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1-6 沙羅の場合・・・

 今日は、沙羅とのデートの日だ。実の妹とのデートというのも、何だかおかしな話で

はあるけど、罰として遂行しなければならないのなら、仕方がない。

「だけど、せっかくのデートなのに、家の中で本当にいいのか?」

「はい。わたしはお兄様と一緒に居られるのでしたら、場所は気にしません。まぁ、そ

の代わり渚さんには、暫くの間席を外してもらってますけど」

「それだと、普段とあまり変わらない気がするんだよね」

 ただ、倉科さんが居るか居ないかの差くらいしかない。それで本当にデートと言える

のだろうか? それに場所が家の中だし、新鮮味がまったくない。

 あと、僕の考えたデートプランがまったく意味をなさなくなってしまう。これでは、

沙羅を満足させることなんて出来るわけがない。

「本当は遊園地とか映画館とかの方がよかったんじゃ……」

「お兄様はほんと、何も分かってませんね。デートにおいて場所なんて些細な問題でし

かないんですよ。大事なのは誰と居るかです」

「沙羅……」

「それに、家の中でも十分それなりのことは出来ますよ。例えば、こんな風に――」

 沙羅がぽすっ、と僕の膝の上に座る。

「ふふ、お兄様の上に座ってしましました♪」

 凄く上機嫌な様子の沙羅。しかし、僕としては落ち着かない気分だ。

 いくら沙羅が妹とはいえ、可愛らしい女の子が自分の膝の上に座っている。その事実

が僕から落ち着きを無くさせる。足に感じる沙羅の柔らかい感触。そして近づいたこと

によって、沙羅のふわりとした甘い香りが鼻腔をくすぐる。

 こんな状態で、落ち着くなんてなかなか出来るものではない。

「お兄様、どうかしましたか? 顔が赤くなってますけど……」

 熱を測ろうと更に顔を近づけてくる沙羅。

「だ、大丈夫。なんでもないから!」

「そうですか? ふふ……っ」

 あぁ、沙羅の奴完全に確信犯だな。僕をドキドキさせるためにわざと、こんな行動を

取っている。

「お兄様。一ついいですか?」

「な、なんだい?」

 出来るだけ自分が焦っていることを沙羅に悟られないようにしつつ、言葉を返す。

 まぁ、もうすでに遅い気もするけど。

「手を回してくれませんか。手を後ろから回して、わたしを抱きしめてください……」

「んな――っ!?」

 後ろから手を回して、沙羅を抱き締めろだと!? そんなの出来るわけがない。ただ

でさえ、膝の上に座られて心臓がバクバクと鳴り響いて落ち着かないのに、更にその上

から抱き締めるだなんて……

「お兄様。あまり女に恥をかかせないで下さい。それに、これはデートなのですよ。相

手の要望に応えるのも立派な務めです」

「うぐ……ぅ」

 そんな風に言われてしまったら、反論することが出来ない。大人しく沙羅を抱き締め

るしかなくなるじゃないか。

「お兄様……」

「わ、分かった。抱き締めればいいんだな!」

「はい♪」

 拒否するのを諦め、沙羅の身体に手を回す。

「……んっ」

 両手に感じる身体の温もり。柔らかくてもちもちとした感触。これはちょっとヤバイかもしれない。

「お兄様。わたしのお尻に何か固いモノが当たっているのですが……」

「いや、それは――」

 仕方の無いことって言うか、生理現象っていうか、男なら仕方がないわけで……

「……冗談ですよ? そこまで固い感触のモノは当たってませんよ」

「ほ……っ」

 それは少しだけ安心したよ。

「まぁ……少し固いのは当たってますけどね」

 ボソリとだけど、確実に僕に聞こえる声で呟く。

「わたしの身体で興奮してくれたのですね」

「あ、や――違っ、これはその沙羅の身体に興奮したわけじゃ……」

 何度も言っているけど、これは男として仕方の無いことなんだ。生理現象なんだよ!

「隠さなくてもいいですよ。お兄様のことは何でも分かってますので」

「――――っ」

 は、恥ずかし過ぎる。妹相手に興奮してしまってるのも恥ずかしいけど、それを妹に

理解されていて、笑顔を向けられるなんて、マジで恥ずかしい。

「そういえばお兄様。気付いてますか? わたし、最近胸が成長したんですよ」

「へ、へぇ……」

 そんなことを言われても、どう返していいか分からない。どえくらい成長したか、確

かめさせろとでも言えばいいのだろうか?

「……確かめたいですか?」

「へ……?」

「お兄様、今物凄く触りたいって顔をしてました」

「いやいやいやいや、してないから!」

「ほんとですか……?」

 沙羅の胸を触って、どれくらい成長したか確かめたいとか、全然思ってないから!

 だから、そんな目で僕を見るのは止めてくれ!

「……残念です。お兄様が触りたいのでしたら、触らせてもよかったのですけど……」

「な――っ!?」

 さ、触らせてくれるの……か? いや待て。妹の胸を触りたいなんて考えは変態すぎ

るだろ。そうだ、その考えは兄として間違っている。だから、ここでの選択は――

「い、いいのか?」

 違う! 僕はそんなことを言いたいんじゃないんだ! 時間も時間だから、そろそろ

お昼にしようと言いたいだけなんだ! 本当なんだ!

