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バズ  作者: レモン
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第六章 火事

 事件から2日が経った。リチャード夫人は買い物に行き、リチャード氏は会社の同僚の人たちとコーヒーショップに行ったので、リジーとトミーと僕はその日はアニーの家にいた。アニー・バレルはリジーの親友で、道の真向かいに住んでいた。

 アニーの家で最初にしたことは金魚を見た。とてもおいしそうだった。(アニーは僕を金魚の近くに行かせてくれなかった。)

 次に不思議な国のアリスを遊んだ。このゲームはリジーが作った。劇のようなものだ。まず、アリスがうさぎを追いかけて穴に落ちるところから始まる。そこからは、自分でオリジナルなストーリーを考える。今日はアリスはなかなか大変な一日を過ごした。穴に落ちた後、暗い王国に入ってしまい、そこには色々な悪い精霊が住む。姫は人質としてキング・ブラックの部屋に閉じ込められていた。アリスは七つの頭を持つ巨大な竜や火を吹く猿、飛んでくるサメと戦わなければならなかった。

 そのうち、不思議な国のアリスを遊ぶのにも飽きてきた。「外で遊ぼう。」とアニーは提案した。

 「バズが鬼ね。」とリジーは言った。

 僕は唸った。走る気になれなかった。話せないのは本当に不便なことだ。

 「家の中であればどこにでも隠れていい。わかった?」とリジーは言った。「じゃあバズは50まで数えて。目も閉じて。」

 『威張ってるな、リジー』と僕は思った。僕は頭の中で数え始めた。時計をちらっと見た。午後一時。リチャード夫人が帰ってくるまで二時間もある。これは長い午後になりそうだ。


 かわいそうな僕。もう三時間半以上も探したり追いかけたりしている。リチャード夫人はさっき遅くなると電話してきた。

 僕は何度かリジーやアニーを見つけているが、僕が見つけると彼女らはまた逃げて違う場所に隠れる。終わりのないいじめのようだった。

 その時、僕はあることに気付いた。このゲームを始めてから、まだ一度もトミーを見ていない。もう四時間近くも遊んでいる。僕は家じゅうの隅々まで探した。けど、トミーはどこにもいなかった。どこかにはまって出られなかったりしているのでは?あるいは道に出てしまったとか?それは大変だ。もっと早く気付くべきだった。

 僕は庭を探し始めた。そして、僕の家とアニーの家の間の道に踏み出した。

 「バズ!道に出ちゃいけないんだよ。そこはあなたの探す場所じゃない。」とリジーは僕に呼びかけた。

 「リジー、彼にはリジーが何て言ってるかなんてわからないよ。彼は猫だもの。」とアニーは言った。

 「わかるわよ。彼は喋れないけど、聞こえるのよ。」とリジーは反論した。

 その時、僕はリチャード氏の研究部屋で大変な変化が起きているのに気付いた。煙が出ていた。僕の顔から血の気がひいた。『やばい…』

 僕は一番速いスピードで家に向かって走り出した。

 「ちょっと、どこ行ってるの、バズ?」リジーは叫んだ。

 僕は彼女を無視して、玄関のドアに突撃したが、もちろん動かなかった。鍵がかかっていた。僕は焦り始めた。どうしよう、どうやったら入れるだろう。変なにおいが家の周りを漂っている。ひどい状況だった。その時、僕は気づいた。もし、トミーが家に入れたのなら、きっと玄関のドアを使う以外の入り方があるはずだと。

 と、その時、バレル夫人が僕たちの方に向かって走ってきた。

 「ちょっと、道に出ちゃダメって-」

 彼女は屋根から出てきている煙を見て固まった。

 「火事だわ!」と彼女は叫んだ。

 彼女は消防隊を呼ぶために家に走って戻った。

 その間、僕は家の周りを鍵のかかっていないドアか窓がないか探すために走り回っていた。ようやく、僕は台所の近くに小さなドアを見つけた。ちょうど赤ちゃん-もしくは猫-が通れるぐらいの大きさだった。僕は中に飛び込み、リチャード氏の研究部屋へと駆け上がった。

 トミーは床に横たわっていた。僕は彼を起こそうと、彼を押したりニャーと鳴いたりした。しかし、彼は起きなかった。煙のため意識を失ったのである。僕は猫なので、彼を抱くことも引きずることもできない。僕は無力な感じがした。

 「トミー!」とリジーは叫んだ。まるで僕の祈りに答えるかのように、リジーはトミーを拾い、階段を駆け降りた。僕は彼女らの後ろを走った。リジーは咳をし始めた。僕も気持ち悪くなりだした。

 リジーは玄関のドアの鍵を解除し、僕らは何とか安全に外に出られた。僕は家を見てびくっとした。半分は火事で燃え上がっていた。オレンジの火花があちこちに散っている。空気は黒い煙だらけだった。

 バレル夫人は僕らをバレル家に連れて行った。「ここにいなさい。」と彼女は命じた。

 「トミー、大丈夫でしょ?」リジーは震える声で言った。彼女はトミーの手を握った。しかし、トミーは動かなかった。リジーはそれでもあきらめなかった。トミーが目を開けてくれることを切実に願いながら、話しかけ続けた。

 二分後ぐらいに救急車とともに消防隊が現れた。医療チームがトミーを寝台に乗せた時、リジーの頬を涙が流れた。

 リチャード夫婦はその数分後に現れた。リチャード夫人は泣いていた。リジーを強く抱き、「どうしてこんなことが…」と彼女はつぶやいた。

 僕はこれ以上恐ろしく、衝撃的で…ひどい夜を今までに経験したことがなかった。そして、知ってる?その夜、僕の一生で初めて、涙が僕の頬を流れたんだよ。

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