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1-9 平和な時間なんてないの・・・

「偶には平和に過ごしたい」

 そんなささやかな願いも神様は受け入れてくれない。今日もまた僕の所には面倒なこ

とが舞い降りてくる。


「あ、あの――輝さん! 沙羅ちゃんとデートをしたというのは本当なんですか!?」

「何でそれを紫ちゃんが……」

 その情報は誰にも言っていないはずなのに……しかもあれは、デート言うには少々違

う感じがする。ただマッタリと二人で過ごしていただけだ。

「沙羅ちゃんに聞いたんです! すっごく自慢げに言われたんです!」

 紫ちゃんが悔しそうな表情を浮かべている。よほど沙羅にムカつく言われ方をしたのだろう。

「輝さん! 何で沙羅ちゃんとデートをしたんですか!?」

「何でって言われても……」

 僕自身も何でデートをしないといけないのか分からないし、倉科さん曰く罰だとは言

ってたけど、正直な所明確な理由は分からなかったりする。

「しかも、しかも! 輝さん、沙羅ちゃんにキスをしたんですよね!?」

「うげ……っ」

 沙羅の奴、そこまで言ってるのかよ。どうせまた変に捏造をしてるんだろうな。

「その反応、沙羅ちゃんの言ったことは本当のことだったんですね!」

 ずずいっと、紫ちゃんが顔を近づけてくる。あの……そんなに顔を近づけられると……

「ズルいです! 沙羅ちゃんばかり輝さんに優遇されててズルいです!」

「ズルいとか言われても……」

 僕としては沙羅だけを優遇しているわけじゃないし、元々このデートは倉科さんのせ

いだし、ズルいとか優遇とかは違うと思う。

「ですから、あたしともデートをして下さい!」

「えぇっ!? 僕とデート!?」

 もうデートなんて出来ることならしたくないんだけど。

「そうです! あたしとデートをして下さい!」

「……因みに拒否権は?」

「ありません! あたしともデートをしてもらいます!」

 物凄い形相で僕に迫ってくる紫ちゃん。これはマジでデートをしないといけないかもしれない。

 もうデートは懲りたというのに。

「さぁ、輝さん! デートをしましょ――」

「させませんよ。お兄様とデートなんて誰にもさせません」

 ぐい、っと僕の手を掴もうとした紫ちゃんの手を叩く沙羅。

 いつの間にこの場に現れたのだろうか? つい先ほどまで居なかったのに。

「さ、沙羅……?」

「お兄様もお兄様です。何を勝手にデートをしようとしているのですか?」

「いや、そんなつもりは……」

 僕はどちらかといえば拒否をしたかった方なんだけど。

「紫ちゃんも、何勝手にお兄様をデートに誘っているのですか」

「だ、だって……」

「言い訳なんて聞きたくありません。お兄様にはデートなんて必要ありませんから」

 バッサリと紫を切り捨てる。だけど、僕にデートが必要ないなんて言うのは、さすが

にどうかと思うんだけど。別に僕自身もデートがしたいわけじゃないが、そこまで断言

されるのも、それはそれで面白くない。

「何で沙羅ちゃんにそこまで言われないといけないの!?」

「わたしはお兄様の妹ですから」

「何、その理由……そんな理由おかしいよ!」

「おかしくありません。正しい妹の在り方です」

 自信満々に言い切る沙羅。そんな妹の在り方はおかしいと僕も思うよ。

 僕だから耐えられてるけど、他の人なら精神的におかしくなってしまうんじゃないだろか?

「ですので、残念ですが紫ちゃんにデートはさせられません」

「いいじゃん! 輝さんとデートさせてよ!」

「絶対にダメです」

「何でなの!?」

「こう見えてもお兄様は獣ですから、二人っきりになるとすぐに襲われてしまいます」

「おぉい!?」

 何を失礼なことを言っているんだよ!? 僕は女の子と二人っきりになったからって

襲ってしまうような獣じゃないからな!

 現にさっきまで紫ちゃんと二人っきりだったのに、何もしてなかっただろ。

 俺はごく普通の紳士なんだ!

「わたしだっていつもお兄様に襲われているのですから。これはもういつ妊娠しても

おかしくはありませんね」

「に、にに、妊娠っ!?」

「ちょっ、沙羅何を言っているんだよ!」

 誰が毎度、沙羅を襲っているだって!? そんな事実は一度としてないはずだ。

「しかもお兄様ったら、わたしが止めてって言っても全然聞いてくれないんですよ……」

 僅かに頬を赤く染め、照れくさそうに嘘を並べる。

「家事の最中や入浴中、果ては就寝中でも襲ってくるのですよ」

 沙羅の中で僕はどんな変態に位置しているのだろうか? いくらなんでも鬼畜すぎるだろ。

 見境なく襲うとか普通の人間の所業じゃないよ!