「ふふ、冗談ですよ。お兄様に触らせてもいいですけど、それはまたの機会にしましょう。

 今は先にお昼ご飯を食べましょう」

「あ、あぁ……」

「あまりガッカリしないで下さい。美味しいお昼ご飯を用意しますから」

「ガッカリなんてしていない……」

 あの、ぷくっと膨らんできた胸を揉みたいだなんて思ってもいないんだからな。だか

らガッカリなんてしていないし、残念だとも思っていない。

 僕は純粋にお昼ご飯を望んでいるのだから。

「そういうことにしておきましょう」

 沙羅がニヤニヤとした笑みを浮かべながら台所へと向かう。まったく、胸を揉みたい

とか欠片も思っていないけど、僕って顔に出やすいのかな?


「はい、お兄様。お昼ご飯が出来ましたよ」

「ん、ありがと」

 目の前に並べられていく料理の数々。普段よりもやや豪華な出来なのは、やはりこれ

がデートだからなのだろうか?

 少しだけ倉科さんに悪い気がする。

「お兄様。デート中に他の女性のことを考えるのはマナー違反ですよ」

「す、すまない」

 すぐに考えを沙羅に見透かされてしまう。これが妹の力なのかね。

「では、いただきましょう」

「ああ」

 手を合わせ、沙羅が作ってくれた料理に箸を伸ばす。

「……うん。相変わらず沙羅の作る料理は美味しいね」

「えへへ……ありがとうございます♪」

 行儀が悪いと知りつつも、席を立ち沙羅の頭を撫でる。沙羅も頭を撫でられて、嬉し

そうに目を細める。

「お兄様。この料理にはお兄様への愛情がたくさん詰まっているので、たっぷりと食べてくださいね」

「言われなくてもたくさん食べるさ」

 せっかく作ってくれたのに、残すなんて出来るわけがない。きちんと残さず全て食べるさ。

 

「ごちそうさま。美味しかったよ沙羅」

「お粗末さまです」

 ご飯を食べ終わり、ソファに座ると沙羅が――

「えへへ……お邪魔します」

 最初の時と同じように僕の膝の上に座ってきた。

「沙羅、別に横に座ってもよかったんじゃないか?」

「確かにそうですけど、わたしはお兄様の上に座りたいのです」

 僕の上にって、どんな願望だよ。ノンビリとするのなら横に座ってくれた方がいいんだけどね。

 横の方が落ち着くと思うんだよね、主に僕の精神が。

「はぅ……お兄様の膝の上は。本当に落ち着きますね♪」

 実に満足そうな笑みを浮かべる沙羅。あまり僕の膝の上に座るのを気に入るのはよく

ないね。今はまだいいかもしれないけど、倉科さんが居る時に座られたらどうなることやら。

 確実によくない感じになるだろうね。僕も倉科さんも……

「お兄様。今日はこのまま、時間になるまでゆっくりとしていましょうね」

「……僕は構わないけど、本当にいいのかい?」

 今日はご飯を食べて、ただ僕の上に座っているだけだぞ。

「初めにも言いましたよね? お兄様と過ごせるのなら、他はどうでもいいと」

「でもなぁ……」

 やっぱり、物足りないような感じがするんだよ。デートらしいデートをしたいわけじゃ

ないけど、なんだか申し訳ない気がするんだよ。

 沙羅に気を遣わせているんじゃないのかってね。

「それでしたら、キスをしてもらえますか?」

「え゛っ!?」

「出来ないのでしょう? ですから、このままジッとしているだけでいいのです」

 諦めきっているような、だけどバカにされているような……ここまで言われて何もし

ないのは癪に障るかな。

「沙羅」

「なんです――んぁっ!?」

 不意打ちぎみに沙羅にキスをする。キスといっても頬にだけどね。それでも沙羅を驚

かせるには十分な行為で……

「な、なな、な……な」

 壊れたラジオのように『な、なな……な』と呟き始めた。

 ふ……っ、これが兄の実力だよ。妹に振りまわされっぱなしでは終わらない。

 きちんと、仕返しはするのだ。まぁ、ちょっとだけ大人げない気もするが。

「お兄様にキスをされた。お兄様にキスをされた。お兄様にキスをされた……」

 ぶつぶつと、念仏を唱えるかのように同じことを繰り返す沙羅。

 よほど、キスをされたのに驚いたみたいだ。

「お兄様にキスを…………ふにゃぁ~」

 蕩けるようにその場に倒れ込む沙羅。あ~あ、これは暫く起きないかもしれないな。

 時間もいい感じになってきたし、今日のデートはここで終わりかな。

 あとは、沙羅を起こさないように部屋に運んで寝かせるだけだ。

 

 終始デートらしくはなかったけど、それでも沙羅が喜んでくれていたのならいいか。

 妹を喜ばせる。それも兄の務めなのだろう。


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