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八月一日と四月一日

「依頼人の陸奥と申します。以前電話で内容をお知らせしたんですが…覚えていらっしゃいますか?」

二十代前半くらいで真面目そうな、男性がそこには座っていた。

肌は程よく焼けていて、体も細身ではあるが服越しにも立派な筋肉がついているのもわかる。



なんのことかわからない初夢はあたふたと、依頼人より落ち着いていない。


「ホズミ様。肩の力を抜いて下さい。」


と自分よりも小さい、例のメイドに心配されてしまった。


「い……いらいないようですか…?おっおそれいりますが、もう一度教えてくれませんか??」












依頼人、陸奥むつ旭人あさひとの依頼は恋人、九十九つくも三九みくを取り戻したいという、いたってシンプルな依頼だった。

ただまあ、ここ逆神探偵事務所にそのようなシンプルな依頼が来るわけもない。


数週間前、彼女は悪質な宗教に嵌められてしまった。


そこで彼女、九十九三九は彼氏である依頼人に相談した。


結果的に宗教団体の上の人に除名を願いにいくことが決まった。


その週の日曜日に一緒に行こう。


そう約束した次の日に

彼女に異変が起きた。



「今では、あれほど気味悪がっていた宗教の熱狂的な信者になってしまって、目がもう………。

私も熱狂的ではないにしても、神社の生まれなので少々、宗教をするのですが、あれは、三九のあの熱の入り方……普通じゃない。」


依頼人は俯きながら言った。その目には涙が溜まっていた。


「たのみます!三九を…本当の彼女を取り戻してください!!」













逆神逆は学校の図書室よりも本が有りそうな自室で本を読んでいた。

しかし、本と言っても読んでいるのは電子書籍。

座っているのが本だった。




「あはは。君変わってるねぇ。こんな図書館みたいな部屋で本の上に座って、電子書籍を読んでるなんて」




「変わってる。か…では何が普通なのだ?」


訪問者の顔はしばらく笑顔で固まる

「本の上に座らないってのは普通だと思うけど。」



「そうか。ところで貴様は本の上に座ったことはあるか?」


本の上に立ち上がり、逆神は天を仰いだ。


「……生憎、僕はラノベしかよまないし。座るほど持ってないんだ。」



「そうか。なら試してみると良い。

こうして本の上に立つことで、作者のすべてを否定しているようで気持ちが良いぞ。



ところで……何か用事か?四月一日わたぬきそそぎ。」



四月一日と呼ばれたその男は驚いたように言った。

「君が来いっていったんじゃないか。

合わせたい奴がいるって。」



「言ったな。だとしたら何故、貴様は此処にくる。」



少し間があいたが、四月一日はこう答えた。


「…でも、僕その子知らないし。紹介するとか、してくんない?」


「紹介?必要ない。あれは貴様の同業者だ。一目見ればわかる。」

本の山から降りた逆神はこれまた、本の上に置いてあるコーヒーを手にとった。


「へぇ、同業者とかいたんだ。仲良くなれそうだよ。」


「その期待はするな。同業者であっても、やっていることは真逆、いや逆だからな。」

コーヒーをすすりながら、逆神は言った。


しかし、そこに四月一日はいなかった。














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