「あばばばばあばばば……」

「紫ちゃん……?」

 沙羅の口から出てくる嘘の連続(嘘だと分かっているのは僕くらい)に、紫ちゃんの

思考がフリーズしてしまう。

 まぁ、僕は当事者だから嘘だと簡単に見抜けるけど、この嘘を信じてしまうとは、

さすが紫ちゃん。純真すぎるだろ。

「ですから紫ちゃんとお兄様が二人っきりになるような、デートをさせるわけにはいか

ないのです。分かっていただけましたか?」

 沙羅が優しい口調で問いかける。

「あ、あの……輝さんは、そんなに凄いの?」

 どうやら紫ちゃんはまだ混乱しているようだ。この子は一体何を聞いているのか。

「ええ。それはもう、かなりのモノですよ。わたしだから耐えることが出来ていますが、

他の方ではすぐに壊れてしまいますよ」

「こ、壊れ――――っ!?」

 ボンッ、という音が聞こえてもいいくらいの勢いで、紫ちゃんの顔が赤くなっていく。

「そうですよ。グチャグチャに中を掻き回されて壊れてしまいますよ」

「~~~~~~~~~~~っ!?」

 更に煙でも吐きそうな感じになっていく。この変わりようは見ていて面白い。

「しかもお兄様はこちらの都合など、一切気にせず出しますから本当に危険なんですよ」

 そろそろ止めた方がいいかもしれない。このままだと紫ちゃんの中の僕という存在が

危険人物認定を受けかねないから。

「紫ちゃん。今のは全部、沙羅の嘘だからね」

 ポンっと紫ちゃんの肩を叩いて、彼女を正気に戻そうとする。

「ひぅ!? あぁ、あ……あぁあ」

 あーあ。すっかり紫ちゃんが怯えたような表情で僕を見ているよ。

「あのね紫ちゃん。さっきのは全部嘘だからね。信じたらダメだよ」

 きちんと紫ちゃんに、さっきのが嘘であると教え込む。このまま友達の妹に変な疑い

を持たれたまま帰すわけにはいかない。

「全部、ぜ~んぶ、沙羅の嘘だからね」

「お兄様。あまり必死に否定してますと、逆に真実のように見えますよ?」

「沙羅のせいだろ!」

 沙羅が余計なことを言わなければこんなことにはならなかったのに。どうして、あん

なデタラメな嘘を言ったんだよ?

「全てはお兄様のため。邪魔な害虫は駆除しないといけませんので」

「害虫って……」

 紫ちゃんはただの友達の妹なのに、そこまで下に扱う必要もないだろ。

「お兄様は何も分かっていません」

「何を分かっていないんだよ!?」

「それは秘密ですよ。そんなことよりも紫ちゃん?」

「ひゃ、ふぁい!?」

「そろそろお家に帰った方がいいのでは? あまり長居してしまうとお兄様に――」

 ニヤリと不敵な笑みを浮かべる沙羅。あぁ、あの笑顔を浮かべた沙羅は手がつけられない。

 ススス、と紫ちゃんに近づいた沙羅は耳元で――

「犯されてしまいますよ♪」

「――――っ!?」

 ほんと、酷いことを言いやがる。しかも紫ちゃんも紫ちゃんで、沙羅の言葉を信じてるし。

「す、すいません! あたし帰ります!」

 バタバタと急ぎ足で家から出ていく。

「ふふ……これで邪魔な害虫が一人減りましたね。お兄様に好意を寄せていても、結局

のところは怖気づいてしまう。ほんと紫ちゃんはヘタレなんですから♪」

 悪魔のような笑みで紫ちゃんを見送る沙羅。ほんと、この妹は酷いと思うよ。

「さて、次はお兄様の番ですね」

「僕の番って……?」

「まさかお兄様は、自分に何の非もないと思っているのですか? お兄様が初めから

きちんと断っていれば……いいえ、初めから紫ちゃんを家に招いていなければよかった

はずですよ」

「紫ちゃんを招いた覚えはないんだけど……」

 勝手に紫ちゃんが来たというか……

「お兄様。言い訳は見苦しいですよ。大人しくお仕置きを受けてください」

「……マジ?」

「大真面目です」

「……そっか」

「ええ♪ 覚悟、してもらいますよ」

 白くて細い綺麗な沙羅の手が僕目掛けて振り下ろされる。

 さすがに理不尽すぎではないだろうか? 何処かの施設に逃げ込みたい気分だ。


 まぁ、でも沙羅を受け止めることが出来るのは僕ぐらいだろうし……こんな恐ろしい

子を好きになってくれる男が居るのなら、喜んで引き渡すよ。

 沙羅に男が出来るまで、耐えるしかないよな?

 あぁ……痛いね。


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