奴だぞ? ちょっと待っとけ。お前があいつ倒してくれたから、こっちでも魔法が使えそうだ」
そう言って、インコは光に包まれると元の男の子に戻っていました。
「よし、いいぞ」
「なんで偉そうなんですか・・・・・・、もういいです。ここではなんですので家に向かいましょうか・・・・・・。はあ」
そんなこんなで、家に向かうことになってしまいました。
*
裏山から二十分ほど歩いて、ぼくの家に着きました。
家に着き、早速思ったのですが・・・・・・、
「母には、どうやって説明するのですか?」
そう聞くと、彼は不気味に微笑み、
「まあ俺に任せてみろって!」
全く任せられそうにもありませんが・・・・・・。
【ピンポーン】
「はーい。ちょっと待って下さーい」
母さんが来ました。ホントに大丈夫なのでしょうか。
「はいはい。どちら様でしょうか? あら、遊ちゃん、この方は?」
母さんはぼくのことを『遊ちゃん』と呼ぶのです。・・・・・・そろそろ恥ずかしいです。
「あ、えっと・・・・・・」
ぼくが、うろたえていると、
「僕は、『フォルティア=フレイス』といいます。気軽にフォルトと呼んでください。
それで、明日から登仙に通うことになっているんですが、なにかの手違いで、僕が住ませてもらうはずの家が無くなっていて・・・・・・。
その事を彼に話したら、家に泊めてくれるとの事でしたので、ここまで着いてきたんです。泊めてはく
れないでしょうか?」
なんと、彼は敬語で、話したのです!! ぼくにもそうしてほしいですね・・・・・・。
う~んと悩む母さん。まあ、たぶん結果は分かっているのですが・・・・・・。
「・・・・・・わかりました。いいでしょう。ほら入って入って!」
やっぱり・・・・・・。予想通り過ぎます、母さん・・・・・・。
「ありがとうございます!」
そう言った彼は、後ろを向くと、凄く悪そうな顔をしていました。
彼を家に止めるのは失敗だったのでしょうか・・・・・・。
*
そのあとすぐに、彼に部屋が割り当てられ、少ししてから彼がぼくの部屋にやってきました。
「それにしてもここ広いな~。俺が居た城もかなりの広さだったけど、ここはそれに負けるとも劣らない広さだな」
「そんな事はどうでもいいのですよ。それより君は誰なのですか?
名前はわかりましたが、それ以外のことが全くです。それに、あの怪物は何だったのですか?
それに、あのときのぼくの姿もです。あれは、いったいなんなのですか!」
ぼくの凄い剣幕に彼は、一瞬ひるむと、
「そんないっぺんに聞くなよ。
え~と、まずは、俺の名前は知っているだろうけど、とりあえず、俺は、『氷炎の世界』の『ハイドニア王国』第一王子、『フォルティア=フレイス』。
俺のことは、フォルトって呼べ。いいな? このハイドニアってのは、こことは、別の次元にある王国だから探しても無駄だ。
それと、あの怪物については、俺もよくは知らねぇんだが、次元と次元の間にいる怪物で、アイツらがいる次元の時間は、アイツらが持っている伝器―『達磨さんが転んだ(タイム・イズ・フリーズ)』で止まっちまうらしい。
んで、あの時のお前の姿だけど、あれに関しては、もっと詳しい奴がいるからそいつを見つけてからにしよう」
彼は、一気に説明を終えると、自分の部屋へとさっさと戻ってしまいました。それにしても、今日は充実した一日でした。飛鳥さんと出会い、彼とも出会い、それにこの町を守ったりもしました。
「こんな楽しい毎日が続いて欲しいですね~」
いや、怪物と戦うのは勘弁したいですが・・・・・・。
僕はベッドに寝転ぶと、そのまま寝てしまったのでした・・・・・・。
*
遊が眠ったのを確認した俺は、オルフェとの待ち合わせの場所に向かった。
それにしても、あの『予言』・・・・・・、やっぱ本物だったか・・・・・・。
『予言』じゃ、アイツがこっちの世界に出てくるなんて書いてなかったじゃねぇか。次元の怪物って、普通は存在が不安定だから、こっちには出てこれねぇんじゃねえのかよ・・・・・・。
『予言』にそこら辺も書いとけっての・・・・・・。・・・・・・。今回のことで分かったことは、『予言』には細かなことは書かれていなくて、しかも大まかな内容すら間違ってる可能性がある、ってことぐらいか。
そういえば、遊が戦っているときに遊と同じ感じの封印が解けた気がしたんだが・・・・・・。オルフェのほうは、成功したんだろうか・・・・・・。
・・・・・・。まあ、心配する必要はないな。なんてったて、俺の弟だしな。
そんな事を考えながら、目的地へと向かうのだった。




