第四章 口論
僕はリチャード夫人とリチャード氏の間で何かがおかしいことにある真夜中気付いた。僕は彼らの声で突然起きた。
「あのネックレスに六十ドルも使ったのか?買う前によく考えろと何回言えばわかるんだ?」とリチャード氏が言うのが聞こえた。
「あなたこそ私の夫じゃなく父のような話し方するのやめてくれない?」リチャード夫人は言い返した。「いつもあなたの部屋を掃除してるのは誰だと思っているの?」
「そんなこと関係ない。」とリチャード氏は言った。
「どうして?なんで私ばかりがいつもあなたのアホなお説教を聞いてなきゃいけないのよ?」
僕は眠すぎてそれ以上は聞けなかった。気づかないうちに僕は眠りについていた。
「掃除機をクローゼットの中に入れるなって言ったでしょ!!」リチャード夫人の声が廊下から響いてきた。
土曜の朝はまたけんかで始まった。『なんて不愉快な目の覚め方なんだろう。』と僕は思った。僕はもう一度寝ようとしたが、彼らの声が大きすぎた。もし僕が喋れたら、一番大きな声で「静かに!」と叫んだだろう。
「そんなの大したことないだろ。まるで俺が掃除機をクローゼットに入れたら世界が崩壊するみたいな言い方じゃないか。」
「掃除機はきれいじゃないのよ。もしかしたらあなたは服に穴があいたり虫がついていても気にしないかもしれないけど、他のみんなは気にするのよ。」
リチャード夫人もリチャード氏もとても機嫌が悪かった。
普通土曜や日曜の朝はリチャード家は一緒にごはんを食べた。しかし、その日リチャード氏は散歩に行くと言って出かけていた。
リジーとトミーは土曜の夜まで、リチャード氏とリチャード夫人の間で何かがおかしいことに気づいていないようだった。
「マーク、私が買い物に行ってる間子供たちの世話をして。」リチャード夫人は命令した。
「もちろんですよ、陛下。」リチャード氏は皮肉に言った。
リジーはそれを面白いと思い、笑った。
リチャード氏は働くために研究部屋へ行った。しばらくの間、リジーとトミーは静かにリビングで遊んでいた。そしてリジーは何かトミーの耳にひそひそと言い、二人はリジーの部屋へ行った。僕は次に何が起きるんだろう、と思いながら興味深く彼らを見た。
一秒後、リジーとトミーはそれぞれまくらを持って部屋から飛び出した。リジーは布団も持っていた。
リジーは階段下にある床に布団を敷いた。そして彼女は階段のてっぺんへと走って戻った。「見ててね。」とリジーはトミーに言った。彼女はまくらを手すりにのせて、滑り下りた。「ヤッホォォ!」彼女は布団の上に落ちた。
「さぁ今度はトミーの番よ!」リジーはトミーをまくらにのせた。僕は必死で鳴き、彼らを止めようとした。リジーは大丈夫かもしれないけど、トミーはまだ赤ちゃんだ。落ちるかもしれない。リジーは僕を無視し、手すりに沿って彼を押した。
その時リチャード夫人が玄関のドアから入ってきた。彼女は上を見上げて、トミーが手すりを滑り降りているのを見た。
「トミー、ダメよ!」と彼女は叫んだ。
トミーは彼女の方を見た。その瞬間、トミーはバランスを崩し、まくらが手すりから滑り落ちた。彼は階段に落ち、何段か転がり落ちた。
幸いにもトミーは大丈夫だった。怪我は上腕にかき傷ぐらいだった。しかし、リチャード夫人はとても怒っていた。リチャード氏に対して。
「あなたは二時間子供たちの面倒を見ることもできないの!!」リチャード夫人は叫んだ。
『わぁ、彼女怒ってる。』と僕は思った。
「アンナ、あれはただの事故だ。誰にでも起きる。」リチャード氏は言った。
それは結構リチャード氏が言うには無責任な言葉だなと僕は思った。しかし、僕がリチャード夫人だったらもう少し優しくリチャード氏に言っただろう。これがリチャード夫人のリアクションだ。
「ただの事故ですって?じゃあ、あなたが台所で火を消すのを忘れたせいで誰かが死んだらそれはただの事故なの?マーク、何か間違いをするのも悪いけど、それを否定するのはもっと悪いのよ。あなたがもっと子供たちを注意深くみていれば、こんなこと全部起きなかったのがわからないの?」リチャード夫人は大声で言った。
「小さな傷だよ。」リチャード氏は言った。
「それは彼がラッキーだったからよ。もしトミーが首の骨を折ったりしていたらどうよ?あなたはどうしてた?」
その間、リジーとトミーは台所にいた。トミーは一番好きな趣味のことをしていた-フライパンを叩き合わせて大きくうるさい音を立てることだ。
「うるさいよ。」とリジーは小声で言い、まるでリチャード氏とリチャード夫人が喧嘩しているのはトミーのせいであるかのように責めるような目線を送った。
トミーはまだリチャード氏とリチャード夫人の間で何かがおかしいことに気づいていなかった。しかし、リジーは彼らが喧嘩していることを知っていた。かわいそうな彼女は親が離婚するんじゃないかと思ってそうなぐらい心配な様子だった。僕もこんなことがリチャード氏とリチャード夫人の間で起こるなんて思ってもみなかった。二人はいつも幸せそうだったのに。
その日の真夜中、リチャード氏とリチャード夫人はまた喧嘩をしていた。
「何もうまくできないの?なんで私の一番いいフライパンを傷めるの?」リチャード夫人は叫んだ。
リチャード氏は、最近よくリチャード夫人に怒鳴られてストレスがたまっていたせいか、「イカれてて馬鹿でヒステリーな女みたいにふるまうのやめてだまってくれないか?」と言った。
「なんですって!この、この馬鹿はげ、いつも何時間も鏡を見て髪を直すけど、どんなにがんばってもその汚い顔を隠せない-」
「言ったな?」
僕は笑いをこらえた。これは大人の喧嘩じゃない。6歳児が互いを批判し悪口を言っているようにしか見えなかった。
そして僕はリジーが部屋を出るのを見た。彼女は廊下を歩き、トミーの部屋に入った。僕は興味深く彼女の後をついて行った。リジーは赤ちゃん籠の中に入り、トミーの横で眠りについた。きっと仲間がほしかったのだろう。それかもしかしたら彼女はまた籠の中で寝たくて、リチャード夫人が喧嘩で気がそれているその夜が一番こっそり入るのに適した時だったのかもしれない。
どっちみち、二人は隣り合って寝ていて、とても気持ちよさそうで平和そうだった。僕は微笑まずにはいられなかった。